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南充浩 オフィシャルブログ

ロゴ入りTシャツとカーフ・ブランディング

2019年1月8日 トレンド 0

前回の続きになる。↓前回

ブランドロゴ入りTシャツブームの理由を正月にオッサン二人で考えてみた


 
ロゴ入りTシャツ(トレーナー、スエットパーカ―、長袖Tシャツも含む)は、何年か前は、特定の人気ブランドに限定された現象のように伝えられた。
その代表は「シュプリーム」だろうし、国内だと「Lee」「チャンピオン」だったが、様々なブランドで尋ねてみると、代表と目されているブランド以外のロゴ入りTシャツも概して好調~堅調という状況となった。
昨日登場していただいた方のブランドもシュプリームでもLeeでもチャンピオンでもFILAでもないのに、ブランドロゴ入りTシャツの大ヒットでV字回復した。
以前にも書いたが、マサ佐藤氏も「どのブランドでももっとも売れやすいのはロゴ入りTシャツ」と述べており、今回のロゴ入りTシャツブームの遥か以前に、自身が携わったブランドで、内部の反対を押し切ってロゴ入りTシャツを発売したところ売れ行きが極めて好調だった。
 
4年くらい前からロゴ入りTシャツ人気は復活したような感があるが、その理由やストリートファッションの復活の理由などは当方には知見がないから、省略させてもらう。
人気が起きた理由はどうであれ、結局、ブランドロゴさえ入っていればなんでも売れるという状況に至った理由を正月にオッサン二人で考えてみたというのが前回の趣旨で、今回の趣旨でもある。
特定のブランドが人気なのであれば、そのブランドもしくは類したブランドで買えばいいだけの話で、ビッグジョンやミルクフェドなんていうブランドのロゴ入りTシャツをわざわざ買う必要もない。
ちょっとおかしなたとえかもしれないが、ガンダムのプラモデルを買いに行って、ガンダムが売り切れていたからザクを買うということはあっても、ガンダムが売り切れていたから、まったく別物のシリーズの「ダグラム」や「レイズナー」のプラモを買おうと思う人はそんなに多くない。
そんな風に当方は感じる。
で、前回も最後の方に少し書いたが、ロゴ入りTシャツなら何でも売れるという状況は、「無地物だと目利きするのが難しい」という理由があるのではないかと思う。
そして「ロゴ入りだとハッキリと『ブランド物』だとわかりやすい」から支持されているのではないかと思う。
 
 
陶磁器や刀剣についてはまったく知識がない。
陶磁器や刀剣なんて知識のない当方から見ると、どれもこれも大して変わらず、どうしてあんなに値段の差があるのかわからない。
しかし、目利きによると、違いはあるのであれほどの価値の差、価格の差が起きる。
誰が作ったかということも非常に重要になり、陶磁器だと焼く際に何か印のような物を付けるし、刀剣だと茎に銘を刻んだりする。
もちろん、無銘の業物なんていうのも存在するが、それはノーブランドの良品みたいなもので、よほどの玄人でないと見分けることはできない。
その方と話をした結論としては、ブランドロゴはこれらと同じではないかということである。
そして、無地Tシャツのよしあしを見分けるのは、無銘の業物を見分けるに近いような鑑識眼が必要とされるのではないかということである。
だから、古くはD&Gの偽ロゴを入れた洋服が問題になったように、偽ブランド事件というのは毎年あるし、刀剣や陶磁器の世界では偽の銘を入れた贋作事件なんていうものが起きる。
 
 
 
現在「ブランド」という言葉は本来の意味とはちょっと異なる意味で使われている。
プロレスに「カーフ・ブランディング」という技がある。その昔、ディック・マードックというレスラーが得意としていた技である。
漫画だと「キン肉マン」に登場するテリーマンの得意技でもある。テリーマンというのはキン肉マンのライバルであり親友だという位置づけだが何となく不遇な超人でもある。
キン肉マンの戦いがどんどんとハイパー化するにつれ、各超人の使う技も派手なオリジナル技へと進化して行った。キン肉マンだとキン肉バスター、キン肉ドライバー、マッスルスパークなどになり、ロビンマスクはロビンスペシャル、ラーメンマンは九龍城落としなどだが、テリーマンだけは最後までド派手なオリジナル技を与えられることはなかった。
で、この「カーフ・ブランディング」という技は日本語では「子牛の焼き印押し」と訳す。
ブランドの本来の意味は、この「焼き印」「刻印」である。
刀剣などの「銘」はそれと同じ意味合いがある。正宗だとか和泉守兼定だとか関孫六だとか長光だとか長船だとかそういう銘はまさに「ブランド」だったといえる。
そして、買う人にそれなりの安心感を与え、そこそこの高価格でも納得して買わせるという意味合いにおいては、ブランドロゴというのは、まさに「ブランド」という言葉の本来の意味として機能しているのではないかと思う。
銘が入った刀剣に安心して高値を払ったように、ブランドロゴ入りTシャツなら5000円とか7000円とかを安心して支払えるというのは、同じ心理なのではないだろうか。
ユニクロで1000円で売られている無地スーピマコットンTシャツと、5000円とか1万円の他ブランドの高額無地Tシャツの違いを鑑定できるほどの人はそうそういない。当方だって無理だろう。
ブランドロゴ入りTシャツの安定した人気を見ると、「ブランド」の意味が何周か回って、偶然なのか必然なのかわからないが、本来の意味として機能し始めたと感じられるのだがみなさんはどうだろうか。
 
 
 
で、昨日の方が新しく移籍した先のブランドでも、さっそく「ブランドロゴ入りTシャツを作ろう」と指示したそうだが、これも往々にしてあるのだが、アパレル内部のスタッフの方が自社ロゴ入りTシャツを作りたがらない・売りたがらない。
マサ佐藤氏の時も相当抵抗されたと聞いているし、今回の方も抵抗されたので、当面は書体を変えたロゴ入りTシャツの発売で妥協スタートすることになった。この辺りに、消費者とアパレル側の考えの乖離が見られる。消費者を啓蒙することも大事だろうが、消費者のニーズに対応することも重要だと思う。
アパレル側からすれば「うちのロゴなんて」という謙遜とも謙譲とも卑下ともつかない心理があるのだろうが、そのブランドにわざわざ買いに来る人というのは、少なからずそのブランドのファンなのだから、その人のためには堂々とロゴ入りTシャツを企画製造して販売すべきだと当方は思っている。
80年代のように洋服が売れすぎて困る時代ならそういう気恥ずかしさがあっても不思議ではないが、売れなくて困っている時代においては、そういう手法は大いに取り入れるべきではないだろうか。
 
 
ブルーモンスタークロージングのロゴ入りTシャツもどうぞ~
 

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