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南充浩 オフィシャルブログ

企業のメディア化が一段と進む

2012年12月6日 未分類 0

 昨日、伊勢丹が合弁でファッションウェブメディア「ファッションヘッドライン」を立ち上げた。
http://www.fashion-headline.com/

これには驚いた人も多いようで、筆者も驚いた。
通常のメディアが立ち上がる場合、事前に大々的に告知されるのが通例だが、今回は12月に入るまで告知がなされていなかった。

今回のメディア立ち上げには賛否両論あると思う。
実際に昨日も某アパレルの社長からも「どういう狙いなんですかね~?」と質問された。
狙いがちょっとよくわからないという感想を持った方も多いようだ。

実際に立ちあがったページを見ると、やや伊勢丹の情報が多いものの、中立的立場を貫いていると評価できる。
企業がメディアを立ち上げたというと、自社の良い情報ばかりを掲載するのではないか?と勘繰ってしまうのだが、今のところその傾向はあまりなさそうだ。

逆に自社に都合の良い情報だけを掲載するのであれば自社HPで十分なわけであり、何も別個にメディアサイトを立ち上げる必要はない。

けれども、自社に都合の良い情報のみを掲載する自社HPよりも中立的立場のメディアを通じて情報を発信する方が、受け手側は真剣に読んでくれる。
もしも、そこまで考えてメディアを立ち上げたなら、なかなかの深謀遠慮である。

通常の自社HPでいくら自社の良いニュースを掲載しても「はいはい。自社サイト自社サイト」で終わらされてしまう。自社の宣伝しかしないメルマガやSNSを本気で読む人は少ないだろう。

三越伊勢丹HDも民間企業であるから、業績は良くなったり悪くなったりするだろう。
悪くなった際にズバっと「減収減益」と報じられるなら大したものである。

今回感じたことは「自社メディア化もここまで進んだか」ということである。
例えば、自社HPを持つことは当たり前の時代だし、メルマガもSNSもある。
百貨店で配布される紙のカタログも以前なら商品の写真と値段くらいしか掲載されていなかったが、今では雑誌風の読み物になっている。
ウェブに限らず、カタログや冊子もメディア化が進んでいたのが現状である。
そこに来ての中立的ウェブメディアの立ち上げである。

巷には媒体編集経験者やライター、カメラマン、デザイナーなどが溢れている。
そういう人を組織して費用さえ出すなら、今の時代いくらでも、紙ででもウェブででも自社メディアを立ち上げることは可能だ。

このファッションヘッドラインが立ち上がって、一番脅威なのは繊維ファッション業界媒体ではないだろうか。
業界媒体の多くはウェブ移行が遅れている。本来取材先である伊勢丹が自社ウェブメディアを持ってしまったということは、伊勢丹の方が発信力を持ってしまうということになる。
これはよほど新しい取り組みを見せないと「業界媒体不要論」が一段と増すのではないかと危惧する。

ファッションヘッドラインが上手くいくかどうか先のことはわからない。
伊勢丹が過剰に自社に有利な情報を流したがらなければ、ある程度上手くいくのではないかと考えている。
しかし、運営側は「金も出すが口も出したがる」ものである。そこをどれだけ自制できるかがこのメディアの成否のカギなのではないだろうか。

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