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南充浩 オフィシャルブログ

売上高3億円未満で赤字という国内D2Cのリアル

2018年12月7日 トレンド 0

以前からD2Cブランドをめぐるメディアの取り上げ方には疑問があった。ちょっと煽りすぎやろと。
とくにWWDはひどい。以前に10YCというブランドの一時休止について「売れすぎて休む」みたいな見出しを付けていたが、これなんて「煽り」もよいところである。
たしかに10YCの規模からすると「予想以上の注文があった」のかもしれないが、世間的・業界的な水準の「売れすぎ」からすると程遠い金額である。超小規模ブランドに予想以上の注文があったということ以外の何物でもない。(別に10YCをディスっているわけではない)
例えば、100枚しか用意していないブランドに300枚の注文があったとすると「売れすぎ」になり、ブランド側は製造キャパの確保に四苦八苦するが、100枚とか300枚程度の販売数量・販売金額なら業界には掃いて捨てるほどある。
まるでアパレル業界・ファッション業界の救世主か次代の盟主かのようなD2Cの取り上げ方は百害あって一利なしである。
じゃあ、D2Cの現状はどうかというと、少々掘り下げ具合に不満が残るが、こちらが詳しい。

TO NINE増田氏が語る、国内D2Cのリアル
https://evanh.jp/n/n1aaabfcf86db?creator_urlname=evanh
国内D2Cではおそらく30億くらいが限界点。それ以上狙うには既存流通に乗せたり直営店舗拡げるか、ブランドを多角化するか、ブランドを尖らせ他ジャンル(雑貨やコスメとか)攻めるかくらいしか無い。
今国内で取り上げられてるD2Cブランドのほとんどは売上3億未満。知名度の割に売れてない。しかもスタートアップ系のD2Cブランドはデジマやテック寄りのところが多く、広告コストが嵩んでて大赤字。

とある。
当方が耳にしているD2Cもたいがいが売上高3億円未満だし、赤字体質なのでこれは現状をリアルに伝えている言葉だといえる。
もちろん、そういうニッチな市場は否定しない。零細業者のための新しい売り方も否定しない。
しかし、まるで「将来有望な市場」みたいなメディアの煽り方はどうかと思う。メディアからすると購読数やPV数を増やしたいから煽るのかもしれないが、繊維業界・衣料品業界の人は意外にそういう「煽り報道」を真に受けることが多い。
当方も昔、記者時代に取材先から「繊研新聞に〇〇が絶好調と書かれているが、本当なのか?本当なら当社も対応しなくては」という言葉を何回も聞いた。
その多くの場合の「絶好調」は業界水準でいうとそこまで「絶好調」でもなかった。
ニュースを読む側は得てしてそんなもんである。
 
例えば、クラウドファンディングの成功によって知名度を高めたオールユアーズというブランドがある。卸売りはほとんどやっていないに等しいからD2Cブランドと言ってしまっても問題はないだろう。
しかし、丸井織物という大手生地メーカーから出資を受けている。

新興オールユアーズに出資、日本最大手の生地メーカーが挑む“温故知新”
https://www.wwdjapan.com/415752

すごく儲かっているなら出資を受ける必要はない。もしくは出資を受けるとしても生地メーカーからではなく、金融機関やファンドから出資を受けるだろう。
これが事実である。
また、別のD2Cブランドも大手生地メーカーに出資を依頼しに行ったとの情報もある。そことても儲かっていれば出資を依頼する必要もないし、出資が必要なら金融機関やファンドが受けてくれるだろう。要するにこれが答えだ。
 

テックやWEBサービスのスケールのさせ方をブランドビジネスに持ち込んでもそりゃ無茶な話。あくまでサービスでなくモノ売りなんで、モノの原価、生産コストもWEBサービスとは根本が異なる。
D2Cブランドのメリットは小さく始めて最初から採算が合うビジネスモデルが魅力なのに、D2Cという言葉が流行り言葉になりすぎていて、本質を曇らせてる気がしてならない。
 

との一節があるがまさしくその通りである。
今のD2C礼賛は、本来のD2Cの魅力を大きく削いでいるし、下手に若者に夢を見させてしまう分だけ罪深い。
 
 
そもそも無名ブランドがネットだけで売っていてどうして莫大な売上高を稼げると思うのだろうか。見たことも触ったこともない安くもない服をそうやすやすと買う人が一体どれほどこの世の中に存在すると思っているのだろうか。
当方なら絶対に買わない。まあ、1枚3000円くらいまでなら興味本位で買うかもしれないが、それ以上の金額だと実際に試着したり生地を触ったりしてみてからでないと買わない。D2Cブランドの売上高がどうして3億円未満にとどまるのかというとこれが理由だといえる。
1、無名ブランドだから
2、それなりに値段が高いから
3、現物を試着したり触ったりできないから
である。
見たことも触ったこともない服を理念に共感しただけで買ってくれる人はもちろんいる。しかし、その人数は絶対的に多くない。
実店舗を多数持っているユニクロやブランドステイタスが確立されている有名ブランドの服がネットで売れるのとは根本的に構造が異なるのである。
D2Cブランドをやめてしまえとはまったく思わないが、若者もテック系の人も「大儲けできる」と思わないことが重要である。洋服でいえばニッチな市場、少ない買い手なのだから、そこに上手く少数を売り、少なく儲ける。この現実を理解しておく必要がある。
この現実をメディアが伝えないのは、不幸なプレーヤーを量産するだけでしかない。
 

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【有料記事】地方百貨店を再生したいなら「ファッション」を捨てよ
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2016年に行ってお蔵入りした三越伊勢丹HDの大西洋・前社長のインタビューも一部に流用しています

 
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