
カジュアルテイラードセットアップをビジネススーツの視点で検証しても無意味
2021年9月14日 トレンド 3
前回のブログで「変型セットアップ」を取り上げたが、正直なところ、この企画がなぜ1年半も各若者向けカジュアルブランドで続いているのか理解ができない。
この回から読み始めた人のために説明しておくと、トップスがシャツ・ブラウス、ブルゾン、シャツジャケットなどテイラード型以外のセットアップのことを「変型セットアップ」と個人的にグルーピングしている。
それなりに容姿端麗なプロのモデルが着ていても、パジャマ、作業服、北の将軍様、囚人服にしか見えない。
また今夏こそ10代後半から20代前半と思しき若い男性が半袖シャツ+同色同素材のズボンを着用しているのを何度か見たが、朝起きてパジャマを着替えずに出かけてきたのかと思ったほどである。
そんな感じだが、申し訳ばかりのテイラード型をしたセットアップも各ブランドからは発売されている。
例えばジーユーで、試しにこれを買ってみた。
テイラード型の襟がついたカットソージャケットとカットソーアンクルパンツである。
ジャケットが2990円、パンツが2490円で合計5480円(税込み)である。
他の異様なオーバーサイズとは異なり、ジャストサイズよりも少しだけゆとりのある程度のオーバーサイズとなっており、顔がデカくて首が短いガッシリしたオッサンが着てもそれなりにマシに見える。(マシに見えると自分では思っている)
ただ、これが「テイラードジャケットか」と言われると、そうではない。あくまでも「テイラードっぽい上着」に過ぎない。そんなことはいくら安物好きな当方でも理解している。
ここに対して、従来のスーツ業界やスーツ愛好家からの反発があることは容易に予想できる。
だが、それは論点が異なるのではないかと思う。
「スクール水着の生地だ!」ワークマン、ユニクロら5社の機能性スーツを百貨店バイヤーがガチ検証 | スーツ 消滅と混沌 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)
例えばこの記事。スーツ専門家が「スーツなのかどうなのか」を検証しているのだが、そもそもこの5つの商品は「スーツ」として企画されたかどうかも怪しい。
ユニクロの感動ジャケットと感動パンツは恐らくはスーツの代替品として企画されたと当方は考えているが、残り4つは甚だ疑問だ。
使用素材や縫製仕様に関して、「スーツかどうか」を検証しているのだが、4社の製品についてはそんなことは織り込み済みで、それを踏まえても商品化されているのではないかと当方は思っている。
そして、当方が試しに買ってみたジーユーの5480円セットアップもこの4社との競合品だといえる。
テイラードっぽい低価格セットアップが各社から発売された理由として大きな物が2つあると考えられる。
1、昨春からのコロナ禍によるリモートワーク、WEB会議の増加
2、テイラード型アイテム、スーツの似合いやすさ
である。
まず、1から考えよう。
コロナ禍によるリモートワークの増加である。この1年半の間で、リモートワークできることとできないことの選別が各社で進んだのではないかと思う。
在宅勤務を含むリモートワークへの理解も各企業で深まったので、特効薬が開発されて新型コロナがインフルエンザ並みに軽い扱いになったとしても、リモートワークという概念は残るだろう。
特に在宅で勤務する場合、ぶっちゃけ着ている物は何でもいい。全裸でも構わないし寝間着のままでも構わない。
しかし、仕事をしている気になれないので、多くの人は何らかに着替える。その際、通常のスーツではあまりにおかしい。リビングで一人でスーツを着こんだ人間がパソコンで仕事をし続けるのはTPOから考えても変だ。
となると、スーツっぽくてもう少しリラックス感のある服が必要ということになり、なんちゃってテイラードセットアップはそれに好ましいといえる。
またWEBミーティングでも同様だ。
上半身が映し出されてしまうので、だらしなさすぎる、カジュアルすぎる服装はNGである。
かと言って通常のスーツでも硬すぎる。
となると、テイラード型のなんちゃってセットアップが最も無難ということになる。
次にテイラードジャケットの似合いやすさである。
これは服装が自由な場合によく起きることだが、Tシャツとカジュアルパンツという組み合わせでもオシャレに見える人と、どう見ても日曜日のフードコートにいるお父さんに見える人とに分かれてしまう。
正直な話、カジュアルな服装は似合う人と似合わない人の差が激しい。特にTシャツ、トレーナー、スエットパーカなどはオッサンやジジイの老けた顔には似合いにくい。
しかし、スーツが似合わない男はいない。どんなに不細工なオッサンでも。
となると、服装に困った男はスーツかスーツに類する服を着るのが最も無難である。
そうなると、リモートワーク時で適度なカジュアル感も求められる際、テイラード型のジャケットを羽織っているのが最もマシということになり、万人が着ても安全なアイテムということになる。
この両方を考えると、テイラード型のなんちゃってセットアップが無難かつ望ましいということになる。
おまけにビジネスシーンだけではなく、カジュアルシーンにも兼用しやすい。
通常のビジネススーツをカジュアルシーンに使うのはちょっと難しい。
このように、新型コロナ禍がまだ収束しきれない現在の状況からすると、通常のスーツよりもなんちゃってテイラードセットアップの方が、ニーズが高いということになる。
そして、なんちゃってテイラードセットアップは、カジュアルでもあらねばならないので、通常のビジネススーツのような作り方は不要だということになる。
ここまで考えて割り切って使用素材や縫製仕様を決めていると考えられるので、スーツ屋さんの今回の批評は的外れだと言わざるを得ない。
新型コロナ禍が続くうちは、この手のなんちゃってテイラードセットアップはまだまだ出てくるだろうが、特効薬開発後に新型コロナ禍が収束したらどのようになるのかは、また別の話ということになるだろう。
AOKIでもKOKUYOでもない、KOKUBOのカジュアルセットアップをどうぞ~
comment
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お気楽ニャンコ より: 2021/09/15(水) 10:52 AM
レディースにもここ数年セットアップの波が訪れているように感じます
が…
レディースもメンズ同様に、例えばバカ高いCHANELのツイードのスーツでさえ
社長ならOKな職種もあるとは思いますが、一般企業の女性社員が着用して営業に行くのはナシではないでしょうか
値段はさておき、やはりあくまで仕事で着用するとなると生地や色も含めた『定型』『定番』である事は必須だと思います
逆に言えばある種の業界人以外は変に目立つ事はマイナスかと…
メンズのセットアップに関しては、メンズはカジュアルでも『キレイ目』とか言われるコーデの特集も多く…
インナーと靴以外のコーデが不要で簡単に着られる需要かも知れません
私個人としては、80年代のソフトスーツから現在に至るまで、この手のセットアップモノは外国人かモデル以外は難しいと思っていますが -
BOCONON より: 2021/09/15(水) 11:21 AM
世の中大部分の人にとっては「テレビが言わない事はないのと同じ」「テレビに出て来ないものはないのと同じ」だから,逆に言えばセットアップスーツというのもTVのせいで「漫才師の着るもの」というイメージがついてしまう事があり得るのではないか,と私は危惧しています。
多くの人々が千鳥の大悟とか,サンドウィッチマンの富澤たけしのような格好を見慣れてしまえば・・・
(富澤:ちょっと何言っているかわからない。)
テーラードジャケットのエリ(カラー&ラペル)と、パンツのクリースラインの威力は絶大っすね。なんで人民服とこうも変わって、ちゃんとして見えるんだろう?何か人間の脳に働きかける形状なのかも?w