解体に向かう「ジーンズ村」
2012年12月21日 未分類 0
先週金曜日に「児島の洗い加工場が破産申請する」と電話をもらったことはブログに書いた。
その洗い加工場は吉田染工で、正式に発表となったようだ。
吉田染工(株)/自己破産へ
http://n-seikei.jp/2012/12/post-13115.html
14日に事業停止し、破産申請の準備に入ったという。
負債総額は4億円だそうだ。
電話をくれた知人によると、受注が途切れることはなかったものの資金ショートに陥った結果だとのこと。
ご存知の方も多いが、この吉田染工はビッグジョンの洗い加工を主力に担当しており、大手洗い加工場の一つだった。
ジーンズの製造工程には洗い加工という工程が必ずある。
通常のカットソーやシャツ類には洗い加工という工程はない。最近でこそ、洗い加工を施したシャツやカットソーもあるが、必須ではない。洗い加工が必須であるアイテムはジーンズだけである。
かつてジーンズナショナルブランドが隆盛を極めていたころ、ブランドごとに主力となった洗い加工場があった。
エドウインは豊和、リーバイ・ストラウス・ジャパンは西江デニム、ボブソンは晃立、ビッグジョンは吉田染工、ラングラーは共和と言った具合だ。
このうち共和は数年前に廃業し、吉田染工は今月破産申請した。
今回の吉田染工の破綻原因について、先の記事では「海外生産の増加とジーンズ不振」を挙げている。
しかし、産地で尋ねるとそれだけではないという人もいる。
ジーンズ不振と言われながらも、ジーンズ関連企業は毎年続々と生まれている。
大手ブランドからの独立組、大手製造業からの独立組が小規模企業を立ち上げるためだ。
洗い加工場も例外ではない。独立組が立ち上げた新しい洗い加工場が生まれている。
ジーンズの国内生産総量自体はあまり増えていないにも拘わらず、製造先・加工先が増えるということは、一社あたりの売上高が減るということになる。
そういうことが製造業各社を苦しめているという。
なるほど。
そういえば、今月初めに6社が加盟する「岡山デニム協同組合」が発足したというニュースがあった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121204-00000062-minkei-l33
参加企業は「Klax-on(クラクション」(中庄)、「馬野」(岡山市北区)、「正藍屋」(児島上の町)、「バンザイ帝國」(児島味野)、「ミズタニ」(井原市)、「ハイロック」(児島田の口)の6社だが、ジーンズ業界に詳しい方以外はあまりなじみのない企業名ではないだろうか。
それぞれがオリジナルジーンズブランドを持っているが、どれも小規模である。
製造業・加工業だけではなく、ジーンズブランドもこのような小規模な独立組・新興組が次々と生まれている。
かつてジーンズというアイテムはナショナルブランドか専業メーカーにしか作れないアイテムだった。
かつてと言ってもほんの10年ほど前のことである。
しかし、ナショナルブランドや専業メーカーのOBや早期退職組がOEM/ODM事務所を多数立ち上げたため、ジーンズ製造のノウハウが業界に広まった。今ではそういう先に依頼すればどんなブランドでも及第点くらいのジーンズは製造できるようになった。
現にタケオキクチにもバーバリーブラックレーベルにもまともなジーンズが並んでいる。
それと同じことが製造業・加工業でも起きている。
かつての大手加工業が消えるということはその象徴的な出来事といえるのではないだろうか。