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南充浩 オフィシャルブログ

しまむらのZOZOTOWN撤退について現代ビジネスに寄稿

2019年6月28日 ネット通販 0

昨日、現代ビジネスにしまむらのZOZOTOWN撤退について寄稿させてもらった。

 

「しまむらが1年弱で「ZOZO離脱」せざるを得なかった苦しい事情」

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65498

 

多くの業界関係者が指摘しておられるように、そもそも、しまむらのZOZOTOWN出店には疑問しかなかった。

なぜなら、基本的に「薄利」なしまむらが、20~35%程度の販売手数料を取られるインターネット通販モールに出店して、採算が合うのか疑問だからだ。

先ごろ発表されたしまむらの決算報告では粗利率は約31%ほどとなっている。ここから仮に30%の販売手数料を取られれば、利益はほとんど残らない。35%取られれば採算割れしてしまう。

 

ここでインターネット通販という販売方法についてもう一度考えてみたいと思う。

昨今の流行りだが、整理して考える必要があるアパレル業界人はかなり多いと感じる。

一口にインターネット通販といえども、自社直営サイトで販売することと、大手通販モールに出店するのではまるでノウハウは異なってしまう。

とくに異なるのは「集客」のノウハウである。

 

ある程度知名度が高いブランドや企業なら「集客」は比較的容易である。なぜならそのブランド名や企業名を検索してわざわざ流入してくれる消費者が多数存在するからだ。

そこでそのまま買ってもらえるかどうかは別問題だが、呼び込みだけは比較的やさしい。

 

一方、無名の企業やブランドなら「集客」すること自体が厳しい。なぜなら、誰にも知られていないブランド名や企業名では検索してもらえないからだ。

そうなると、こういう無名企業やブランドは、大手通販モールに入店する方が手っ取り早く集客できる。

 

ただし、来場者は大手通販モールに対して登録するので、その企業やブランドには顧客リストは貯まらない。これはたとえ100年間やったって顧客リストは貯まらない。

とすると、無名ブランドがやるべきことは、大手モールに出店するのと並行して自社サイトを立ち上げる必要があるということになる。そしてこちらで顧客リストを貯めなくてはならない。

そう考えると、ネット通販というのは意外にコストがかかるのである。

都心一等地への路面店出店に比べればまだコストは安いかもしれないが、それこそインターネット通販創成期のように、ものすごい低コストで高いリターンがあるような状況ではなくなっている。

 

今回のしまむらだが、しまむらがなぜ大手モールに出店する必要があったのか疑問でしかない。それは販売手数料のことだけではなく、顧客リストという観点からもである。

しまむらの公式Lineアカウントには現在、1400万人強のフォロワーがいる。

仮に10%が顧客だったとしても140万人である。1%でも14万人だ。

そこに対して自社で告知すれば、それなりの集客が可能であり、今更、大手通販モールに頼る必要がない。

 

知名度の高い企業やブランドが集客するためには、面白いコンテンツが必要になる。コンテンツの内容は各社それぞれである。面白い読み物、綺麗な画像、人気のインフルエンサー、などなどだ。

すでに1400万人もの顧客リストがあるしまむらがやるべきことはこのコンテンツ製作である。

 

アパレル業界には「ユニクロ嫌い・しまむら好き」な人が結構いるように見える。しかし、ビジネスの仕組み作りや仕掛けづくりで言えば、しまむらは今のところ、ユニクロには遠く及んでいない。

個人的にはちぐはぐな政策に終始しているように見える。

 

ネット通販に対する姿勢も同様だ。しまむらは効果不明のZOZOTOWN出店をやっているが、ユニクロはすでに単独でのネット通販売上高が850億円強もある。

また、しまむらはZOZOTOWNを撤退して、自社で「しまコレ」を開始したが、これは宅配通販ではなく、ネットを介したお取り寄せサービスで、商品を店頭に取りに行かねばならない。そして最も不便な点は、アプリやサイト内では決済できずに取りに行った際に店頭で代金を支払う点である。

この「しまコレ」をどれほどの人が利用するのか、疑問でしかない。

ユニクロのネット通販も店舗取り寄せができる。買い上げ総額5000円未満は送料が発生するから、1990円の物を一つ買ったときなんかは送料を節約するために店舗受け取りにすることができる。店舗受け取りなら送料は無料になる。

当方の生活スタイルでいうと、ユニクロのネット通販を店舗受け取りにすることがある。店舗が都心やターミナルにもあるため、仕事帰りに受け取りやすい。

しかし、しまむらはどうだろう。店舗が郊外や都心でも外れた場所にしかない。店舗受け取りするにはちょっと面倒な立地ばかりである。

となると、めんどくさいので当方ならまず利用しない。

また決済がアプリ内でできないというところも面倒で、店舗に出向いて受け取ってからレジに並ばないといけない。

 

もちろん、しまむら側にはさまざまな事情はあるのだろうと思うが、さまざまな政策もそうだが、ネット通販にしてもちょっとちぐはぐだという印象しかない。

先ごろ発表された2020年2月期第1四半期決算も、売上高1336億4800万円(前年同期比2.9%減)、営業利益55億9200万円(22.1%減)、経常利益57億6700万円(21.9%減)、当期利益37億9300万円(20.7%減)という厳しいものだった。

ネット通販に関してもそうだが、しまむらは2000店舗・という売上高5400億円という規模が、これまでの仕組みとは合わなくなってきているのではないかと感じられる。

商品の調達も莫大な量が必要となっており、これまでの仕入れ路線では賄いきれなくなってきている。そのため、あまり指摘されないが、しまむらもかなりSPA比率を高めているものの、そこはまだ中途半端な状態にあるといえる。

しまむらがさらに成長するためにはガラっとシステムを変える必要があり、ここまでの規模になるとSPA化せざるを得ないのではないか。ほとんどをSPA化し、たまに仕入れ品を混ぜるくらいの割合が理想ではないだろうか。

ちょうど、SPA化したアダストリアがたまに他社ブランドからの仕入れ品を混ぜ込むようなイメージで。

 

しまむらの苦戦はけっこうな期間続くのではないかと見ているがどうだろうか。

 

 

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