
2020年から国内の繊維製造加工業は本格的に消え始めるのでは?
2019年12月26日 産地 0
先日、マサ佐藤氏から紹介を受けたクラファンがある。
学生×産地伝統『絶滅危惧種のファッションショー』を入場無料で開催したい!
https://camp-fire.jp/projects/view/207031
見出しだけ読むとよくあるイシキタカイ系の「産地ガー」とか「モノヅクリガー」のお花畑学芸会かと思ってしまうが、この学生さんたちはキチンと国内の生地産地や国内アパレルの問題点を理解したうえで、この活動をしているらしいから、そこら辺の脳みそ花畑状態の自称クリエイターよりはよほどクレバーだと思う。
単純なお花畑かぶれをマサ佐藤氏が支援するはずもない。
先日、某サイトの人と久しぶりにお会いしたが、デザイナー支援みたいなプログラムがその中にあって、文面だけ読むと、よくありがちなお気楽ファンタジーかと思ったが、内容を聞いてみると審査基準が厳しく、彼らは「これだけ国内にアパレルブランドが溢れている今、新しくブランドを立ち上げる必要があるとは思えないから、それでも立ち上げたいという強い動機・目的以外は合格させない」と話していて、「看板」だけでは判断できないものだと感じた。
恐らく、この学生さんたちの掲げている看板もそういうことなのだろうと思う。リーダーの学生さんの経歴を拝見すると普通の大学で人文ジャーナリズムを専攻しておられたので、その辺りの冷静な視点はお持ちなのだろうと思う。
ご興味のある方、特に繊維・アパレル業界の方々は支援してあげてもらいたいと思う。
彼らも活動していて気付いているとは思うのだが、来年以降、国内の繊維製造加工業者はさらに激減する方向にある。
年末ということもあり、来年以降の見通しを大まかにまとめてみたい。
20何年前に繊維業界紙に入ったときから、国内の繊維製造加工業は減少し続けており、産地存続の危機が叫ばれていた。
それでも2019年まで、いくつもの大手工場が倒産しながらも、国内の各産地は何とか生き延びてきた。
もちろん、生き延びただけで実際の問題は何も解決していないというケースは多々ある。また補助金・助成金で生活しているような業者もある。
それでも消滅せずに生き延びることが2019年まではできた。
しかし、来年以降は本格的に消え始めるのではないかと思う。
野生動物でもそうだが、絶滅するのは、ある時期に同時に全部が消滅してしまうわけではない。徐々に個体数が減って何十年、何百年後に最後の1頭が死んで絶滅する。
業界や業態でも同じで、一挙に全部が倒産・廃業するわけでもないし、その業態が瞬時に消滅してしまうわけではない。
国内繊維の製造加工業も野生動物のように絶滅するのだろうと思う。
どうしてそう思うのかというと、そもそも「糸」が国内で作られなくなっている。
現在の洋服の縫製のほとんどは海外だということは知られている。これまでは、糸と生地は国内で作り、それを海外に持って行って縫製するという仕組みだったが、生地、ひいては服の根本である糸が海外で生産された物を使うのであれば、生地もそのまま海外で作った方が手間もコストも省ける。
生地だけを国内で生産するメリットがほとんどない。あるとすれば国内でしか作れない特殊な生地だけということになる。
それ以降も「糸」の生産に関しては国内工場の悪いニュースしか耳に入ってこない。
某中堅紡績の国内工場の年内閉鎖が決まっていて、あと数日で閉鎖になる。
また、糸ではないが、某グループの成型インナー工場も2020年以降閉鎖が決まっている。
先日、某大手紡績がユニクロとの取引を終了させられたと聞いた。その紡績グループの某国内工場は注文がないので、現在はほとんど稼働していないといわれている。
これらと密接に絡んでいる各産地の生地工場や染色加工場が打撃を受けないはずがない。
また某デニム生地工場も大口取引先が無くなるかどうかの瀬戸際だそうで、これが仮に無くなったとするとこのデニム生地工場は倒産に追い込まれるだろうし、デニム用の太番手の綿糸だって国内での製造は無くなってしまうだろうと言われている。
紡績だけではなく、合繊メーカーも同様で、合繊の国内工場は減っている。最近、アパレルの様々なブランドと盛んにコラボをしている某大手合繊メーカーの某素材も実はその糸は台湾からの輸入であり、国内で生産されたものではない。合繊メーカーと密接な関係にある北陸の合繊生地産地も今秋は厳しい状況にあるといわれている。
こうした動きは2020年からはさらに増えるだろうと予測され、今後ますます、各地方の生地工場も染色加工場も厳しい状況に追い込まれることが容易に想像できる。
とはいえ、先ほども書いたように、一気に絶滅するわけではなく、暁の空から星が徐々に消えていくように、工場は徐々に姿を消していくだろうと考えられる。
その中でも、「続けたい」という意欲のある工場経営者もおられるだろうから、そういう中でも「まともな思考」をする人には、要望があれば支援・協力したいと思う。
難しい要因しかない状態だが、先に挙げた学生さんたちにはがんばってもらいたいと思う。