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南充浩 オフィシャルブログ

アパレルの生産数量が減らない理由

2019年7月2日 未分類 0

2018年度の衣料品製造量はだいたい39億点だったと報道されている。

ピーク時は42億点くらいあったが生産調整が進んでだいたい30億点後半で推移するようになった。とはいえ、ここからなかなか生産数量は減らない。

売れ行きが伸びているわけではないのに減らない。

 

どうして減らないのか?と疑問を呈する人も多く、中には義憤?に駆られた業界人までが同じことを口走っているが、逆に従事していてどうしてその理由がわからないのかと不思議になる。

どうして生産数量が減らないのかというと、各アパレル企業・各ブランドが売り上げ目標を必ず前年比で5%~10%増で設定するからである。

その売り上げ目標に到達するように生産量も増やして比例させる。

そのまま比例させているわけではないだろうが、少なくとも前年よりも2~3%程度は多めに作っているだろう。

各社の2%増が積み上がった結果が39億点という数量になる。

 

 

売上高を増やすためには、機会損失を防ぐために在庫を増やせば良いというのは業界のセオリーである。しかし、機会損失を防いだところで、完売するわけがないから、多少の在庫は余る。これが今までバーゲンで捌けていたが、バーゲンで売れなくなり、不良在庫として蓄積されることになる。

不良在庫として蓄積されれば、アウトレットで売れないと、バッタ屋に安値で引き取ってもらうか、わざわざカネを払って産業廃棄物として廃棄するしかない。

まあ、あとは難民などに寄付するという手もある。

 

 

不良在庫比率は、業界平均では売上高の10%だと言われているそうである。

2000億円のアパレルなら不良在庫200億円くらいが業界平均だということになる。ある有名コンサルタント氏がご自身の動画で語っておられるが、先日、バーバリーの在庫廃棄問題でコメントを求められたそうである。

バーバリーが42億円分の在庫を廃棄したという問題だが、そのコンサルタント氏はてっきり「廃棄処分が少なくてバーバリーは優秀だ」というニュースなのかと思ったそうである。(笑)

なぜなら、バーバリーの売上高は4000億円だから業界平均の不良在庫は400億円くらいが相場だからだ。

 

業界平均なら400億円なのに42億円しかないから「優秀」ということになる。

別の報道では5年間で130億円分の在庫も廃棄したといわれるが、1年平均だと26億円分となり、これまた「優秀な数値」だといえる。

 

それはさておき。

 

アパレルの生産数量が減らない最大の理由は「前年比増の売り上げ計画」で、単純に生産数量を増やすと、それに連動して売れ残りも増えるから、不良在庫も増えるという仕組みになっている。

繊維の生産加工業者が「アパレルの生産数量が減らないのはおかしい」なんて口走ることがあるが、生産加工業者も広い意味ではその恩恵を被っている部分もあるのに一体何を言っているのだろうかと思う。

 

アパレル各社の資金繰りを圧迫するのが過剰在庫である。在庫は資産として計上されるから、在庫を抱えれば抱えるほど帳簿上は裕福な会社ということになる。

しかし、在庫は売れない限り現金ではないから、抱えれば抱えるほど手元にある現金は減っていく。帳簿上は裕福になり続けているにもかかわらず、手元の現金は減り続けるということになる。

だから不良在庫はなんとしてでも売って現金化しないといけないのである。

 

不良在庫は徹底的に安売りするのが正解である。捨てるには金がいるが、1円ででも投げ売れば金が入ってくる。しかしその一方でブランドイメージを下げるという危険性がある。

これまでバーバリーが「42億円も」在庫を捨てていたのはそういう事情がある。

 

在庫処分のメリットとデメリットを勘案して、処分が進まず、身動きが取れなくなっているアパレル企業は実はけっこう多い。

 

 

 

在庫処分が進まない理由はいくつかあるが、

1、ブランドイメージを下げたくない(前述)

2、在庫を持てば売上高が上がりやすい(これも前述)

があるが、もう一つ、もしかするとこれが最大の理由かなというものがある。

それは、

社長やスタッフが洋服を好きすぎて在庫と言えども手放せない

というものである。

 

実はそういうブランドやアパレル企業は少なくない。

商品への愛情を持つことは麗しいことだが、それにとらわれすぎていては企業経営はできない。株式の取り引きと同様に時には「損切り」をする必要に迫られる。

なぜなら、売れ残った洋服は何年抱えていても売れることはないからだ。株ならまだ、何年間か抱えていれば、元の値段に戻ってくることがある。

仕事をするにはある程度「好き」でないとできないが、「好きすぎる」のは時にビジネスの弊害となる。

しかし、10年前の服を在庫として抱えていたところで、定価で売れることは二度とない。それこそあと何十年も抱えていたらアンティークやビンテージとして価値が生まれるかもしれないが、その前に、あと何十年間も会社が存続しているかどうか疑問である。

そうでなくてもアパレルは倒産の多い業界である。あと何十年間もアンティークになるまで会社が存続している可能性は限りなく低い。

そんな理由からまだ2006年当時の在庫を抱えたままのアパレルもあるくらいだ。

 

というわけで生産数量を減らすには、アパレル各社が前年比増の売り上げ目標を作らないことである。またそういう計画を作ったとしても、在庫の積み増しで売上高を増やすという手法を取らないことである。

それでも万が一、不良在庫が蓄積されれば、「損切り」の要領で投げ売りして現金化すべきである。塩漬けにして寝かしておいても売れることはないからだ。

まあ、そんなわけでアパレル各社は自社が売りさばける「適量」を冷静に見つめなおす必要がある。そしてその「適量」を見極めるのはマーチャンダイザーの仕事であり、その部分が甘いマーチャンダイザーが業界には多いのではないかと思ったりする。

 

 

そんなバーバリーの商品をどうぞ~


 

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