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南充浩 オフィシャルブログ

現場の運用を考慮していない企画は成功しにくい

2020年1月8日 ネット通販 1

5年くらい前からWEB関連の相談を受けたり、それについての商談に立ち会うようになった。

EC、いわゆるネット通販についての商談や会議に立ち会うことも何度かあった。そうすると、門前の小僧のように習っていないのに、何となくお経が読めるようになったりしてしまう。完全に読めているとは言い難いが、何となく勘所のようなものがぼんやりとわかってくる。

多くのWEB業者は、WEBの専門家ではあっても、衣料品やファッション雑貨の専門家ではない。

そこを見落としているWEB業者は掃いて捨てるほどいるし、そこを見落としている衣料品業者も掃いて捨てるほどいる。

 

例えば、某衣料品ブランドは小ぢんまりとした業者に今までWEB製作や補修点検を依頼していたが、たしかにWEBに関しては専門だが、衣料品ビジネスはからっきしの素人なので、新商品のページアップがいつも遅れる。2019年秋冬シーズン真っただ中だったにもかかわらず、2019年春夏商品がメインで掲載されていたりした。

 

これは業者の怠慢という部分もあるだろうし、ブランド側の管理不行き届きという部分もあるだろうが、一番の原因は、WEB業者が衣料品ビジネスのサイクルをまったく理解していないという点だと考えられる。

 

 

バツイチ独身で、老父も入院してしまったため、今年の正月はガンプラを作りながら一人で過ごした。そんな中、3人で小ぢんまりと新年会を行った。もちろん男3人でである。

その際、話題として出てきたのが、「現場のオペレーションを知らない立案」についてだった。

 

WEBで関して言えば、上記のような例である。コンセプト作りだとかページデザインだとか、そういう点では良い物が出来上がったとしても、衣料品ビジネスの現場のサイクルを知らなければ、どうして早めに商品をアップしなくてはならないのかがわからないということになる。

そういう当方も新卒入社したころには、衣料品業界が季節に先んじて商品を企画生産していることに驚いたものだった。

大学生あがりの人間からすれば、まだ9月なのに来年の3月投入の商品が提案されているわけである。驚いてしまうのも無理はないと自己弁護してみる。

 

しかし、業界に慣れて、冷静に考えてみれば、展示してから受注数量をまとめ縫製していれば、生産数量にもよるが最低でも4カ月くらいは必要だということが理解できてくる。生地から製造する場合なら、さらに長いリードタイムが必要になることも理解できてくる。

 

結局はこういうサイクルを理解できるかどうか、頭ではなく腹落ちできるかどうかではないかと思う。

 

WEBだけではなく、世の中にも、衣料品業界にもそういう「現場のオペレーションを理解していない企画・立案」は山のようにある。

以前、昔ながらの手打ちレジをPOS化するために必要なことをシミュレーションしてみたことがある。商品コードを決めて、バーコードを作ってそれを値札に貼り付けるという作業が必要になる。

ここまでは当方のような者にも容易に想像できる。

しかし、問題は、どうやって実際に値札にバーコードを商品に貼り付けるかである。様々な意見を聞いたり、自分で考えたりしてみたが、最終的には1枚1枚商品に人海戦術で取り付けること以外には解決策がなかった。

自動バーコード貼り機みたいな便利道具は存在していないのである。

 

となると、POS化するためには、レジ機を購入またはレンタルするほか、商品コードを決め、バーコードを作成しただけでは足りず、一枚一枚商品の値札に取り付けるという人間の手による作業が必要となる。

短期間で終わらせるためには、たくさんの人手が必要だろうし、人件費をケチって少ない人手でやるなら日数がかかる。そのどちらかしか選択肢は存在しない。

また、今後入荷した商品には必ずその都度、値札にバーコードを貼り付けなくてはならないから、そういう部門もしくは担当者が必要となってくる。

現場のオペレーションがわからないと、そこまで考えが及ばないということになり、笑い話のようだが、そういう企画・立案は世の中に多くある。

いわゆるコンサルタントの企画・立案が成功しないことが少なからずあるというのは、コンサルタントが現場のオペレーションを考慮しない(できない)場合が多いからではないかと思う。

 

ビジネスを戦争に例えるのは怪しからんという意見もあるが、戦略としては適切だったのに、戦術がまずかったために負けたという事例は枚挙にいとまがない。

 

また、コンセプトや狙いは良いのに、業績が一向に上向かないどころか、赤字続きの新規ビジネスなんていうのも現場のオペレーションを考慮していない・できていないからではないかと思う。

個人的には、冠婚葬祭用・パーティー用を除く、各社の洋服レンタルサービスはその代表例ではないかと思って生暖かく眺めている次第である。

 

何はともあれ、個人的に衣料品業界との一番ミスマッチが多いのが、WEB業者と広告業者ではないかと思う。業者の方は衣料品ビジネスの現場をわかっていないことが多いし、衣料品業界は専門家に任せておけば丸投げでOKみたいな考え方が多い。そして悲劇的な結末に終わるのが常である。

 

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2020/01/08(水) 12:03 PM

    意識高い系の経営者とかは現場見ないでやりそうっすね、バーコードとかの話w
    金属加工業のうちの会社の社長も、現場見ないで使えないシステム導入しては悦に入って、現場は無駄に仕事増やすって感じのことやってますわ。この前も、自社のWebサイトをスマホ対応にしよう、とか言い始めてましたが、BtoBオンリーでやってる業態でWebからの問い合わせなんて月に数件レベルなのにスマホ対応なんて意味ねぇよ、と思いますw

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