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南充浩 オフィシャルブログ

商品を作りすぎれば不良在庫が増える

2019年10月9日 ネット通販 0

大手カタログ通販各社は厳しい業績が続いている。

とくにニッセンと千趣会は厳しい。そんな中でベルーナとスクロールは復活した。

スクロールは基本的にアパレル製品の販売をやめて復活したが、ベルーナはアパレル製品を販売し続けている。

ベルーナが他の大手通販と異なる点は、アパレル製品のリアル店舗を増やしているという点である。

 

何店舗かを実験的に出店する通販はあったが、何十店舗も出店しているのはベルーナくらいである。

それについて以前に書いた。

 

ベルーナの実店舗出店がめっちゃ増えている件

これを書いた時点ではベルーナの実店舗は75店くらいあった。

ここまでチェーン店化しているカタログ通販業者はない。

 

カタログだろうが、ウェブだろうが、通販には変わりがない。通販のデメリットは現物が見られない・触れないところにある。

ウェブやカタログの商品がすごくイイ風合いに見えたとしても、現物を見てみるとイマイチなこともある。

 

例えば、ユニクロUの今秋物のチェック柄セーターがある。

ウェブの画像で見る限りでは、ミドルゲージのそこそこ肉厚な生地のように当方には見える。しかし、売り場で手に取って見ると、生地はめちゃくちゃ薄い。ファインメリノセーターよりも薄いくらいではないかと思う。

もちろん、ユニクロU側にはそれなりの意図があってこの肉感を選んだのだろうが、ミドルゲージセーターをイメージしていた当方はこの商品は買わない。よほど値下がりしても買わないだろうと思う。

 

カタログにせよ、ウェブにせよ、画像だけでは判断できないという部分が常にある。

実店舗を作るということは、それが確認できる場があるということで、多店舗化すると、各地方の人でも近所の店で確かめることができるから、さらに相乗効果が見込める。

ベルーナが実店舗を増やしているというのは理に適っている部分がある。

 

とはいえ、世の中の物事にはメリットとデメリットが常に存在するから、実店舗を増やす危険性もある。

一つには出店コストの増加である。店を作れば作るほど初期費用がかかる。

また人件費・販管費も増加する。

それに加えて、ベルーナにはもう一つ気になる情報がある。

 

あるバッタ屋の社長によると、

 

ベルーナは通販用とは別に店舗用に商品を作り込んでおり、その在庫が増えている

 

という。

恐らくは型数・数量ともに作り込んでいるのではないかと思う。

 

これが事実だとするとかなり危険だと言わざるを得ない。

 

ベルーナに限らず、通販業者がリアル店舗を出店するには、通販と店舗の商品が共通化できれば理想的である。通販の客が店舗に来て実物を触ることができるから、購買を促すことができる。

しかし、通販と店舗で別の商品を展開すれば、相乗効果はほとんどなくなる。お分かりだろうか。

 

店舗に立ったことがある人間としていえば、

 

こんな物があればもっと店舗で売れる

 

とか

 

あんな商品が店にも欲しい

 

とか

考える。これは真面目に仕事をしていれば当たり前のことである。

 

実際、販売員が「あればいいな」と思う商品が売れるかどうかはわからない。売れることもあるだろうし、売れないこともあるだろう。

とはいえ、一応、店頭スタッフは本部にその要望は提出する。それも立派な業務の一つだ。

その要望を集約して取捨選択するのは本部の仕事だが、確固たる判断基準がないと、各店からの要望に流されることになる。

 

店としては店用商品が増えることはプラスの側面がある。

 

この商品は通販では買えませんよ

 

と言うことができ、接客のキメ言葉に使える。

 

しかし、オリジナル商品のすべてが売り切れるわけではないから、当然、売れ残り在庫が生じる。1店舗だけなら売れ残り量も知れているが、これが80店舗近く集まるとかなりの量になる。

しかも通販では売っていないのだから、通販で捌くことも考えにくい。

 

必然的に、捨てるかバッタ屋に売るかしか選択肢がなくなる。

どちらにせよ、利益率は悪化する。

 

現在、好調なベルーナだが、この手法を野放しにし続けると、業績が悪化するのではないかと思う。もちろんすぐに悪化するとは思わないが、何年間か蓄積されれば、その時に爆発してしまうだろう。

 

ちょうど、ブランドリニューアルで好調と報じ続けられていたJクルーが、突然巨額の赤字を計上したように。

あれは恐らく、絵に描いたような美しい物語を作ってブランドリニューアルをはたし、復活を喧伝した一方で、売れ残り在庫が毎年蓄積して行ったのだろうと当方は見ている。

そして、それが隠し切れなくなって巨額の赤字として計上した。その赤字は今もJクルーを苦しめており、絵に描いたような美しい物語だけでは衣料品ビジネスは成り立たないという格好の教材だといえる。

Jクルーに限らず、メディアや業界がほめたたえるブランドだって、後ろ暗い部分は絶対にある。某社や某社は下請け製造業者からの評判が非常に悪い。1社は、作る数量を示唆しているにもかかわらず、在庫として引き取らず工場にその在庫を持たせているし、もう1社は工賃がかなり安いと言われている。

 

また有名セレクトだって、激烈に工賃が安く金払いが悪いと言われている会社が何社かある。

 

それはさておき。

ベルーナは店舗用オリジナル商品と通販向け商品のバランスに気を付けなければ、Jクルーのように一転して業績が悪化してしまうようなことにもなりかねない。

そのバランスを取るのが本部の本当の業務である。

 

 

 

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