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南充浩 オフィシャルブログ

極めてニッチな市場

2014年1月6日 未分類 0

 あけましておめでとうございます。

新年にふさわしい話題を。と思ったけどそんなネタもないのでいつもの通りに始めてみたい。

97年に業界新聞に入社して以来、何だかんだで17年も経過してしまった。
17年間、デザイナーズブランドというジャンルを断続的に眺めてきたのだが、正直、この分野が今後も莫大な売上高を稼げるようになるとは思えない。
とくに一部の例外を除いた若手デザイナーズブランドはなおさらである。
何度も書くが、東京コレクションの常連ブランドですら、年商規模が3000万円レベルというのも珍しくない。
その程度の規模感しかないのである。
で、今後その規模感が爆発的に大きくなるということは国内市場を見る限りちょっと考えにくい。
かと言って、現在の各ブランドのスタンスを見ると海外で大きく伸びるということも考えにくい。とくに価格面がネックになるだろう。

通常、筆者はデザイナーズブランドの商品をほとんど所有していない。
価格が高いこともあるし、デザイン的にも筆者の多数所有するような工業生産的に作られた洋服には合わせづらいからである。

デザイナーズブランドの生産数量は極めて少ない。
必然的に縫製コストや生地代金などの原価が割高となり販売価格が高額にならざるを得ない。
一方、製品のデザイン、シルエット、色柄は極めて前衛的なブランドが多い。
着こなすにはかなりのセンスが必要となる。通常の近所のオッサンがおいそれと着こなすのは難しい。

で、ここにミスマッチがある。

シナジープランニングの坂口昌章さんが考察しておられるので一節を引用したい。

http://j-fashion.cocolog-nifty.com/jfashion/2014/01/j-fashion-journ.html

日本のデザイナー、特に若いデザイナーは高額所得者を対象にしていない。ファッションセンスの良い人を対象にしている。そのため、彼らがデザインする服がリッチ層にアピールしないのも事実だ。基本的にリッチ層を対象にしている欧米ラグジュアリーブランドとは全く異質である。

とのことである。

デザイナーブランドの商品を購入できるのは価格面から見ると富裕層に限られている。
洋服マニアみたいな人が食費を切り詰めて新作を購入することもあるが、それは極めて稀な事例でビジネスモデルにはなりえない。
日本に限らず欧米でも富裕層というのは中高年が多くを占めている。

一方、商品のデザインはそういう中高年の富裕層に向けたものではなく、若い年代層に向けられていることが多い。しかし、残念ながら日本に限らず欧米でも若者層は裕福ではない。

デザインは若者向け、価格は中高年富裕層向けでは、売上規模が小さくなって当然である。
富裕層並みの経済力のある若者は世界的にも少数派だし、貧しくても生活を切り詰めてまで高額な洋服を買う若者はもっと少数派であるからだ。
極めてニッチな客層に向けた提案をしているといえる。

将来デザイナーとなって自分のブランドを立ち上げたいと思っておられるファッション専門学校生も数多くいらっしゃるだろう。
しかし、現在のデザイナーブランドのビジネスモデルでは自身の事務所の存続さえ難しいことは明白である。
そして、世間的に言われているデザイナーブランドというのは極めてニッチな市場に向けたものであることを認識する必要があるのではないか。

もし若い人が今後デザイナーブランドを立ち上げるのであれば、①富裕層に向けて富裕層の好むデザインを確立する、もしくは②若者向けデザインの商品を若者の手が届きやすい価格で提供する、のどちらかの方向性を明確に打ち出す必要があるだろう。
そこを整理して自身のブランドの立ち上げに取り組んでもらいたいと思う。

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