MENU

南充浩 オフィシャルブログ

答えが出ない難問

2013年12月19日 未分類 0

 ジーンズ不振だなんだかんだと言われているが、デニム生地を好きだという日本人は多い。
身の回り調査などあまり意味もないことは承知しているが、筆者の知り合いの大半はデニム生地を好んでいる。

トヨタのカローラのテレビCMのキャッチコピーが「ラブ&ジーンズ」になったが、意味はあまりよくわからないものの、トヨタとしてはジーンズをカローラと同じくらい人口に膾炙した物としてとらえているのだろう。

ところで、ジーンズそのものはこの数年間、非トレンドアイテムだったが、デニム生地を使ったアイテムは増えている。単純にトレンドの問題だがデニムシャツはジーンズの不調に反比例して好調であるし、最近ではデニム生地を使ったバッグなどの雑貨類に注目が集まっている。

雑貨での使用頻度が高まると今度はインテリアへという要望が生まれる。
例えばソファーや椅子にデニム生地を貼れないかということだったり、デニム生地のクッションだったりである。
たしかにデニム貼りのソファーは想像するとかっこいいが、難点がある。

デニムという生地は摩擦による色落ちが激しく、濃紺の状態だと座った人のズボンや上着の背中にブルーが移染する可能性が高い。椅子でもクッションでも同じだ。

このため、業界では長らくデニムのインテリアへの使用はタブー視されていた傾向が強い。

けれども近年、デニムのソファーやクッションなどの雑貨を提案するメーカーが何社か現れている。
例えば山陽ハイクリーナーの自社オリジナルブランド「ARAIYAN(アライヤン)」のように、その中には、ジーンズの生産地である岡山や広島の製造業者がけっこう含まれている。
例で挙げた山陽ハイクリーナーの本業は洗い加工業者である。

写真_1~1

(山陽ハイクリーナーの「ARAIYAN」)

これまで縫製や洗い加工で下請けに甘んじていた製造加工業者だが、ジーンズナショナルブランドの縮小によって、単なる下請け業だけでは企業規模が維持できなくなっている。
そこで縫製業者や洗い加工業者が自社オリジナルブランドを立ち上げるケースが増えている。
しかし、ジーンズブランドは世の中に掃いて捨てるほどある。ナショナルブランドが衰微したとはいえ、反対にジーンズというアイテムそのものを扱うブランドの数は激増している。

そんな中に縫製業者や洗い加工業者が今更飛び込んだところで勝機は見えない。
だから、雑貨ブランドを開始したのだろうが、その判断は正しいのではないか。

デニム生地を知りつくした彼らが作るクッションなどのインテリア雑貨は移染の危険性がある濃紺のノンウオッシュやワンウオッシュデニムを使用しない。
かなり色が薄くなるまで洗いこんだブルーデニムを使用する。極限まで色を落としておけば移染する危険性は格段に下がるからだ。

一方、洒落た人が好む洒落たブランドでは見た目を重視して濃紺のノンウオッシュデニムやワンウオッシュデニムを貼ったソファーが提案されている。これを展開しているブランドの大半がデニム生地製造やジーンズ製造において門外漢である場合が多い。

さて、こんな筆者にもたまに「デニムを貼ったソファーが作りたいんですよ~」なんていう相談が寄せられることがある。
筆者の考えもデニム製造業者に近く、色が薄くなるまで洗いこんだデニム生地を使用することをお勧めする。
しかし、濃紺デニムを使いたいという方もおられる。
実は筆者も濃紺デニムの方が好きなのである。

そうすると、表面にコーティングするとか、特殊な加工を施して「色止め」(色落ちしにくいようにする)するしかない。
が、加工を施すと表面の触感が変化してしまう。

もしくはインディゴ染料ではなく、色落ちしにくい別のネイビーの染料で染めた糸で「デニム風生地」を織るかである。

ここで、みなさんにお尋ねしたいのだが、表面加工を施したデニムや別の染料で染めたデニム風生地を使用することをどうお考えだろうか。

デニム製造業者はこれに二の足を踏む。
製造業者の中では飛びぬけて柔軟な思考を持つ人でも躊躇される。

たしかに「デニム風生地」は「デニム生地」ではない。

筆者もなんとも判断をつけかねている。

半分は「やっても良いのではないか?」と思うが、デニム製造業者が躊躇する気持ちも理解できる。

一口に「デニム」と言っても、実際のところインディゴ染料を使っていない黒色の「ブラックデニム」の存在も認められているし、様々なカラーの物を「カラーデニム」と呼んでいたりもする。真っ白の厚手の綾織りを「ホワイトデニム」とも呼び慣れている。
こう考えると、別のネイビーの染料で染めた糸で織った生地でも「デニム」の範疇ではないかと思う。

けれども様々な例外が認知されたことで、デニム生地の範疇が広がりすぎ、本質が薄れてボヤけてしまったことも事実である。

ここ何年間かずっと考え続けているが答えは出ないままだ。

Message

南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