ワークマンと無印良品の現状をユニクロと比較するのは無理がある
2019年8月1日 メディア 0
あまり話題にならないが、無印良品を展開する良品計画の2020年2月期連結第1四半期決算は、増収ながら大幅減益となった。
良品計画の決算は、会計基準の違いから少し通常の国内企業とはフォーマットが異なる。
売上高にあたる営業収益は1123億2800万円(対前期比5・5%増)
営業利益 103億5400万円(同22・3%減)
経常利益 96億300万円(同28・6%減)
純利益 65億9400万円(同30・9%減)
という内容である。
大幅な減益の理由として、
・人件費の増加
・物流費・配送費の増加
が挙げられている。
商品的にはヒット商品もあり、増収となっているが、この2つの要因で減益になるということは、商品の改良や売り場の効率化では解決できないということで、今後も長く尾を引くのではないかと考えらえる。
日経新聞では、このほか、中国でも人件費が値上がりして減益要因となっていることを伝えている。
人件費、要するに賃金の問題は、国内外とも今後さらに上がることはあっても下がることは考えられない。先日も今秋からの国内の最低時給のアップが発表されたばかりである。
もちろん、現在でも他のアパレルに比べると十分な利益を稼いでいるから、ただちに危機が訪れるとはまったく考えられないが、青天井の利益額拡大も相当に難しいと考えるのが適切だろうと思う。
以上の状況を頭に置いて、以下の記事を読んでもらいたい。
ワークマンと無印良品が、停滞する国内アパレル市場で成長する理由
https://diamond.jp/articles/-/210212
ひどく大雑把にこの記事を手短にまとめると、
ユニクロに代わって衣料品分野で存在感を示しているのが、良品計画が展開する「無印良品」と作業服専門店の「ワークマン」である。
という趣旨になる。
その根拠となるのが、
2019年8月期上期(18年9月から19年2月)の国内ユニクロ事業の既存店売上高は前期比0.9%減だったし、営業利益は23.7%減。国内827店(18年8月期)という店舗数も漸減傾向である。
とのことだが、この見方は果たして正しいだろうか?当方は全く正しくないと思う。
営業利益の23・7%減をもって「ユニクロの苦戦」と言っているが、無印良品も同じくらいの営業利益の減少幅(22・3%減)である。
これでユニクロが苦戦なら、無印良品も苦戦と言われるべきだろう。
ユニクロの店舗数の減少について言及しているが、今時、ドンドンバンバン出店しているのは、それこそ大苦戦中のしまむらくらいである。
ユニクロの店舗数減少はほぼ意図的だと考えられ、その分、ネット通販売上高を850億円以上にまで高めている。一体なにを見ているのだろうか。
続いて、「ユニクロの足元を揺さぶっていることは確かだ」と書かれているワークマンを見てみようか。
2019年3月期非連結決算では
売上高にあたる営業総収入は 669億6900万円(対前期比19・4%増)
営業利益 135億2600万円(同27・6%増)
経常利益 147億5500万円(同24・5%増)
当期利益 98億900万円(同25・1%増)
と大幅な増収増益となっている。これは非常に立派な数字だが、売り上げ規模を国内ユニクロと比較してみると、その10分の1にも達しない。
国内ユニクロの売上高は8500億円である。
足元を揺さぶるどころか、足元にも遠く及んでいないことがハッキリくっきり東芝さんわかるだろう。
ワークマンの積極的な販売政策や販促は停滞気味の国内アパレル市場においては刺激的だし、称賛に値する。ワークマンの販促は貪欲で当方ごときの存在に対しても、新店オープン内見会や展示会に逐一招待する。他の低迷アパレルはそんな招待すらない。ワークマンがどれほど貪欲で積極的なのかがわかる。
ワークマンによって足元を揺すぶられているのは、ユニクロではなく、他の低迷しているカジュアルアパレルだと考えるべきではないか。
そして、カジュアルアパレルを揺さぶっているのは、ワークマンだけではなく、実はワーキングユニフォーム業界全体である。今はまだ、一般ユーザーやファッショニスタは注目していないが、ワーキングユニフォーム業界全体がカジュアルファッション化に大きく乗り出している。
以前にこんなブログをアップした。参考までに。
そして、個人的には無印良品とワークマンに、最も足元を揺すぶられて客を奪われているのは、低価格ゾーンにおいては、しまむらではないかと思う。
現在の国内アパレルにおいて、好き嫌いは別としてユニクロは絶対王者である。「あしたのジョー」でいえばホセ・メンドーサくらいの強さがある。その絶対王者が少し苦戦をすれば報じるのがメディアの仕事だといえるが、分析が正しくないのはいただけないし、それがミスリードを引き起こす。
以上見てきたように、ワークマンがユニクロの足元を脅かすまでには相当に時間がかかるし、無印良品はその商品開発力やブランド力の強さは評価できるが、今後上昇する一方の人件費と物流配送費による大幅減益に対してはちょっと打つ手が見当たらないというのが実情だといえる。
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