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南充浩 オフィシャルブログ

「売上高を増やしたければ在庫を増やせ」は現在では通用しない

2019年6月5日 企業研究 0

100万円の売上高が欲しければ100万円分の在庫が必要。
これは商売の基本である。用意した在庫量以上の売上高は見込めない。
じゃあ、売上高を200万円にしたければどうすればよいかというと200万円分の在庫を用意しなくてはならない。
300万円なら300万円分、500万円なら500万円分、という具合に売り上げ目標を増やすごとに基本的には用意する在庫も増やさなくてはならない。
だが、どこかの時点で売上高の伸びは頭打ちになる。
 
自店の面積には限界があるから、青天井で陳列量を増やすことはできない。また客数にも限界があるから、売れてゆく個数の伸びにも限界がある。そしてその臨界点を越えると、過剰な売れ残り在庫を抱えることになる。そしてこれは個店だけではなくチェーン店についても同様である。
 
その昔、70年代の高度経済成長、80年代のバブル期は、経済成長率が高かったこととそれまでの物不足の反動で、「並べれば売れた」時代だったといえる。そのため、この辺りで成長したブランドやショップは基本的に「並べれば並べるほど売れる」という体験をしており、その時の担当者だった人間が今は企業の幹部となっている。
このため、この幹部連中はこの時の成功体験が忘れられずにいる。いや、もしかしたら、その成功体験は捨て去らねばならないと頭ではわかっているものの、三つ子の魂百までというやつで、ついついとそのやり方をやってしまうのが正確なところなのかもしれない。
 
前回、ライトオンを例にとって、「各型の投入在庫量が多すぎるのではないか、もっと絞って小刻みに投入する商品を変えるべき」と書いたところ、某有名コンサルタントから、「禿しく激しく同意します」というコメントをいただいた。
 

売上高を増やしたければ在庫を積め

 
というのは、基本ではあるが、現在は積みすぎると爆死するのである。そこを70年代、80年代に若い時代を過ごした幹部連中はいまだに理解していない。
前回、ライトオンを例に出したが、たまたま個人的によく利用する店だったのと、決算の大幅下方修正を見たから、というだけであり、似たような例はこの業界には掃いて捨てるほどある。
 
多くの企業やブランドが、目標売上高から逆算して在庫量を決め、それに沿って仕入れ・製造する。通常は前年比〇%増の売上高目標が立てられるから、必然的に用意する商品量は昨年よりも増える。
しかし、昨年の売れ残りもまだあるから、前年よりも増加した分量と売れ残りで、抱える在庫量は過剰となる。
経営者も謎のメンツとやらがあるので、過剰分の在庫を処分して、利益を減らすわけにはいかないから、2年か3年くらいは過剰在庫を溜め続け、増収増益決算または前年並みの決算を発表する。
そのうちに自社のキャパシティーをオーバーして、溜まりに溜まった過剰在庫を廃棄ないし投げ売りするほかない。このときの減損処理で大幅減益または赤字に陥る。
これが旧型のアパレル企業のサイクルであり、ライトオンもこれに正しく則っているといえる。
小売りは手掛けていなかったが、解散にいたった帝人ワオもメーカーとしては基本的に同じサイクルを繰り返していた。
 
まだ、この世にあまり出回っていない商品の場合はこれには当てはまらない。何年か前までのiPhoneなんかはその例で、当方には理解不能だが、発売日に並んでまで手に入れたい人が大勢いた。
しかし、洋服は一部の例外を除いてそうではない。アムラーのバーバリーブルーレーベルくらいまではそういう価値がまだあったが、現在はよほどの転売ヤー目的の一部ブランドを除けばそこまでの価値を消費者は見出していない。
ここを嘆いてみてもはっきり言って無意味である。今更時は巻き戻せない。
悔しければ自社・自ブランドでそういう例外的に見られる商品を開発するほかない。別段消費者の感性は退化しているわけではなく、そうとしか受け取れない自分の感性が退化しているに過ぎない。
 

1型あたりの在庫量を減らしたらどうやって売上高を維持するんだよ?

 
という質問が来そうだが、これはZARAのシステムを利用すればいい。
例えばAという商品は、従来のやり方であれば100枚投入したとする。これを30枚に減らし、販売設定期間終了前後に新たにBという商品を30枚投入する。そしてこれも販売設定期間終了前後にCという新商品を40枚投入する。
このやり方である。
当方は専門家ではないので、基本的な考え方を平易に書いているにすぎないが、もっと詳細に数字などを入れてシミュレートしたければマサ佐藤氏か河合拓さんにでも依頼すればいい。
 
ライトオンの場合は、自社製造品と仕入れ品が並立しているが、仕入れ品も同じ考え方でやればいい。ただ、仕入れ品は仕入れるタイミングがあって、自社に都合のいいときにすぐに調達できるわけではないから、事前に厳しく数量を設定して、それに見合った量をシーズン前に仕入れ、タイミングに応じて小分けに店頭投入するようにすれば、理論上は可能になる。
とはいえ、売れ残り品は必ず出る。恐らく従来よりは売れ残る枚数は減るだろうが。
売れ残った商品は、潔く値下げして投げ売ればいい。それこそZARAのように。
値下げすると何でもかんでも
 

ブランド価値の毀損ガー

 
という人が業界には多いが、このやり方だと、少量の売れ残り値下げ品はブランド価値を毀損するよりも客寄せになる可能性が高い。
この少量の売れ残り品の投げ売りは、株式の売買でいうところの「損切」である。
損切の下手なトレーダーは絶対に株で儲けられない。買った株が全部上がるとは限らない。絶対に下がる銘柄もある。それを上向くまで抱え続けるというやり方もあるが、適当なところで損切して次の取り引きに移るというやり方もあり、デイトレードや短期トレードではそのやり方の方が望ましい。
ある一定以上に値下がりした場合、自動的に機械的に損切するのが株で勝つコツともいえる。
余談だが、「美人OLのデイトレードで100億稼ぐ」 というブログがある。
https://kabuol.blog.fc2.com/
 
本当に美人かどうかは顔を見たことがないのでわからない。
この人は初期のころはもう少し身の周りのことも書いていたが、今では毎日の株取引の勝ち負けしか書いていない。だいたい1週間か1ヶ月単位で見ると、必ずプラスで終わっている。
この人のブログを見ていると、毎月・毎週儲けているが、必ず自動的に損切をしている。今日の午前中もすでにシンクレイヤという銘柄を買って値下がりしたので損切して15900円の損失を報告している。
 
横道に逸れ続けたが、要するに少量出た在庫は投げ売りしてでも損切してしまえということである。
これを実現できるように社内体制、システム構築を行うべきで、新ブランド〇〇導入とか、人気タレント〇〇と契約とか、インフルエンサーの〇〇を起用、なんてことは小手先の付け焼刃に過ぎない。
まあ、そんなわけで、一度冷静に「積み上げ方式の害悪」について考えてみることをお勧めする。
 
 
 
たまたま検索したら出てきたヒュンメルの在庫処分セールの上下セットをどうぞ~

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