「あれ俺詐欺」にご用心
2020年1月9日 企業研究 3
20年前から現在に至るまで、アパレル不況と呼ばれながらも大ヒットしたブランド、ミドルヒットしたブランド、小ヒットしたブランドは国内にいくつもある。
アパレルブランドの場合、過去の経緯を見ていると、ヒットするかしないかは属人的な部分によるところが大きい。それが良いことなのかどうかは別にして。
ディレクターやらプロデューサーやら事業部長やらのパーソナリティで成功するかしないかは大きく左右されるが、実はそれを支えるチームや会社にも依るところが大きい。
だから、大きな成功をおさめたとして独立した事業部長やらプロデューサーやらが、他社の仕事を請け負った途端、何の成果も出せなくなることはアパレル業界では珍しくない。
それは彼を支えたチームや会社のスタッフの個性やシステムに依るところが大きかったことを当の本人が自覚していないためである。
独立してから連戦連敗なのになぜか仕事が途切れない不思議な人がアパレル業界には幾人も存在するが、彼が最初に成功できたのは、当人の才能もさることながら、彼を支えたスタッフや会社の金看板に依るところが大きかったということなのだが、本人はそれを自覚しないままに「俺はできる」と思い込んで売り込みを続けており、起用した会社を赤字に叩き落したり、場合によっては倒産させたりしているわけである。
逆に自分でやると失敗するが、名前を貸したり裏方に回ったりすると成功する人もいるが、このタイプの人はある意味でわきまえているということができるが、最悪なのは全然全敗でありながら、未だに第一線のプレイヤーで在り続けようというタイプの人である。
そういう怪しげな人たちは、往々にして「あのブランドは俺がやった」と吹聴しているのだが、ビッグブランドならまだしも中ヒット、小ヒットレベルのブランドで、指導者が幾人もいたはずがない。指導者・先導者が幾人もいたら小ブランドは逆に立ち行かなくなる。
だから中小規模のブランドなのに「あのブランドの成功は俺が導いた」と吹聴するような人が幾人もいるという場合、本物は一人だけで残りは嘘つきだということになる。
例えば、10億円規模のAブランドがあったとして、これを成功に導いたと自称する人が4人も5人も存在するのは極めておかしな事態であり、そのうち、本物は一人だけで残りはカタリである。
このカタリ連中を「あれは俺がやった詐欺」、略して「あれ俺詐欺」と呼ぶ。
某有名コンサルタント氏に聞いたところによると、コンサルタント業界にも「あれ俺詐欺」氏はけっこういるらしい。
この手の「あれ俺詐欺」氏の特徴としては鳴り物入りで入ってきても
1、掛け声ばかりでほとんど仕事をしない、か
2、無茶苦茶なパワハラに近いことをやって組織を潰していく、か
のどちらか、もしくはその両方である場合が多い。
昨年秋から年末クールにかけてのテレビドラマは3本を観ていた。正確にいうと1本を途中から観始めたので2・5本というところである。
一番の好みは、ディーンフジオカ主演の「シャーロック」だったが、ある意味で楽しめたのはキムタク主演の「グランメゾン東京」だった。
当初はグランメゾン東京を観ていなかった。もう今更、キムタクの天才シェフなんて何の興味も持てなかったからである。
しかし、途中から観始めたのは、媒体名は忘れたが、某芸能関係の記事に「往年のキムタクテイスト全開」と書かれていたからである。
「何をやっても同じ」と言われるのは、キムタクかエディ・スリマンかくらいだが、ここ10年くらいはその評判を脱したかったのか、いろいろとキムタク氏は試行錯誤していたように画面からは見えた。
今回は往年の「キムタク」を全開にしているというので、興味本位で途中から観始めた。
その記事の通り「全開」だった。逆に50歳手前までよくもこの「イキり」が続けられるものだと感心してしまった。かれこれ30年間はイキり続けているので、そうなればもう名人芸である。真似したいとは全く思わないがすごいものだと思う。
その「グランメゾン」にはライバルの「gaku」という店が登場する。最終回手前で、この「gaku」は、オーナーがそれまでのシェフに不満を持って、新しいシェフをパリから呼び寄せるのである。
で、最終回では新体制となった「gaku」が一度崩壊してしまう。
原因はパリから来た新しいシェフである。だいたいにしていつもピンクのスカーフを首に巻いているあたりが気色悪い。
このピンクスカーフシェフが就任した途端、彼によるパワハラ、モラハラの嵐が吹き荒れ、従業員を勝手にドンドンクビにし、挙句の果てにはパリから自分の腹心を呼び寄せてわがまま放題をする。
最終的には、その日の売上高を「退職金もらいま~す」と言って、腹心と二人で持ち逃げしてしまう。
「ああ、業界あるあるやなあ」と思いながらテレビを観ていた。
衣料品業界でもそういう話はよく聞くし、実際にパワハラ・モラハラをやる人も目にしたことがある。ドラマなのでいささか誇張があると思われる人もいるかもしれないが、衣料品業界ではドラマの描写そのままであることが多い。
「あれ俺詐欺」の人たちはだいたい、扱っていた業界は違えど、ドラマのピンクスカーフシェフのように徒党を組み、パワハラ・モラハラ、わがまま放題をする。あまつさえ、売上金を持ち逃げしたとか商品を持ち逃げしたとかいう話を聞いたこともある。
先日、ある優秀な若者が「●●ブランドは、俺がやったという人が、知る範囲だけでも4人くらいいるんですよね~」と呆れ果てていた。
言うまでもなく、そのうちの3人は「あれ俺詐欺」である。
そんなわけで「あれ俺詐欺」は業界を問わずに跳梁跋扈しているので、経営者や報じるメディアは気を付けなくてはいけない。
そんな、グランメゾン東京の下巻をどうぞ~
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☆☆☆ より: 2020/01/11(土) 8:59 PM
これ面白い!本当にいますねこういう人。会社を辞めた後、新しい会社を立ち上げて、新取引に来た時に「あの事業部がこれまで上手くいったのは全部自分のおかげです」と平然と言う人がいます。たいがい定年少し前に辞めたケースです。こういう人はもちろん信用しませんけどね。あと、前の会社の悪口を叩いて帰りますね。世話になった会社の事をここまで言うかなってくらい喋って帰ります。当然取引しませんが。
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とおりすがりのオッサン より: 2020/01/14(火) 10:42 AM
そういう人って本気でそう思ってるんでしょうねw
うちの会社にも社長に拾われた一部上場C社に勤めてた人が社長室長としていますが、口だけは達者で元C社で云々と言って、他社のコンサルタントまがいの事やってます。自社は全然儲かって無くて、今年は赤字決算になりそうなんですけどw
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こういうのって詐欺に当たらないんですかね