
「看板」になる商品は必要か?
2019年11月8日 トレンド 1
ライトオン、マックハウスの苦戦に代表されるように、ジーンズカジュアルチェーン店という業種が厳しい状況にある。
縮小均衡で底打ちしたジーンズメイトと3社を合わせて考えてみたい。
かつて、ジーンズはその時々でビッグトレンドがあった。80年代は置いておいて、90年代から考えてもレーヨンソフトジーンズ、ビンテージジーンズ、ローライズジーンズ、ブーツカット、スキニージーンズとビッグヒットが次々と生まれた。
そのため、ジーンズカジュアルチェーン店は「ジーンズ」を基調としながらもトレンド対応型・トレンド追随型で2010年頃まで続いてきた。
一方、ファッションという切り口でいうと、ジーンズは「定番アイテム」の一つに区分されるのだが、その割にはトレンドが目まぐるしく移り変わった。
多くのジーンズカジュアルチェーン店は、目まぐるしく移り変わるジーンズトレンドに対応することに主眼が置かれていたといえる。
言ってみれば、今のジーユーやグローバルワークとちょっと似ているのではないかと思う。「毎シーズン必ずある」というアイテムがない。
その対極にあるのはユニクロや無印良品だろう。
ユニクロは、そのブランド名を聞いたときに連想するアイテムがいくつかある。
フリース、ヒートテック、ウルトラライトダウン、エアリズム、カシミヤニット
などである。
体感的な話で申し訳ないが、2005年頃まではこうした「定番アイテム」を持ったユニクロを「ダサい」と考える風潮があったように感じる。
しかし、2019年の現在では、定番アイテムがあるからこそ、ユニクロに対して「わかりやすい」という評価になり、ユニクロのイメージを強化していると感じられる。
一方、ジーンズカジュアルチェーン店はその時々によって並べられているアイテムが変わるため、確固としたイメージを抱きにくい。全盛期はそのスタイルの方が良かったのかもしれないが、2019年ではそれが逆にイメージを弱めている要素となってしまっている。
ジーンズメイトといえば●●、マックハウスといえば●●、ライトオンといえば●● という「強いアイテム」が存在しない。
それゆえに、お客からすれば「どこで買っても一緒」ということになりがちになる。
ジーンズカジュアルチェーン店大手の苦戦はこれが原因の一つではないかと思う。
ジーンズメイトに関しては今の縮小均衡方向で小ぢんまりと収益化できればよいのではないかと思うが、ライトオンとマックハウスという大手二社にはちょっと打つ手が見当たらない。
不採算店を閉鎖して縮小均衡させるくらいだろうか。
ただ、ライトオンには「定番アイテム」化できる商品がかつてはあった。あれを定番化していれば少しは状況は変わっていたのではないかと思う。
当方が考えるライトオンの定番化できたアイテムというのは、自社PBの「キャンプ7」でかつて打ち出していた「ウォッシャブルダウン」である。
はっきり言ってしまえば、通常のダウンジャケットは洗濯することができる。特別にウォッシャブルダウンなどという物を作る必要もない。
なぜなら、ダウンジャケットの外側の生地は水に強いポリエステルやナイロンといった合成繊維である。詰め物である鳥の羽毛も水には強い。
水に強い者同士を組み合わせて商品化しているから、ダウンジャケットという物は元来が水洗い可能なのである。
しかし、業界が積極的にそういう告知をしてこなかったせいもあって、ダウンジャケットが洗濯可能ということはあまり知られていない。
だから、「ウォッシャブルダウン」と銘打つのは非常に妙手だった。
消費者に対してわかりやすい価値を付与できていた。
だが、このウォッシャブルダウンは3年くらい継続した後、突然廃止になってしまった。売れ行き自体は悪くはなかったと聞いており、関係者によると年間10万枚以上は売れていたという。それどころか20万枚に達した年もあるという。
これだけ売れていれば定番化して、毎年、例えば3万枚くらいの生産をし続けても良かったのではないかと思う。
このヒットアイテムをわずか数年でどうしてやめてしまったのか。
理由はわからないが、ここからは個人的な推測だが、アパレル特有の「新商品をやらなければ」病に罹患したのではないかと思う。
アパレル業界には「新商品」をやりたがる癖がある。もちろん、いくら「定番」と言っても、微妙なアップデートは必要で、それはユニクロを始めとする定番品が強いブランドも常に微妙なアップデートを繰り返している。
しかし、この「新商品」病はそういうアップデートではない。長年に渡って同じ商品をやり続けることを嫌う病気である。
順調な商品を廃止してでも何故か新商品を投入したがることが往々にして起きる。
それはアパレルの黄金時代だったころの名残ではないかと思う。たしかにあの当時には「定番品」という考え方があまりなかった。
世の中のトレンドも早い速度で移り変わっていた。
その時代に若き日を過ごした経営者はその感覚が今でも抜けないのだと思う。
しかし、その当時に比べるとトレンドの移り変わりは緩やかになった。また、消費者も「定番品」と「トレンド品」の使い分けをするようにもなった。
トレンドに合わせて全身のスタイルを変えるという消費行動もなくなった。
ウォッシャブルダウンを今までやり続けていれば、ライトオンという店には確固としたイメージができたのではないかと思う。
まあ、一種類の商品くらいでは戦局を変えることはできにくいことは重々承知だが、こういう細かいことの積み重ねが今の状態を作っているといえる。
一度再考してみてはどうか。
エフオーキッズの洗える子供用ダウンジャケットをどうぞ~
服とかめったに買わない団塊ジュニア世代のオッサンのわたくしですが、たまに昔から着ててボロくなったけど気に入ってる服をもう一回買おうとか思っても、とっくに売られなくなってるってのありますね。まぁ、服以外でもコンビニで気に入った弁当とかデザートとか、すぐに無くなっちゃうってこともありますがw
「同じ商品をやり続けることを嫌う病」とか、なかなか業界人以外では思いつかない発想が面白いっす。