「地味な」名岐アパレルの直販が売れるようになるには時間がかかるだろう
2021年8月24日 ネット通販 0
以前にこのブログで書いたのだが、おさらいのような記事が掲載された。
岐阜・名古屋地区でアパレルの経営破綻が続く理由 – 南充浩 オフィシャルブログ (minamimitsuhiro.info)
「名岐アパレル」で連鎖倒産、産地の厳しい現実 | 専門店・ブランド・消費財 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)
で、今回の相次ぐ名岐地域でのアパレル破綻は、コイケの経営破綻に端を発していることは間違いない。
5月14日、名古屋市中区に本社を構えるコイケが民事再生法を申請した。負債総額は73億円。同社は婦人服やニット製品など幅広いアパレル製品を取り扱ってきたが、コロナ禍で取引先であるカジュアル衣料店の需要が急減、資金繰りに行き詰まった。
「まさかあのコイケがつぶれるとは」。その倒産は業界で驚きを持って受け止められた。コイケはアパレル製品の企画・販売よりも、アパレル製品の輸入代行が主力の業務で、信用力のない中小アパレルの輸入代金の支払いを一時的に肩代わりすることも少なくなかった。いわば、このエリアの中小アパレルにとって、駆け込み寺のような存在だった。
業界外の方にとってはコイケと言ってもあまり知名度はないだろう。アウフヘーベンこと小池百合子の方がよほど知名度が高い。
地味な存在ながら業界内では老舗としてしられていた。なぜ地味なのかというと製品の企画製造ではなく、輸入代行が主力業務だったからだ。
コイケはその後、スポンサーが決定し、新体制で営業を続けることが決定している。
名岐アパレルは基本的に「地味」である。
社名は業界外の人にはほとんど知られていない。
美濃屋・岐阜武・水甚・サンラリー・ヒロタなど一体どれだけの人がご存知だろうか。多分業界内でも高感度のイキった会社の社員は知らないだろう。
一部にブラックフォーマル屋があるもののそれを除くと、名岐アパレルは低価格商品を主力としている企業が多い。
東洋経済オンラインの記事にもあるように90年代後半に、名岐アパレルは連鎖倒産している。理由は、ダイエー、マイカル、ナガサキヤなどの大手量販店の相次ぐ倒産である。
そんな名岐アパレルは、かつても危機的状況に陥ったことがある。1990年代に起きた、GMS各社の経営危機だ。そのあおりを受け、名岐アパレルの多くが淘汰された。
荒波を乗り越えた企業は、GMSに代わって台頭した低価格衣料チェーンや紳士服チェーンとの取引を増やした。
とあるが、まさにこの通りだ。
低価格チェーン店を主力販路としており、納入メーカーとしての知名度は低い上に、コンバースなどの一部のライセンスブランドを除くと展開しているブランドの知名度も低い。
いわゆる「昔ながらの卸売りメーカー」という体質が名岐アパレル各社だといえる。
しかし、昨年春からのコロナ禍で、低価格チェーン店や大手総合スーパーの衣料品販売が苦戦に陥ると、納入メーカーも苦戦することになる。
そのため、再び名岐アパレル各社が経営危機に陥ったというわけである。
2015年以降、ZOZOTOWNの急成長ぶりが顕在化し、衣料品のネット通販が脚光を浴びると、それまでの卸売りメーカーのネット通販が増えた。昨年春のコロナ禍で卸売りメーカーや各種工場がネット販売によって直接消費者へ販売するというケースはさらに増えた。
昔は、小売店が「バッティングガー」と言って卸売りメーカーや工場が直販することに対して牽制し、阻止してきたが、コロナ禍でその縛りはほぼ崩壊したといえる。
そんな「バッティングガー」という牽制などに従っていてはメーカー側・工場側も倒れてしまうからだ。
じゃあ、そこに活路が見いだせるのではないかと外野は思いがちだが、インターネットはいくら世界中につながっているとはいえ、ネット通販を開始してすぐさま売れるはずがない。
それはブログを開設しても、開設直後はほとんど訪問者がいないのと同じだ。YouTubeチャンネルを開設したところで、最初はだれも見てくれないのと同じである。
当然、知名度の低い会社、知名度の低いブランドがネット通販を開始したところで誰も振り向いてはくれない。
衣料品のネット通販の場合、企業名やブランド名で指名検索されることが重要になる。
誰も知らない企業名、誰も知らないブランド名を検索する人などこの世にいない。そもそも知られていないのだから。
だから、名岐アパレルもネット通販を立ち上げているがおいそれとは売れないのはそういう理由である。
ローマは一日にして成らず、という言葉があるくらいに積み重ねというのは重要である。
著名企業・著名ブランドなら立ち上げただけで指名検索が増える可能性があるが、無名企業・無名ブランドは積み重ねるほかない。
これまで、無名な納入業者に徹してきた名岐アパレルだが、直販を増やさざるを得ない。そのためには、企業名・ブランド名を多くの人に知ってもらう必要がある。それは積み重ねでしか獲得できない。腰を据えてそれに取り組めるかどうかである。
水甚のファーストダウンをどうぞ~