細心の注意が必要
2013年12月18日 未分類 0
製品のOEM/ODM生産を請け負う会社が自社ブランドを確立し、直販なり専門店への卸売りを行うにもかなりの苦労が伴う。
例えば卸売り先を探すにしても一苦労である。
開始する前は「有名セレクトショップ○○に卸したいなあ」とか「有力専門店の××に卸したいなあ」と計画を練る。もちろんこの計画を練ることは重要だが、実現にはかなりの時間がかかる。
有名セレクトショップの○○も有力専門店の××も販売する商品に関しては山ほど持っているからである。
そういう有名店・有力店になればなるほど、販売するためのブランドには不自由していないからだ。
有名ブランドは軒並みそろっているし、有力店が一声かければ扱えない有名ブランドはほとんどない。そういう中に新規ブランドが割り込めるだろうか。しかも知名度はゼロだ。
筆者が有名店の社長やバイヤーならまず扱わない。
別に扱う必要がないからである。有名ブランドは軒並みそろえているし、自社企画の製品比率も高めている。これ以上商品は要らない。
さて、製品ビジネスについてある程度熟知しているはずのOEM/ODM企業でさえ、このように自社オリジナルブランドに切り替えた瞬間に相応に苦戦する。
はたして、製品自体を手掛けたことのない生地メーカーや、染色加工業が自社オリジナル製品を立ち上げることがどれほど大変なことなのか想像するに容易である。
近年、生地メーカーや染色加工業がOEMを請け負うケースもある。
しかし、OEM/ODM専門企業とは異なり、彼らはメーカーなりショップなりが出してきた企画を請け負って、それの製造工程の手配をするだけである。
デザインや商品企画、MDを自ら考えることはない。
現在、一定の業績を維持しているOEM/ODM専門企業は、デザインや商品企画、下手をするとMDの組み立てまでをブランド側に提案する。
そこまで熟知しているOEM/ODM専門企業ですら自社オリジナルブランドの立ち上げには苦労するというのに、初歩的なOEMしか請け負っていない生地メーカーや染色加工業者が自社オリジナルブランドを立ち上げるのは相当の苦労が伴うことを覚悟すべきである。
現在、OEM生産請負という製品化ビジネスがそれなりに上手く行っているのは、すべて発注元のブランドの力である。商品企画もそうだし、販売するのもそうである。
国内の生地製造や染色加工業が今後も飛躍的に業績を伸ばすことは不可能なのは常に書いている通りである。だから「製品化」に踏み出す必要があるのだが、製品化には相当の苦労が伴うことを自覚せねばならない。
生地メーカーや染色加工業者が自社の本業を止めてまで、オリジナル製品化を推し進めるのはかなりの危険が伴う。
製品化ビジネスについてド素人にも等しい状態で、成功を収めるには少なくとも数年は必要である。
本業を止めてしまえばその数年間の収入をどこからも得られなくなる。
そういう製造業者は土地やマンション、駐車場などの資産をお持ちの場合が多いのでただちに生活苦に陥ることとはないのかもしれないが、下手をするとそれらをすべて食いつぶすことにもなりかねない。
製品化ビジネスに乗り出すことは正解だが、そのバランスのとり方には細心の注意が必要となる。