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南充浩 オフィシャルブログ

他の商業施設よりも抜きん出るマルイのオムニチャネル戦略

2019年7月31日 ネット通販 0

百貨店のネット通販強化は笛吹けど踊らずの感じがある。

ネット通販というのは不思議な部分があり、有名な企業が運営しているというだけでは売れないことが珍しくない。

某M不動産のナンタラモールなんて鳴り物入りで始まって、某コンサルがポジショントークでほめていたが、出店ブランドによると実情はまったく売れておらず、実はその社内からも廃止論が出ているほどだと言われている。

よほどの「何か」がない限り、漫然と開設しただけでは人は集まらず、ウェブ上での集客がことのほか重要だということになる。

 

百貨店の首脳陣は、決算会見などでは決まったように「オムニチャネル推進」と言っているが、実際のところは掛け声倒れに終わっている感があり、身の周りでも「●●百貨店のサイトが使いやすい」という評判は聞いたことがない。

それなら、各店舗在庫が通販サイトから検索できるユニクロやジーユーの方がよほどオムニチャネル巧者だといえる。

通販サイトで品切れしていても、店舗には残っている場合もあり、その逆もある。

買いたい人は残っているどちらかを調べて買うことができる。ウェブ通販用と店舗用の在庫が連動できていない部分に瑕疵があるが、各百貨店の掛け声倒れのオムニチャネルよりははるかに利便性が高いといえる。

 

そんな中で、店頭とECとを上手く連動させているのがマルイである。

百貨店と分類される場合もあるが、マルイは純然たる百貨店ではない。もともとは月賦百貨店という形態で、今ではどちらかというとテナントのラインナップはファッションビルに近い。

また百貨店協会に入っていないこともあって、業界紙の古いスタッフはマルイを百貨店には入れない場合が多い。

 

丸井が「モノを売らない店」に大転換 急成長D2C取り込む大胆戦略

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00184/00001/

 

こうした店舗の大胆な構造改革にめどをつけた丸井グループが、次のステップとして推進しているのが、「デジタル・ネイティブ・ストア」戦略だ。店舗を持たずにネットで直接消費者に売る新興のD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)企業や、シェアリングブランドなど、ネットで急成長している企業をいち早くテナントとして誘致する。

とのことである。

で、どういう内容なのかというと、

デジタル・ネイティブ・ストアの特徴は、リアル店舗を「顧客とのエンゲージメントの場」と位置付けていること。体験型のショールームに特化してレジすらない店舗もあるほどで、必ずしも物販を目的としていない。あくまで販売の主体はネットにあり、店舗はそれを補完するリアルな接点、体験の場。まさに「売らない店舗」と言える。
 

しかし、「売らないから売れる」、何とも逆説的な現象が起きているという。

である。

 

そして

象徴的なのは、丸井グループでは新宿マルイ、渋谷モディ、池袋マルイにリアル店舗を構える、EC発のカスタムオーダーのスーツブランドFABRIC TOKYO(東京・渋谷)だ。同社の店舗には注文可能な生地見本が壁にディスプレイされているが、スーツの完成品の陳列はほとんどない。店舗スタッフは採寸やコンサルティングに特化しており、注文は店頭のタブレット端末などを使って客が自らEC上で行う仕組みだ。

スーツの在庫を持たないため、店舗スペースは丸井が展開する既存のメンズスーツ売り場の半分以下。しかし、「FABRIC TOKYOのリアル店舗経由の売り上げは、既存のスーツ売り場と同等。つまり、坪効率にして2倍の実績を叩きだしている」(丸井の店舗プロデュース部長、山口博行氏)という。

 

従来型の百貨店に限らず、多くの商業施設はその場でレジ打ちをしたがる。EC決済をすると何%か手数料が必要だからそれが嫌なのだろうか。また日銭が欲しいということもあるのかもしれない。

だが、少なくともクレジットカードを所有している人は多いから、このやり方は現代日本では成立する。

さらにいえば、マルイはクレジットカード会社でもあるので、このやり方は自社のクレジットカードの会員を募る方法としても一石二鳥の効果がある。

 

その要因は、成約率の高さにある。何の気なしに立ち寄る既存のスーツ売り場と違って、FABRIC TOKYOの店舗には多くの人がネットで事前予約してから来店する。スタッフを“独占”してカスタムの相談をできるから買い物のワクワク感が高まり、新たな生地の発見にもつながる。また、ネットでは分かりにくい生地の質感を実物で確認できる安心感も手伝って、店舗での体験が購入の最後の一押しになるのだ。

 

とあり、結局のところは、ウェブのみでは生地の風合いや触感は分からない。ウェブと実店舗は併用する必要がある。それこそが本来のオムニチャネルである。

通販業界でスクロールと並んで勝ち残ったベルーナが、80店舗近くも実店舗を出店しているのもこれと同じ考え方に基づいているといえる。ただし、在庫処分業者筋ではその出店施策でベルーナは蹉跌を犯しつつあり、在庫が増える傾向にあるともいう。またこれは後日考えてみたい。

 

記事にもこうまとめられている。

こうした直接話せる、直接触れられるというリアル店舗の価値は、デジタル・ネイティブの企業ほど見直し、重きを置く。

「すべてウェブで何でもできる」というのは、一昔前の化石だし、「ウェブは敵だ。実店舗こそ王道」というのはもっと化石である。

 

それにしてもマルイは創業当時から機を見るに敏で、変わり身の早さが素晴らしい。

当初は家具屋で、そこからファッション商業施設へと転身した。日本で最初にクレジットカードという名称を使ったのもマルイである。ネット通販への参入も2006年と早かった。また昨年春には証券会社を設立しており、既存のファッション商業施設がこれまでの歴史やプライドで自縄自縛に陥っていることとは対照的に、時代に応じてどんどんと業態を変えている。百貨店や大手総合スーパーマーケット(GMS)の中には今後、市場から脱落していく企業もあるだろうが、今の柔軟な精神を忘れなければ、マルイは最後まで生き残るのではないかと思う。

 

 

 

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