値引きのオフ率を表記するよりも値引き後の金額を表記する方が効果的
2019年7月1日 売り場探訪 0
早いもので今年もすでに半年が終わってしまった。
この年齢になると月日が過ぎるのは早い。この調子で行けば、あっという間に70歳くらいになるのだろうと思う。
6月28日から多くの商業施設が夏のバーゲンに入った。
しかし、例年以上に今年は、夏のバーゲン突入と言われても実感がない。
なぜなら、すでに6月頭から多くのテナントはセールを開始していたし、店内にセール品コーナーも設けていた。
また、ネット通販のサイトでは5月から連日、割引きクーポンだとか会員限定セールだとかタイムセールの案内が届いていた。
業者からすると、あれとこれとは違うと言いたいのだろうが、買う側からいえば、今年の春夏はずっとバーゲンをやっていたようにしか見えない。
また、例年の夏のバーゲンは盛り上がらない。冬のバーゲンは「正月」という一大イベントがあるから盛り上がりやすいが、夏のバーゲンにはそんな一大イベントはない。
いつもダラダラ始まってダラダラ終わるという感じである。
バーゲンといえば「〇〇%オフ」「〇〇%引き」という表示で集客するのが常套手段だが、これだけバーゲンでも服が売れない状況なら、「〇〇%オフ」という表記を見直してはどうかと常々考えている。
先日もこのブログでその記事をアップしたところ意外に好評で、先日も「もう一度リライトしてアップしてほしい」という要望があった。
これである。
時間のある人はもう一度読み直していただければ事足りてしまうのだが、クリックするのがめんどくさい人のためにもう一度まとめる。
特に低価格ゾーンでは「〇〇%オフ」よりも、値引き後の金額をズバリ「〇〇円」と書いた方が伝わりやすいのではないかとバッタ屋の店頭に立った経験から考えている。
なぜなら、バッタ屋に来るお客の3割~4割は%の計算ができないからだ。
「3990円の70%オフ」という商品があったとする。
当方だってこれを暗算ではできない。しかし、3990円は10円足すと4000円だから4000円の70%オフすれば、1200円ということは暗算でできる。
4000円より10円少ないのだから答えの1200円よりも何円か少なくなることは論理だてて考えればわかる。
となると、とりあえずは1200円弱ということがわかる。
しかし、この計算ができない人は業界人が想像するよりも多くいる。
1500円の70%オフから、さらにレジにて30%引き
というのはストライプインターナショナルのいつものやり方だが、これなんか何円になるのかわかっていない人が多い。
答えは315円である。
そして低価格ゾーンでの絶対的王者となったユニクロとジーユーはいくら値引いても「〇〇%オフ」という表示をしたことがなく、かならず値引いた後の金額を「〇〇円」と表示するだけである。
低価格ゾーンではユニクロとジーユーの実績から見て、この表記がベストなのだと考えられる。ちなみにH&Mも「〇〇%オフ」という表記はしていない。ZARAもしていない。
最近、アウトレット店舗のマネジメントに転身した知り合いがいて、そこそこの中価格帯のブランドを扱っている。それでもその価格帯でも「〇〇%オフ」よりは「〇〇円」と表記した方がお客の反応は良いそうである。
例えば
1万円から60%オフ
と書くよりも
1万円を3990円に
と書いた方が売れ行きが良いという。
業界人からすると「こんなに安くしている」とアピールしたいのだろうが、お客からすると「出せる金額はこれだけしかない」ということになるのだろう。
例えば、「10万円の60%オフ」とか言われても、オフ率はたしかにすごいが、4万円を支払うことはできない。お客からすればそういうことになるのではないか。
また業界側からすると「〇〇円」と値札にシールを貼りなおすのは大変な作業量になるからできないという反論もある。これはこれで納得だが、では例えばユニクロの「期間限定値引き」の手法を使えばどうだろうか。
ご存知のようにユニクロの期間限定値引きは値札にシールを貼っていない。
棚のPOPに「限定価格〇〇円」と表示してあるだけだ。
限定価格品は何型か決まっているから、スタッフ全員がその何型かを確実に覚えていればレジで値引きすることは可能である。もっともユニクロのPOSレジは読み取りデータを書き換えているから、わざわざスタッフが暗記する必要はないが、そういう機能のないレジを使っている店は、何型か決めておいてそれを確実に暗記すればできるのではないかと思う。
例えば、
AとBとCは3990円、Dは2990円
という具合に。
そうそう、あと半額の計算ができない人も一定数存在するから注意が必要だ。
当方だって1730円の半額はめんどくさいが、1620円の半額を計算できない人が2割~3割くらいはいる。繰り上がりとか繰り下がりがないのにどうしてできないのか不思議でならないが、半額表記も場合によっては伝わらないということは頭の片隅に置いておいた方が良いだろう。
今の大学生は%の計算ができないという批判記事を見ることがあるが、そんなことは昔から変わっておらず、昔の若者だった今のオバチャンでも%の計算はおろか、半額の計算ですらできない人が少なくない。
アパレル業界人はユニクロやジーユーの商品や価格には追随しようとするくせになぜか、表記を含めたシステムには追随しようとしない。しかし商品や価格なんていうのは表層的なことで付け焼刃的に追随したところで効果は知れているし、そもそもユニクロと同様の商品がそのブランドに求められているかどうかさえ怪しい。
そんな表層的なことに追随しても効果は限定的だから、そんなに追随が好きなら値引き表示にこそ追随すべきである。しかもH&M、ZARAともに同様で、世界のトップスリーのアパレルがやっているのだから追随しない理由はない。
今夏のバーゲンから表記法を考えてみてはどうか。
%の計算ができない人におすすめ~