過度な配慮は必要ないのでは?
2013年2月13日 未分類 0
先日、有名なコンサルタントの方が、2月1日付けの繊研新聞に掲載された、某社決算の「今期、大幅増収増益へ」という記事の見出しの付け方がおかしいと指摘されていた。
内容を意訳しつつまとめるとこうだ。
「13年1月期は売上高・利益とも目標値を大きく下回っているし、前期実績よりも減益している。増収増益を目指すのは14年1月期なのだから、見出しだけだと13年1月期決算の結果に見えてしまうのではないか」というものである。
仰っていることは正しい。
全面的に賛同する。
で、まあ、どの記事かと思ってバックナンバーを探してみるとクロスカンパニーの記事だった。
蛇足ながら、記事から同社の単体の13年1月期決算を抜粋してみる。
13年1月期決算は
売上高が650億円
営業利益・経常利益ともに60億円台となる見通し
という実績である。
これに対して、当初の目標は
売上高720億円
営業利益100億円台
だった。
念のために12年1月期も抜粋すると、
売上高が559億8900万円
営業利益が79億7100万円
だった。
今の時期なら、通常の決算記事は13年1月期をメインに据えて書かれるはずだ。
となると、
13年1月期決算は、12年1月期に比べて約16%増収だが、減益となる見通し。当初目標値に対しては売上高・営業利益ともこれを下回った。14年1月期は大幅増収増益を目指す。
とするのがオーソドックスな書き方である。
コンサルタント氏が指摘されるのもごもっともである。
個人的には、この記事の見出しは新聞社がクロスカンパニーに対して手心を加えたと感じる。
このご時世だから目標未達で、前年より減益だとしても増収は大したものであるから、ズバっと
「増収減益に終わる 今期増収増益を目指す」という見出しにしたほうが、事実が伝わりやすかっただろうと思う。この見出しでもクロスカンパニーという企業の価値は何ら毀損することはない。
業界紙での勤務経験からいうと、こういう「配慮」は各社であった。
もう繊維業界紙は各社というほど社数は残っていないが、そうなる以前からあった。
10年以上前だとネット媒体は存在していないから、紙媒体で報じられる内容がそのまま流通していた。
「見出しの付け方がおかしいんじゃね?」と疑問を感じてもそれは個々が感じているだけだった。ところが今はネット媒体がある。インターネットのファッション業界ニュースは何紙も競合しているし、各識者がブログを書いておられる。
紙面で手心を加えても、先のコンサルタント氏のように「おかしいんじゃね?」とブログで指摘される方が少なからずおられる。
そして、残念なことだが、紙面よりもブログも含めたネット媒体の方が波及力がある。
だから、そういう手心を加えてもあまり意味はないと感じる。
さて、記事を丹念に読むと、同社の既存店売上高は減少していることがわかる。
「前期は減少した既存店売り上げ」という箇所があるからだ。
もし、悪意を持って見出しを付けるなら
「目標値を下回る実績 増収するも減益に 既存店売上高も前年割れ」となる。
ことさら悪意を持って見出しを付ける必要はないが、これとて事実である。
「今期、大幅増収増益へ」という見出しと、「目標値を下回る実績 増収するも減益に 既存店売上高も前年割れ」という見出しでは、同じ企業とは思えないほど目にしたときの印象が違う。
「今期、大幅増収増益へ」という見出しは、印象操作だと受け取られても不思議ではない。
広告営業やその他営業活動にある程度かかわるので仕方がないのかもしれないが、報道機関が企業側に度を越えてまで配慮する必要はないと考えるのだが。