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南充浩 オフィシャルブログ

レナウンが破綻して1年になるが自分は全く困っていないという話

2021年6月14日 ネット通販 4

レナウンが消滅して1年になるが、非常に困ったと感じている人はおられるだろうか。

もちろん、元従業員や関係者(仕入れ先や納入業者含む)は大いにお困りのことだろう。何せ収入源が絶たれたわけだから。

しかし、買い物客として困っておられる方はほとんどいないだろうと思う。ちなみに当方は全く困っていない。

理由は簡単である。物心ついてから51歳の現在に至るまでレナウンの服をほとんど買ったことがないからだ。下手をすると1枚も買っていないかもしれない。倒産間際にレナウンインクスが製造した靴下10足入り1000円のパックを買ったくらいだ。ちなみにこの靴下は「安かろう悪かろう」ですぐに伸びたので全て捨てた。

その昔、レナウンルック(現社名ルック)が展開するブランドは買ってみたいと思ったことがあった。何せそこそこ人気のあるブランドを常に展開していたからだ。しかし、レナウン本体の商品を欲しいと思ったことはない。

だからレナウンが無くなっても当方は全く困っていなし、今後困ることもないだろう。

当方より年少者はもっと困っていないだろうと思う。

以前のブログでも書いたが、65歳になる業界の先輩ですらここ15年くらいはレナウンの商品を買ったことがないとおっしゃっていたので、レナウンの固定客は若くても60代後半以降、下手をすると70歳以上だったのではないかと思う。完全なるシルバー向けの会社、それがレナウンだったと思っている。

 

そういう当方からすると、これは本当の話だろうか?と疑問を感じてしまう記事が先日掲載されていた。

こちらだ。

レナウン破綻1年 23歳元社員の挫折「服が好きなだけじゃ、やってけない」 | WWDJAPAN

 

例えば入社を決めたくだりだが、

 

就活を始めた当初は、レナウンという会社自体を知りませんでした。出合いのきっかけは、大学の就活支援講習会。自分が自信を持って人に薦めれるような、マジメなモノ作りをしている会社を探していたんですが、「アパレル業界ってチャラチャラしているんだろうな」というイメージもどこかにあって。落ち着いて紳士的に振る舞うレナウンの採用担当者がかっこいいなと、一目惚れしました。採用面接でも、真摯に自分の個性や人柄を汲み取ってくれようとしていましたね。他の大手アパレル、セレクトショップも視野に入れていましたが、迷いなくレナウンに決めました。

 

とある。就職したのは2019年4月とある。

学生時代の就職活動なんて、店舗での衝動買いみたいなところもあって、合同説明会で時間つぶしに説明を聞いた会社に惚れ込むこともある。

しかし、2019年に就職したということは活動時期は2018年だったわけで、このころにはレナウンの経営悪化は広く業界では知られていたし、それこそ報道でも定期的に採りあげられていた。

それにもかかわらず「レナウンの社名を知らない」というのは不勉強だろうし、内情をまったく知らないというのも不勉強極まりない。本当に衣料品業界への就職を希望していたのだろうか?

そこまでの情弱なら自業自得なのではないかと思うのは当方がいつも通り歪んでいるからだろう。(笑)

 

また

WWD:やりがいはあった?

それは、正直「イエス」とは言えません。若手が意見を発する機会は、ほとんど与えられなかったように思います。新作の展示会では、キャリアや階級を問わず、商品について思ったことを自由に書いて意見できたんですが、この仕組みも形骸化していました。僕がしたためた意見は、一度も反映されませんでした。

 

とのやり取りもあまりにナンセンスだと感じる。

レナウンは20年に経営破綻しているから、この人が入社して1年強で潰れていることになる。今年入ったばかりの新人の意見がホイホイと反映される会社なんてあるのだろうか?この新入社員が学生時代からアパレルビジネスですごい実績を積んできたのならともかくとして、レナウン以外でも社内事情や納入先のことすら知らないだろう新卒の意見が反映されるようなアパレル企業は、よほどの少人数制ベンチャー企業以外はないだろう。もし、反映されると思っているのなら甘いし自意識過剰である。

 

いいものを作れるし、自分たちの商品が好きで真摯に売れる人はたくさんいるけれど、その魅力を届けるための手段を考えなかったからだと思います。僕の上司を含め、社内の上の人たちはSNSでのプロモーションやECをオマケだと考えていて、全くやる気が感じられませんでした。

 

ここの部分も前半はその通りだが、「いいもの≠売れる物」ということをまるで考慮していない。例に出されているダーバンやアクアスキュータムの新レーベルとやらは、価格帯が高すぎたのではないか?ターゲット層に対する適価を真剣に考えていたのだろうか?

