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南充浩 オフィシャルブログ

「定番だから何年残していても大丈夫」という「幻想」の危険性

2019年1月9日 企業研究 0

「定番」を扱うアパレルブランド、ショップは多いが、その取扱い方(処理の仕方も含めて)が最も上手いと思うのがユニクロと無印良品である。
正月にオッサン対談した某ブランドの元部長も同様の意見だった。
多くのアパレルやショップ、とくにジーンズカジュアルチェーン店やジーンズメーカーに多いのが「定番だから何年も積んでおいても大丈夫」という考え方だ。
往年の大手ジーンズメーカーは自社縫製工場を抱えていたから、ほぼこの考え方で物作りを行ってきた。
定番となるジーンズ(501とか503とか505とか)をノンウォッシュで大量に生産して積んでおけば、いずれ減る。目先を変えたいときは、洗い加工で濃淡や色合いを変えれば新商品として売り出せる
という手法で、当然、それらの卸先になるジーンズカジュアルチェーン店の多くも同様の考え方をするようになる。
この手法は一時期は奏功した。その結果が、ジーンズアパレルの成長とジーンズカジュアルチェーン店の成長だった。
しかし、バブル崩壊と同時に、洋服が消費者に行き渡った結果、そういう手法が弱点に転じて今に至るといえる。
 
 
ユニクロも品ぞろえ的には「定番ジーンズ」を持っている。ジーンズに限らずヒートテック、ウルトラライトダウンなど「定番」がいくつかある。
店頭を見ていると、年中ヒートテックとウルトラライトダウンが置いてあり、往年の売り方とどう違うのかということになるが、管理がもっと細かい。
ユニクロの商品は定番に見えても「春」「夏」「秋」「冬」の4つのシーズンに分けて管理されている。たしか、春が1、夏が2、秋が3、冬が4という商品番号だったと思う。これに年度(2018とか2019とか)番号を合わせて管理する。
「2018年春品番」「2018年冬品番」などというようにである。その結果、「定番品」といえども一定期間が過ぎれば値下げされて売り切れるまで店頭に並べられる。
多くの「定番幻想」に取りつかれているアパレルメーカーやショップはこの考え方を取り入れるべきではないのかというのが、当方と前部長の共通した認識だった。
 
で、ユニクロが巧みだと思うのは、新しい季節がくれば、堂々とまた「定番」を投入するところである。無印良品もその部分は同様である。一旦値下げセールで売り切れた定番ジーンズがまた新規投入される。
もしくはユニクロの場合だと、売れ残って値下げされたヒートテックやウルトラライトダウンの横に、新シーズンの定価品が並ぶことになる。
 
ユニクロと無印良品が巧みだと感心させられるのは、新シーズンの「定番」のどこが変化させたのかをキチンと明記している点だ。
例えば
「素材をやわらかくしました」
「丈を長くOR短くしました」
「身幅を広くOR狭くしました」
などという具合である。
業界の人からすると、そんなものが効果的なのか疑問に感じるかもしれないが、これが意外に説得力がある。
というか消費者は「どこが違うか」がわかれば納得するといえる。
実際、値下げされた旧品番と定価の新品番が同時にユニクロで並べられ始めたころ(2014年頃だったかな?)には、業界から「消費者が混乱するのではないか」と懸念の声が聞かれたが、実際、2019年正月に至るまで混乱の声は聞こえてこない。
とすると、消費者は説明さえキチンとしていれば混乱しないということになる。
ユニクロの客層は広いからファッションリテラシーの低い人も多くいると考えられるが、そういう人たちも「説明」がなされていれば、混乱しないということが証明されているといえる。
無印良品もそういう説明はユニクロ以上に丁寧だといえる。
 
これとほぼ同じ考えで売られているのが、このブログでも何度か採りあげた、京都イージーのオリジナル日本製Tシャツである。
3900~6900円と、高すぎることはないが決して安いとは言えない価格設定である。
ここが、2年に一度か3年に一度くらいの割合(多分不定期)で、「旧品番売り尽くしセール」を行う。そしてどこかを改定した新品番を定価で投入する。
どちらかというと、「この部分を改定した新品番を投入したいから、旧品番を徹底値下げして先に売りつくす」というのが京都イージーの姿勢である。
ユニクロや無印良品や京都イージーのように「新品番はここが変わりました」という説明さえできていれば、「定番」を処分して、新商品の「定番」を投入することも可能だし、旧品番と新品番を並列して売ることも可能となる。
 
ユニクロや無印良品のことを引き合いに出すと、「巨大資本だからうちのような中規模では真似ができない」というが京都イージーは中規模ですらない。失礼ながら小規模だし、スタッフも極めて少ないスモールビジネスを展開されている。それでも、考え方としてはユニクロや無印良品と同じ方向性に至っている。要はいかに理論的に考えられるかどうかなのではないかと思う。
「定番幻想」にとらわれて、いたずらに不良在庫を積み増しているアパレルやショップは業界では珍しくない。しかし、前部長も正月休みに指摘したようにユニクロや無印良品方式の定番管理を進めるべきではないかと思う。小資本であっても京都イージーはそれを実践しているのだから、資本力の多寡ではない。いかに合理的・論理的に取り組むかという姿勢の問題ではないか。
 
 
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