
マス層のファッションへの興味は昔と比べて変容した
2021年7月13日 トレンド 2
社会人になると、業務とまったく無関係の知り合いや友人はできにくくなる。
趣味の社会人サークルにでも入っていれば別だろうが、若い頃にはそんな金銭的余裕も時間的余裕もなかった。
そんなわけで現在、交流の頻度が多い知人はほとんどが衣料品・繊維の業界人である。
必然的に業界人の価値観に取り囲まれることになる。
業界で働いている人で「衣料品に全く興味ありません」と言う人はほとんどいない。職種が経理や総務にならいるかもしれないがそれ以外は、だいたいは衣料品に興味がある。
元々は興味がなくて就職した当方だって働いていて知識を得ると何となく興味を持つようになった。
業界の人のほとんどは、仕事であると同時に衣料品を買ったり眺めたりするのは趣味となっているといえる。
当然のことながら、衣料品に関する情報は一般人に比べると多く持っていて知識量も一般人よりは多い。
そうなると、新しいブランドや新しいアイテムへの興味が湧くから一般人よりは取り入れるスピードが速い。
業界人だけが買って成り立っている極小ブランドなら供給する側もそういう認識で良いが、マスに売りたい大型ブランドの場合、供給する側は一般人の意識も把握しておく必要があると思う。
先日、ファッション専門学校の生徒と+Jについての話になった。
専門学校にわざわざ進学するくらいなので、ファッションが好きな生徒である。その生徒が「高校のころの友達はジル・サンダーを知らなかったけど、昨秋の+Jで初めて知りました」と言っていた。
要するに、彼の友達はジル・サンダーという人の名前を知らなかったが、昨秋の+J発売で初めて知ったということである。
業界人からすれば想像もできないのではないか。
ジル・サンダー氏がデザインした服を買ったことがある、着たことがあるという人は業界人でも多くはないかもしれないが、名前くらいは知っているという人がほとんどだろう。
当方だって、20年くらい前から名前くらいは知っている。
もちろん、高額なのでジル・サンダー氏の服なんて買ったこともないし、買いたいとも思わなかった。今後も買わないだろう。
だが、ジル・サンダー氏ほどのビッグネームでも一般人はほとんど知らないということである。
恐らく、今春夏にジーユーとコラボしたミヤラヤスヒロ、アンダーカバーも知っている人は多くは無いのではないかと思う。
当方は学生時代にファッションに全く興味がなくて、就職してから興味を持った邪道派なので、当時の同級生たちのことは正確には理解できないが、DCブームのころ、ビンテージジーンズブームのころ、エアマックス95ブームのころ、裏原宿ブームのころというのは、もっとデザイナーだとか、ファッションプロデューサーだとかについての興味と知識を持っていた業界外の一般人が多かったように感じる。
業界人は、その頃と同様に一般消費者の嗜好を捉えている人が少なくないと感じるが、一般消費者の認識は2000年代半ばまでとは大きく変わっている。
今の一般消費者は昔よりも明らかにファッション情報に興味を持っていないように感じる。
収入が云々という意見もあり、それはそういう側面もあるだろうと思うが、個人的には娯楽や趣味が以前よりも多様化していることの方が大きな理由ではないかと思っている。
だから、業界人が効果があると考えて起用している業界の著名人はあまりマス層に対しては効果がないのではないだろうか。
もちろん、一部のファンや業界知識のある人たちにはそれなりの効果を発揮しているが、マスにはあまり通じていないのではないかと思う。
以前にも書いたが、Tシャツのブランド「ナインオクロック」を始めて、今は本業の美容室経営で手腕を発揮されている香取さんは、藤原ヒロシ氏を知らなかった。
多分、今は名前くらいは知っておられるだろうが、何をしている人かは良く知らないままだと思う。(笑)
ちなみに当方も同様である。(笑)
逆にいうと、今の一般消費者に名前を売るためには、ユニクロやジーユー、しまむらなどの大衆ブランドとコラボをする方が効果的ではないかとすら思う。
昔なら、「低価格ブランドとのコラボなんてブランドイメージを毀損する」と言われたものだったが、今は逆で、低価格大衆ブランドとのコラボの方がブランドの認知度が高まっているといえる。
また、昔ならブランドイメージが低下したが、現在のルメール、ジル・サンダー、ミハラヤスヒロ、アンダーカバーを見ていると、イメージが低下したとは感じられない。
イメージはこれまで通りだし、むしろユニクロやジーユーとのコラボが入門編となって、本体ラインに興味を持ちだす人もいそうな感じがする。
どの分野でもそうなのだが、低価格な入門編を作らない・作れない分野はメンバーが増えにくい。
初心者だからこそ一流の物をという考え方もあるだろうが、いきなり続けられるかどうかわからない分野に対して高額な一流品を買える人がどれほどいるだろうか。
自動車やバイクだって安価な中古車があって、初心者はそれで練習してから買い替えるではないか。
低価格ブランドとのコラボに対する反応を見ても、やっぱり一般消費者の嗜好は20年前、15年前とは大きく変わっており、業界人の認識をそちらにアジャストさせる必要があるのではないか、と、日々業界人とのやり取りを見ていて思っている。
プラモデル入門用の工具をどうぞ~
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OZ より: 2021/07/16(金) 7:36 PM
当方いい歳ですので、もちろんジルサンダーは知ってます。昔はミハラもジョニオも好きで着てたこともあります。ユニクロやGUのコラボはもちろん見に行きますが、ほぼ買いません。
歳と共に趣味趣向と変わってるのもありますが、テンションはあがりません。
ただ、協業に至ったユニクロGUがとてつもなく凄いとは思います。
自分はアラフィフですがアラサーの男子と話していてヨージヤマモトも山本寛斎もまったく通じませんでした。というか服のデザイナーにはまったく興味もないようです。