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南充浩 オフィシャルブログ

ZOZOの保温肌着「ZOZO HEAT」に手詰まり感を感じる理由

2018年12月10日 ネット通販 1

当方は昔から暑さに弱い。成人してからは高血圧気味なこともあって暑さは苦になる。
その一方で寒さは比較的強い。もちろん寒いと感じるし、手もかじかむが寒いから動けないなんていうことはない。死んだ弟は低血圧気味で逆に寒さが苦になっていて、冬になると動けないとも言っていたがそのあたりはまったく理解ができない。
もちろん、冬は寒いと感じる(今年の12月は暖冬なのでそこまで寒いとは思わない)が、セーターなり薄手ダウンなりを着こめば解決するというのが当方の暮らしぶりである。
だから、保温肌着はまったく必要と感じていないし、着用することもない。
とはいえ、10年ほど前に一度、ヒートテックのズボン下(関西でいうところの「ぱっち」)を一枚買って何度か着用してみたが、多くの人がいうほどには暖かいとは感じなかった。
グンゼでサンプルとして保温肌着「ホットマジック」を1枚いただいて何度か着用してみたが、通常の綿の肌着と何が違うのかさっぱりわからなかった。
当方にとっての保温肌着はその程度のアイテムでしかない。
一般的に、男性より女性の方が寒さに弱いので、女性ならもう少し異なる体感があるのかもしれない。
 
12月7日金曜日の正午に、ZOZOがPBの新商品として保温肌着「ZOZO HEAT」を発表したが、正直手詰まり感しか感じなかった。
素材供給はクラボウが行うのだが、新鮮味はまったくない。
ユニクロのヒートテックを始めとして、しまむら、ドンキ、イオン、イトーヨーカドー、グンゼ、アズなど各社が散々やりつくして手垢にまみれた商品に今なぜ参入するのか理解に苦しむ。
「ZOZO HEAT」に手詰まり感を感じる理由を挙げる。多分、ほとんど売れないだろう。
 
 

1、機能性薄手保温肌着という商品自体のダウントレンド

ユニクロのヒートテックの大ヒット以来、肌着メーカー各社(グンゼ、アズ、アングルなど)や量販店(イオン、ヨーカドーなど)、低価格店(しまむら、ドンキなど)は後追いで機能性素材を使用した薄手保温肌着を続々と開発してきた。
その結果、市場は飽和状態となり、ヒートテックよりも低価格な商品も決して珍しくなくなった。肌着は嗜好品でも外に見せる衣類でもないので、毎日着用する枚数を揃えた時点で新規購入はなくなる。あるのは買い替え需要と買い足し需要だけである。
例えば、7枚持っていたが2枚破れたので2枚買い替えるという需要。また、7枚持っているが、出張に行かねばならなくなったので出張日数分だけ買い足そうという需要。この2つだけになる。
欲しい人に一定枚数が行き渡れば、毎年何枚も新たに買うことはなくなる。一方、当方のように保温肌着を必要としない人も一定数存在するから、新規購入客の母数が劇的に増えることもない。
グンゼやアズの展示会では毎年「機能性薄手保温肌着が頭打ちになり」という説明があるが、そうなるのは全く当然だといえる。
それに消費者も飽きが来ていて、ヒートテックで十分だし、ヒートテックがなくってもしまむらでもイオンでもドンキでも構わないと考える人も増えた。
代わって注目を集める保温肌着は
1、天然素材(綿、ウール)
2、薄手では効果がわかりにくいから厚手生地
3、日本製の高価格品
などのラインナップである。
 

2、PB売上高200億円計画には到底効果がない低価格品であるということ

ZOZOはPBの初年度売上高計画を200億円だとしており、未だに下方修正していない。
PBは開始後半年で受注額15億円、実績5億円という成績である。10億円の差額があるのは大幅納期遅れによる現金未回収によるものである。
残り半年で計画を達成するためには、受注額ベースで185億円、実績ベースで195億円の売上高が必要となる。売上高計画なので利益は度外視するとして、かなりのハイペースで売上高を稼ぐ必要がある。ZOZOの会員数は伸び率が鈍化してきているから、客数の圧倒的増によって売上高を作るというやり方は通用しない。あるとすれば客単価を上げることで売上高を増やすしかない。
にもかかわらず、決算発表後に投入する新商品は低価格品ばかりである。
まず、3800円のブラックジーンズ。その次が990~1200円程度の「ZOZO HEAT」である。
洋服業界では高単価品が動きやすい秋冬シーズンに突入しているにもかかわらず、どうして高額商品になりやすいダウンジャケットやウールコート、カシミヤセーターなどを投入せずに低価格品でお茶を濁しているのだろうか。200億円に到達させる気がないのではないかと思える。
仮に990円の「ZOZO HEAT」で50億円の売上高を作るとなると、500万枚強の販売が必要となる。12月7日からの短期間でそれだけの枚数を売ることは不可能だし、ZOZOがもっとも不得意とする製造に関してはもっと不可能だろう。
 

