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南充浩 オフィシャルブログ

ライトオンは1型あたりの投入量を減らせ ~「適量」の考え方が必要~

2019年6月4日 企業研究 0

少し前にライトオンのことを書いたが、
1、取り扱いブランド数が多すぎる
2、取り扱い商品の品番数が多すぎる
3、PBの商品クオリティにバラつきが大きい
と書いたが、文章が長くなってきたので、この3つにとどめた。
 
今回はその続きを書こうと思う。
ライトオンの店頭を見ていると、商品1型あたりの投入数量が多すぎると感じることが多い。
その結果、大量に売れ残って期中や期末に大幅値引きをして投げ売りすることになる。
例えば、夏用の半袖Tシャツである。
上に挙げた3つの点に加えて、1型あたりの投入数量が多すぎるように見える。
 

ユニクロだって多いじゃないか

 
という反論が聞こえてきそうだが、ユニクロの販売力とライトオンの販売力を比べてみるといい。
今春夏はほとんどユニクロでしか買っていないが、驚くことに都心店は平日昼間に訪れてもレジに行列ができている。そんな服屋はちょっと存在しない。
そこまでの販売力がないなら、ライトオンは1型あたりの投入枚数をもっと減らすべきで、「適量」の考え方ができていないのではないかと思う。
もちろん、たくさん作れば作るほど、仕入れれば仕入れるほど、1枚当たりのコストは安くなる。だからたくさん作ったり、たくさん仕入れたいという経営者の気持ちはわからないではない。
だが、ライトオンとてすでに国内に約500店舗ある。
1店舗あたりに1型20枚ずつ投入するだけで1万枚の商品を手配する必要があることになる。1型で1万枚といえば、今の国内アパレル業界でいえばけっこうな量である。
よく足を運ぶ「あべのキューズモール店」「ヨドバシカメラ梅田店」を見ていると、Tシャツやポロシャツ、セーターなどの中軽衣料はこの20枚を遥かに上回る数量が店頭に陳列されているように見える。
この2店は都心の大型店なので売上高がそれなりに見込めるからこそ大量投入しているとも考えられるが、その割には売れない品番は徹底的に売れずに、期中・期末に破格値で投げ売りされている。
その状況を見ても、この2店舗にしても投入数量が多すぎると考えられる。
1型あたりの投入数量を減らせば、売り切れる型数が増えるから今まで通りのサイクルでは機会損失が大幅に発生する。それを補うためには、ZARA方式で期中企画を増やして、小回りを利かせ、売り切れ御免と同時に新商品投入というスタイルを確立する必要がある。
 
2000年ぐらいまでの時代なら、手持ちの洋服が少ないことから、洋服への渇望感もあったが、今では多くの人がたくさんの洋服をすでに持っている。バブル期然としたジーンズやTシャツを山のように積み上げて売り減らすスタイルが通用するはずもない。しかし、このスタイルを変えようとしないのがライトオンに限らず、老舗のジーンズカジュアルチェーン店であり、残り少なくなったジーンズナショナルブランドだといえる。
今こそ、ライトオンに限らずジーンズカジュアルチェーン店やジーンズメーカーは「適量」ということに考えを及ぼすべきである。
 
適量をおでん屋で考える(笑)
http://msmd.jp/archives/2174

 ”あるおでん屋の女将は、本日の売上目標を過去の傾向と損益から10万円に設定した。過去の傾向から売れ筋を読み、以下のような売上計画を立てた。”
・大根 100円 売上構成40%
・たまご 50円 売上構成15%
・はんぺん 70円 売上構成15%
・昆布 70円 売上構成10%
・ちくわ 80円 売上構成8%
・牛すじ 100円 売上構成7%
・ちくわぶ 70円 売上構成5%
すると。もうこのことで1日の食材の仕入量が決まります。
・大根 400個
・たまご 300個
・はんぺん 214個
・昆布 143個
・ちくわ 100個
・牛すじ 70個
・ちくわぶ 71個
上記のように1日の仕入数量が簡単に導きだせます。このことはある意味、アパレル・ファッション小売業では、MDの予算設計にあたる部分になるでしょう。

 
ということになる。ちなみに関西では「ちくわぶ」なる食材はほとんど売られていないので馴染みがない。食ったこともない。
昔、子供のころ「俺は鉄兵」という、ちばてつやさんの漫画を読んでいたら「ちくわぶ」なる謎の言葉が出てきて「なんだそりゃ?」と思ったが読み飛ばしたことがある。
ちくわぶが関西にはないおでんの具在だと知ったのは、もう二十歳をすぎたころだった。
 
ちくわぶについては置いておいて。
 
おでんと洋服は違うとはいえ、基本的な考え方はこれである。もちろん、おでんの方が賞味期限が短いので適量をシビアに考える必要があるが、洋服とて賞味期限は店頭ではあるから、1ヶ月とか1ヶ月半とかで想定してその期間内に売り切れる数量を求めるべきである。また、店頭だと自店の客数というのはある程度決まっているのだから、その客数で売り切れる数量の投入を求めるべきである。
 
外野から店頭を見ている限りにおいては、ライトオンは本部も店頭もこの考え方ができていないのではないかと思う。
商品の仕入れや企画権限は本部にしかないはずだから、本部が「適量」の考え方が一番できていないのではないかと見ているがどうだろうか。
 
欠品を極度に恐れるユニクロもそのきらいがあったが、最近では「売り切れ御免」スタイルを取り入れるようになってきて、デザイナーズコラボを代表として追加生産しない品番が増えている。
ユニクロにしろ、ライトオンにしろ、大規模な会社の仕組みを一気に変えることは難しいが、徐々にででも構わないから「適量」「売り切れ御免」「小刻みな新規投入」に切り替えるべきだろう。
売り方や補充のスタイルを変えずして、「人気ブランドの取り扱い開始」なんていう小手先の手法では到底業績を回復させることはできない。
人気ブランドの取り扱いなんていう小手先の手法で売上高が取れたのは2005年までの話であり、経営者の考え方をアップデートすることが求められている。
 
 
紀文のおでん1人前12パック入りをどうぞ~

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