それ抜きにしてSNSやECにやる気がなかったから売れなかったというのは本末転倒だし、ECはともかくとしてSNSなんてものは完全におまけでしかない。零細D2CブランドあたりならSNSで10人の顧客を捕まえれば売上高が何割か増えるが700億円のレナウンには焼け石に水だし、SNSで巨額の売上高を稼いでいる洋服ブランドを見たことがない。

ECはたしかにレナウンの規模感からすれば売上高が低かったが、これはレナウンの顧客層が老人ばかりだったからではないかと思う。今のコロナワクチン予約でもそうだが、老人はスマホを使いこなせないという抗議があるように、老人層向けのブランドがECで大きな売上高を稼げるはずもない。

逆にSNSを過剰に重視しているような印象のあるこの若者はいわゆる「今風」なのだろうと思うが、少し浅いと言わねばならない。

 

ファッションが好きな気持ちは、今も変わりません。ただ、がんばろうという心が折れてしまった。服が好きという純粋な気持ちでは、(アパレル業界で)やっていけないなと。

 

またここもどうだろうか。「好きという気持ちだけ」でやっていける業界なんてこの世に存在しない。スポーツ選手だって「好き」だけではやっていけず、マネジメント能力が必要になる。

 

このほか、レナウン社員には危機感がなかったとも語られているが、2019年にレナウンに入社する時点でこの若者も危機感が無かった一人だし、年配の社員を責める資格があるのだろうか。

逆に23歳の挫折なんて今後いくらでもやり直す時間はある。まったくかわいそうだと思わないわけではないが、あまり同情できない。それよりも40代、50代の元社員の方がやり直しは困難なので、そちらの方がよほど悲劇ではないか。

 

まあ、いろいろと不思議な記事だった。

 

 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2021/06/14(月) 10:35 AM

    今時は、「企業名+評判」とかで検索すれば、転職情報サイトとかで、その企業の従業員や元従業員の口コミ情報さえ簡単に見られる時代なのに、勧誘してる人の印象だけで入社決めちゃうアホな人いるんすよね~。うちのダメ会社にも高卒だけど新卒で入ってきちゃう人がいるくらいです。せっかく私が口コミ転職情報サイトに「社長が宗教じみた変なコンサルタントにハマってる」と情報載せているのにw

  • kta より: 2021/06/14(月) 10:47 AM

    実情やら企業背景など、少しでも教えられる環境にありながら、服作りやこだわり、時代性など(最も捉えどころなく、誤魔化しの利く言葉もSNSとかECかもしれません)都合良い所や耳障りの良い所だけ見せるような教育機関の問題も多いにあると思います。

  • beigang より: 2021/06/14(月) 11:49 AM

    おっしゃる視点、ご尤も。
    更には、WWDに限らすでしょうが、記者の力がオンラインに押されていると感じます。

  • BOCONON より: 2021/06/17(木) 7:11 PM

    僕は百貨店びいきだし,今回の記事にはいささか「?」ですね。いくら何でもレナウンという会社名すら知らずに入社してしまうような人間の話はあまり参考にならないと思う。そういう人はつまりレナウンでなくとも百貨店ブランドのメーカーの服なんぞろくに着た事もないって事でしょうから。まあユニクロ,GU ばかり着ていたのか何か知らないけど。
    そんなんで入社後間もないヒヨッコが「意見を聞いてもらえない」ったって,会社側も「そりゃ当たり前だろ,知識も経験の蓄積もないんだから。のぼせ上がるのも大概にせいや」としか言いようもありますまい。まあ「そもそもそんなレヴェルの学生を採用してしまう会社ってどうなんだ?」というのもありますが。
    一方確かに SNS でも TV でも雑誌でもいいが「魅力を届ける」どころか,ブランド名をおぼえてもらう,と云った程度の事すら出来ていないというのは本当だ。それはあまりと言えばオソマツ/無策過ぎる,というのは当たってはいる。だから今からでも(ダメ元と思って)やってみるくらいはしないとなあ,と僕なら思いますね。今のままでは「座して死を待つ」状態だから。

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