3、発表・投入時期が遅すぎる

今年は例年になく暖かい12月である。とはいえ、保温肌着を12月7日に発表して投入するというのはタイミングとしては遅すぎる。保温肌着の実質販売期間は2月末までであり、3か月にも満たない。
さらにいえば、1月からはバーゲンになるので、定価のままでは保温肌着といえども売りにくくなる。
ヒートテックより安価を売り物にしているが、ヒートテックは最終的に790円にまで下がるから、そこで買う人も多い。
「競争したくない」と言いながら自ら低価格競争に参入するというダブルスタンダードぶりには笑うほかない。
まともに販売したいのであれば10月か遅くとも11月には発表すべきだった。
 

4、1000サイズ投入で在庫過多の恐れ

これは明らかに需要予測を投げているとしか思えない。もともといろいろな体型に合わせてということだが、伸縮性のあるメリヤス生地の肌着にそんな微細なサイズの差異は必要ない。モノづくりを知らないにもほどがある。
メリヤス生地は何センチも伸びる。横方向のサイズであればそれこそXXS~3Lくらいまでで大部分がカバーできるだろう。逆に縦方向(すごく身長が低い、すごく身長が高い)のサイズは増やす必要がある。これで困っている人は少なからずいるから、ZOZOは本来そこを救済すべきだったのではないか。
しかし、当方の知り合いに身長の低いご婦人がいるが、この人が喜び勇んでZOZOに注文(肌着ではない。普通のPB)したところ、「お客様の体型には対応しかねます」との返答が来たそうで、どこが「服を人に合わせる」のかとあきれるほかない。
今回の1000サイズは、恐らく、サイズのわかっている会員の全員に合わせたサイズ取りではないかと当方は推測する。しかし、その全員が「ZOZO HEAT」を買うとは限らないから、大幅に売れ残りが生じるだろう。
そうなると、以前にジーンズを無料にしたように無料で配布するか、他のPBを買った人に抱き合わせでノベルティとしてプレゼントするか、のいずれかになるだろう。
結局、利益を削ってジ・エンドである。
 

5、上がらない株価

これを発表した金曜日の後場も月曜日の前場もZOZOの株価はほとんど上がらない。恐らく投資家は今回の保温肌着が売れるとは見ていないのだろう。そこは当方も同じだ。

金曜日終了後のZOZOの株価


 
一方、素材を供給するクラボウの株価は発表後の午後の相場で大きく跳ね上がった。

金曜日終了後のクラボウの株価


 
 
ZOZOはクラボウの株価を上げるためだけに発表したようなものである。記者時代から馴染みの深いクラボウの株価がアップすることはうれしい限りなので、ZOZOは利他的行動でクラボウをよくぞナイスアシストしてくれたといえ、その部分は感謝である。
ちなみに現時点ではクラボウの株価が2800円台、ZOZOの株価が2300円台なのでクラボウの株価の方が500円くらい高いといえ、この調子でクラボウには頑張ってもらいたいと願ってやまない。
識者の中には「株価が上がらないことを予測した上で金曜日の正午に発表したのではないか」と好意的解釈をする人がいるが、これは買いかぶりだろう。
なぜなら、クラボウの株価は午後の相場から大きく跳ね上がっているからだ。むしろ、午後の相場での株価高騰を狙って金曜日の正午に発表したが、思惑は外れたと見るのが正しいだろう。
 

6、前澤社長の言動不一致

当方はZOZOが好きではない。以前から、前澤社長の言動不一致さがどうにも好きになれない。
「誰もやったことがないことをやる」と言いながら、散々各社がやりつくした機能性薄手保温肌着に参入してみたり、「競争するのは嫌だ」と言いながら、機能性薄手保温肌着で後追い競争を仕掛けてみたり、ヒートテックよりも安いことを強調して低価格競争を仕掛けてみたりしている。
これが言動不一致でなくて何だろうか。
 
以上、そのような理由から「ZOZO HEAT」はあまり売れないだろうと予測する。
 

NOTEの有料記事もよろしくです
【有料記事】地方百貨店を再生したいなら「ファッション」を捨てよ
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n56ba091fab93
2016年に行ってお蔵入りした三越伊勢丹HDの大西洋・前社長のインタビューも一部に流用しています

 
そんなわけで、グンゼの保温肌着「ホットマジック」の日本製品をどうぞ~

 comment
  • A より: 2018/12/11(火) 2:23 AM

    機能性薄手肌着が頭打ちなのは新規性がないからというのはそのとおりだと思いました。各社同価格帯で性能もほぼ横並びで似通っているので。
    https://outdoorgearzine.com/column-dry-mesh-baselayer
    ドライナミックメッシュのようにエアリズムやヒートテックとは段違いの性能のものが同価格帯で発売されれば別なんですが…
    汗冷えを極限まで抑え、メッシュ構造でムレ知らず、空気層で断熱しているので夏冬兼用できるので価格さえ2000円位になれば売れそうな気がするんですが

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