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南充浩 オフィシャルブログ

今後、生き残りそうな国内繊維関連の製造加工場とは?

2021年8月25日 産地 1

国内繊維関連の製造加工業が存続の危機を迎えているのは確かである。

しかし、その中でもいろいろと新しい取り組みを始めている企業もある。ただ、外野から眺めていて感じるのは、資金投入のできる企業とそうでない企業の格差、新しいことを始めるリスクテイクとそうでない企業の格差、その辺りはかなり大きくなってきていることである。

結論からいうと、現在の規模で国内の繊維関連の製造加工業者は中間業者も含めて存続できなくなるだろうと思う。

ただし、ゼロにはならなくて、豊富な資金を有効に投資できた企業や、リスクテイクしそれに成功した企業などは残るだろうと思う。

少数が生き残って、旧態依然の大多数は消え去るという未来が待っているのではないかと思う。

 

自分の付き合っている中で最も驚かされたのが、某大手洗い加工場である。

何と今秋には、人工知能搭載のシェービングロボット5台が稼働するという。正確にいうと、すでに2台は稼働しており、3台が秋に追加されて5台体制になる。

シェービングとは擦って色を落とす技法のことで、これまでは人間が紙やすりみたいな物を持って削っていたが、人工知能搭載のロボットを使うわけである。

シェービングロボットなんて、ロボットの需要の中では各段に少ないだろうから、そんなニーズの小さい物をメーカーが開発したのか不思議だったが、その加工場の社長にお尋ねすると、オリジナルで製造依頼をしたとのことだった。

機械類というのは、縁のない方にはちょっと想像できないかもしれないが、1台で最低でも数百万円はする。衣料品や日用雑貨の価格は下がり続けているが、自動車の価格は新車だと最低でも100万円以上することを想像してもらえばわかりやすいのではないかと思う。

下世話な話だが5台というと恐らくは最低でも合計で3000万円くらいはかかっているのではないかと思う。

「この工場、カネ持ってるなあ~」

というのが最初の感想なのだが、コロナ禍も相まって衣料品不振のこの状況で、その投資ができるリスクテイカーな姿勢がすごいと感じた。

同じくらいの資産を持っている産地の製造加工業者は少なくないだろうが、このご時世にこれだけの投資ができるところがいくつあるだろうか。

またこの洗い加工場は、大手アパレルから切られた縫製工場も買収して傘下に収めている。

 

恐らくは今秋にこのシェービングロボットについて、このブログで詳細をご紹介できる予定である。

 

また、驚かされたのは、何度もこのブログでも取り上げている山本晴邦氏である。

正確にいうと彼は製造業寄りの中間業者なのだが、もうご存知の方もおられるが、出身地である新潟県の佐渡島に工場を作ろうとしている。

【繊維関係の求人】綿花から縫製まで!佐渡でノンストップの服作り。ulcloworks SADOBASE(アルクロワークス佐渡ベース) | 佐渡UIターンサポートセンター (sadouiturn.com)

 

「原料の綿花栽培から衣料品完成までを一箇所に集約してモノづくりをする施設を作っていきます。」

 

これである。

 

これについての構想は自身のブログでも書かれていた。

 

「若いのにカネ持っとるなあ~」

 

と思ったのだが、この取り組みについては融資で行うとのことなので、先述の洗い加工業者ほどの資産家ではなかったようだ。

資産家なら、毎週金曜日に鳥貴族をおごってもらおうと思ったのに。残念である。

もう求人募集されているので、単なる夢物語ではなく現実化に向けて動いているということで、その行動力とリスクテイカーぶりには感心させられてしまう。

 

その一方で、例えば、某産地では長年延々と続いてきた補助金給付が終了するという。

これを持ってその産地のほとんどの工場が廃業するだろうと言われている。

年間1000万円とも言われる各社への補助金は50年以上給付が続いてきた。その結果、どうなったかというと、この産地は自主的に開発したり自主的に営業ルートを広げたりすることをやめた。なぜなら、補助金だけで家族経営なら十分生活できるからだ。下手にリスクをとって開発したり、販路を広げたりしたら、失敗して補助金以上の損失を負う可能性がある。

だったら何もせずに補助金で家族全員が食えればいいという発想になる。

当方が工場経営者でも同様の考えをする。

働かなくても食えるならわざわざ働かない。もしくは趣味程度に働く。

最後の補助金は廃業のための資金だと言われているが、まさにその通りになるだろう。廃業しても過去から蓄えた資金で工場主一家の生活はなんとでもなるだろう。

 

ここまでひどくはないが似たような産地や工場も少なくない。

そういう産地や工場は今後どんどん姿を消すだろう。

 

リスクテイクは必ずしも成功するとは限らない。先に挙げた洗い加工場だって山本晴邦氏だって事業に失敗して莫大な借金を背負うことになるかもしれない。可能性は決してゼロではない。

しかし、軌道に乗る可能性もある。

そうなった場合は生き残ることが可能だろう。

旧態依然は退場して、リスクテイクに成功した工場だけが残る。そんな未来で構わないのではないかと思っている。

 

 

ドライフラワーの綿花をどうぞ~ Amazonて何でも売ってるなあ

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 comment
  • kimgonwo より: 2021/08/25(水) 12:56 PM

    鳥貴族は行けなくても
    近鉄奈良駅の日本酒の立ち飲みくらいは
    イケるんじゃないですか

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