自社通販サイトを強化すべき理由
2019年10月8日 ネット通販 0
今回は、以前書いたものを改めてリライトして整理してみる。
最近は小売店やSPA型ブランドに限らず、卸売り型メーカーブランドでも収益拡大を狙って、自社通販サイトを開設するケースが多い。
しかし、この通販サイトは
ほんとに売り上げ拡大を目指しているの?
と疑問を感じる場合が少なくない。
例えば、
まったく存在が知られていない、導線がない、集客の工夫がなされていない
などのケースが散在できる。
取材で話を伺えば一様に「卸だけでは厳しいからウェブ通販で補填したい」というが本当だろうか?
また、社員の数が少ないからそちらにリソースを避けなくて、更新が遅れて売れないという場合もある。
通販サイトは流行に乗っただけのお飾りで、建前の存在に過ぎないというのなら、今のままでも構わない。別に日本に限らず世界中どの国にも建前と本音は存在する。
外国人は建前を言わないとか言ってる奴はアホでしかない。
しかし、もし、本当に直営サイトで通販の売上高を稼ぎたければ、小売店だろうが、SPAだろうが、卸売り型メーカーだろうが、自社サイトへの宋客を強化する必要がある。
理由はこれに書いた通りで、めんどくさいからアパレルと総称すると、ZOZOだろうが楽天だろうが、大型ECモールに出店している限りにおいては百万年やり続けても顧客情報はまったく蓄積されない。
顧客情報が蓄積するのはECモール側だけである。
SPA型やショップだと、よくある酷い対応は、販売員が自社サイトではなくZOZOや楽天を購入客に勧めるケースである。これは珍しくない。
販売員は自社サイトを購入客に勧めるべきである。
しかし、無名のブランドが自社通販サイトのみを立ち上げたところで、知られていないのは存在しないのも同然だから、集客は見込めない。
だから、本当にサイトからの売上高を増やしたければ、ZOZOや楽天などの大型ECモールへの出店、Amazonへの出品と並行して、自社サイトを強化するほかない。
徐々に自社サイトの売上比率を高めて行って、最終的には手数料を取られる大手モールやAmazonへの出店を取りやめるのが理想的といえる。
オンワード樫山のECは現在のところ理想的である。
先日、オンワードが新戦略を発表し、大量閉店とEC強化を打ち出した。
投資を強化するデジタル分野では、「オンワード・クローゼット(ONWARD CLOSET)」など自社ECが8割強を占めるEC売上高が、19年3~8月期に前年同期比34%増と伸びている。通期では350億円(前年比37%増)を、22年2月期は500億円を見込む。
とある。
オンワードがアリガトー騒動の際、真っ先にZOZOから撤退できたのは、ZOZO内での売上高の低さに加えて、自社サイトの好調があったからだ。
結局は30%とか35%とかの手数料を取られるモールでは売上高を増やしても利益はまったく増えない場合がある。年初にZOZOから撤退した某社は「手数料は34%で、実際のところ利益はほとんどなかった。撤退しても売上高は減るが利益は変わらない」と話しており、作業効率や生産性から考えると、売上高は増えても利益は増えないのなら、それはある意味で「骨折り損のくたびれ儲け」ということになる。
企業やブランドの指標を売上高の拡大に置く時代遅れな会社は多いから、それはそれで経営者は満足なのかもしれないが、儲けが変わらないならやめてしまったところで損害は軽微だといえる。むしろ作業効率はアップする。
もちろん、粗利益や営業利益というのは売上高以上になることはなることはないから、例えば、売上高が極小だった場合は、増やさないことには儲からない。
売上高が100万円しかないのに、粗利益が1000万円になることはない。
粗利益1000万円が欲しければ最低でも売上高は1000万円にするしかない。
しかし、売上高がすでに何億円、何十億円もあるなら、むやみに売上高を追いかけるよりは、利益を追いかける方が効率的で儲かる。
ところが、ネット通販ということになれば何故か「ZOZOでなければ」とか「楽天でなければ」と言い出す衣料品業界人は多い。
もちろん、大手モールの存在を否定するつもりはないが、繰り返すが、ウェブ通販の売上高を高めたければ、大手モールは「利用すべき手段の一つ」でしかないし、自社サイトを強化するのが最も正しいやり方である。
別に大手モールに忠誠を尽くしたところで、それに報いられることはないし、モール側だって自社の都合でどんどんと施策を変更する。別に運命共同体ではない。
自社を守れるのは自社しかないし、天は自ら助くる者を助く、である。
ただ、小資本のブランドが早急に「自社サイトのみ」ということをやると、物流費や倉庫費、人件費がかさむことがある。
知り合いの某小規模ブランドは早急に自社サイトのみにしたために、それらがかさんだことから、改めてAmazonへの出品も再開した。
これは自社の業績を見ながら、モールやAmazonとのバランスを取っていくほかない。
しかし、それらを切って利益率の高い自社サイトのみにするというのが、ウェブ通販の最終形態だといえる。
そこに向かって進む道は、各社の状況によって様々あるが、最終形態を見失わないことが重要で、「モールでなくては」とか「Amazonではなくては」と思考停止してしまうことがもっとも悪手であるといえる。