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南充浩 オフィシャルブログ

80年代・90年代のデザイナーズブランド商品に感じた新鮮さ

2019年1月30日 展示会レポート 1

昨年11月下旬だから少し前のことになるが、80年代~90年代の欧州デザイナーズブランドのアーカイブ(過去商品)を集めてレンタルするというサービス「イデア・ハブ・プロジェクト」のお披露目展示会に同行した。
その様子はファッションスナップドットコムに掲載されたので、お読みになった方も多いのではないかと思う。
「80〜90年代ヴィンテージアイテムのレンタルサービス開始、貴重なヴィヴィアンなど約500アイテム」
https://www.fashionsnap.com/article/2018-11-20/vintagewear-rental/
レンタルサービス自体はもう昨年12月から開始されている。
 
レディースはなく、メンズのみに限られるのだが、蒐集した総数は500点ほどあるらしいが、会場にはそのうちの約200点が展示された。
イデア・ハブ・プロジェクトのサイトはこちらになる。↓
http://www.idea-hub-project.com/
 
当初はアパレル企業やファッション専門学校へのレンタルだけだったが、2019年からは個人にもレンタル対応している。
ジャンニ・ヴェルサーチやジャンマルコ・ベンチューリ、ジョルジオ・アルマーニ、エンリコ・コベリなどのブランドのメンズ商品が集められている。
会場で実物を拝見したが、今の洋服と明らかに違う雰囲気があった。

 
 
現在の欧米デザイナーズブランドの現物を見る機会は、当方にとってはかなり少ないのだが、それでも店頭やショーウィンドウで見ている限りにおいては、どこか簡略化されているように見える。
蒐集したブランドの性格もあるのだろうが、80年代・90年代のこの手のブランドは、現在では使われなくなったような切り替えや多色使い、ディテールがあった。
また素材にしても、分厚くて反発力のある太畝のコーデュロイ(たぶん8ウェルか6ウェルくらい)や分厚いレザーなど、今ではほとんど見ることのない品質の素材がふんだんに使われていた。

太畝コーデュロイ


 
 
 
 
以前、ある製造系の業者が「2005年以降、国内ブランドの使用している素材の品質は低下する一方だ」と指摘したことがあるが、まさにその通りで、この手のハイブランド系の現在の使用素材はどうだかわからないが、百貨店向けアパレルブランドやファッションビル向けアパレルブランドの使用している素材品質は2005年以前と比べると確実に低下していると感じる。
以前、深地雅也さんのお買い物に付き合って、アクネ・ステュディオズに入店して、商品の素材を触ってみたが、アクネクラスの価格になると相当に良い素材を使っていた。恐らく秋冬物のウールコートやニットだとそれが如実にわかるのではないかと思う。
昔、当方が就職したばかりのころ、93年とか94年とか当時の百貨店向けブランドやファッションビルに入店していたDCブランドの使っている素材は、明らかにダイエーやジャスコに並んでいる洋服とは異なっていた。ド素人同然の若かりし頃の当方が触ってみても上質感が感じられた。
しかし、業者が指摘した2005年以降、もっと言えば、リーマンショックの2008年以降のその手のブランドが使用する素材の品質は完全に低下してしまった。
特にひどかったのが2011年~2014年前後ではないかと個人的には思っている。
衣料品消費不振に加えて、このころから原材料の高騰が顕著になってきたからだ。売れてないから利益率を確保するために素材品質を落としてコストダウンする。さらに原材料費が高騰しているから、価格を抑えるために使用する素材品質を落とす。というスパイラルに陥っていた。
 
逆に2015年以降はこの時期よりも素材の品質はマシになっていると思える。原材料費の高騰に一服感があったり、価格が2011年以前に戻ったりしたためである。
2011年からの3年間くらいは、ユニクロでさえ綿100%商品(トレーナーやスエットパーカなど)がほとんどなくなり、ウール100%セーターも姿を消していた。
しかし、2018年にはウールとダウン(羽毛)価格が高騰したと報道されており、2019年以降、また各ブランドで使用素材の品質が低下する可能性がある。
で、何が言いたいかというと、2005年以降の国内ブランドの洋服しか触ったことのない人(主に若い人)は、このレンタルサービスに限らず、一度は80年代・90年代の欧米ハイブランドの素材を触ってみる方が良いのではないかと思う。
今のご時世にその手の素材が求められているかどうかはわからないが「知らないから使わない」と「知っているけど使わない」というのとでは大きな差ができる。
それに今の洋服では見られない配色や技法などは知っておいて損になることはない。
今回、直接見ることができて、改めて若い頃に店頭で見た百貨店向けブランドやDCブランドの使用していた素材を思い出した。
ちょうど、ビッグシルエットが復活しているから、このころの洋服は若い人が見れば「トレンドど真ん中」に見えるだろう。一方、オッサンたる当方は「学生の頃、こんな服を着てセカンドポーチを小脇に抱えていたバブル成金のオッサンが多数いたなあ」と懐かしく思い出す。当方にはその手のオッサンはカステルバジャックやフィッチェウォーモの毒々しい柄のセーターを着ているイメージが強い。
ファッションスナップドットコムに掲載されたこともあって、年を明けてからも様々なオファーがあって順調な滑り出しを見せているらしい。
某大手商社が共同して展示商談会を開催して、大手セレクトショップにサンプル資料として提示するなんていう企ても進んでいるとも聞く。
この10年間、ユニクロと無印良品とライトオンとジーンズメイトとアダストリアとジーユーでしか服を買っていない(しかもすべてセール品)当方にとっては、久しぶりの眼福だった。
 
久しぶりにNOTEの有料記事を更新しました~
「アパレルの簡単な潰し方」
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n479cc88c67bf
 
【告知】2月7日に東京で有料のトークイベントを開催します
https://eventon.jp/15877/
 
 
ジャンニ・ヴェルサーチのユーズドの金ぴか時計をどうぞ

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/08/25(木) 9:41 AM

    サブスク形態のカジュアル服レンタルと同じで
    私はぜったいに失敗すると思います

    調べてみたら、既にHPすら無くなってるwww

    しかし、同時に思うのは、やっぱりこの業界は
    心底の服好きが多いんだなと

    このビジネスを考えた人も簡単に採算ベースに
    乗るとは考えていなかった筈です

    そしてこの記事を書いた時点で、
    南サンも恐らく上手くいくとは思ってなかったのでは?

    けれども、80年代までのハイブランドの服は
    本当の意味で「作品」「1点もの」ですよねぇ・・・

    ・よくこんな服地を使ったな
    ・よくこんな服地を縫ったな
    ・よくこういう服が売れたな

    と思う事しきりです

    別世界でいいから、こういう服が安い服と一緒に
    同時代に存在していないと、安い服も進化しません

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