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南充浩 オフィシャルブログ

欠品を恐れて数量を作りすぎるからアパレルは過剰在庫を抱えてしまう

2018年12月6日 誰がアパレルを殺すのか 1

某ファッション専門学校の生徒が毎週金曜日にシュプリームの新作を買うために授業をサボって並んでいるのだという。
8月には猛暑にもかかわらずカナダグースのダウンジャケットを買うために行列ができた。
衣料品不況と言われながら、中には行列を作ってまで買わなくてはならない衣料品もある。もちろん、そのブランド自体が「ブーム」という側面もあるが、そういうブランドは「数量を作りすぎない」という共通点がある。
ZARAのビジネスモデルが業界では優れているといわれているが、その理由は1型あたりの枚数を作りすぎないからである。売り切れる枚数だけ作って、売り切れたら新型を投入する。といっても、ときどきインディテックス社の商品も日本のバッタ屋に流れてくるのだが。(笑)
過剰在庫在庫の消化に苦しむアパレル企業は数多くある。
その原因は「欠品による機会ロスを極度に恐れて商品を作りすぎる」ことである。
例えばユニクロがジル・サンダー氏とコラボした「+J」というラインがあった。発売当初は大いに話題になって、発売当日には行列ができた。
普段「ユニクロなんて~」とスカしているファッソニスタの面々も並んで+Jを買っていた。
初回投入は品番によっては売り切れも出ていたほどの売れ行きだった。ユニクロの柳井正会長は極度に欠品を恐れる思想の持ち主だからか、次シーズンからは明らかに店頭投入量が増えた。その結果、どうなったかというと+Jは待っていたら必ず値下がりするラインになってしまった。
当方も値下がりした+Jをいまだに何枚か持っている。ノンストレッチのジーンズは長いこと愛用したが、今ではストレッチ入りでないと着用しないのでタンスに眠っている。
これは今のユニクロUでも同じだし、その前身であるユニクロアンドルメールでも同じだ。
製造したり仕入れたりする数量を増やせば増やすほど売れ残る確率は高くなる。なぜなら今の日本人はそれほど服を必要としていないからだ。ファッションに興味がないわけではないが、すでに多くの人が多くの服を持っている。だから買い足す枚数は知れている。終戦直後の焼け野原とは違う。
マサ佐藤氏が当方の生活を暴露している。(笑)

MD・バイヤーはファミリーセールで販売しろ!
http://msmd.jp/archives/846

月に何度かいまだにバッタ屋の店頭で販売をしている。重い段ボールを担いでストックに放り込んでいる。
で、マサ佐藤氏がいうように

バッタ屋情報等が必要でリスト化したければ、南さんにお金を払い作成して貰えばいい!それは物凄い価値がある!

なんてリストは作れないが、入荷する商品を見ているとわかることが2つある。
1、数量を作りすぎ・仕入れすぎている
2、販売価格がモノの出来に比べてそのブランドの割には高い
この二つである。
例えば、先日、深緑色(オリーブグリーンでもミントグリーンでも黄緑でもなく深緑色。黒板の色を少し薄くしたような色を想像してほしい)のスキニーパンツが大量に入荷した。
そりゃこんな変てこな色のパンツを大量に作ったら大量に余るよな。
これなんかも「欠品恐怖症」の賜物だろう。この手の売れにくい色は本当に見せ球程度に作れば良いのである。
また、以前、しまむらのチュニックが入荷したこともある。しまむらでさえたまにはバッタ屋に流すのである。そのチュニックは使用素材の風合い、色柄ともに明らかに安物っぽかった。しかし、付いていたしまむらの値札は1500円である。正直にいうとこれはあまりにも高い。当方なら絶対に買わない。同じ値段ならユニクロのTシャツを定価で買っている方がマシである。
ところがこのチュニックは790円にすると完売した。当方が見てもこのチュニックの妥当な価格は990円だろうと思う。
モノとブランドの割には販売価格設定が高すぎたのがこのチュニックの敗因だと思う。
先日、3990円でウール100%のセーターを買った。
当方は実はセーターが好きである。しかし世間的にいえばウール100%のセーターは機能的ではない。保温力という点では機能的だが、保管がめんどくさい。気を付けていないと虫に食われて穴が開く。そんなリスクがありながらも毎年冬にはセーターを買ってしまうのだから、これは当方の変態的嗜好によるものだといえる。
ただし、当方は当方の嗜好がマスに反映できるとは思っておらず、あくまでも変態的嗜好だということは熟知している。
一方で、当方は安くて良い物が好きなので、ここ2~3年で買ったセーターはほとんどがユニクロで投げ売りされていた590~1990円くらいの商品である。とくに昨年秋から今年年明けまではユニクロとJWアンダーソンのコラボセーターを安さに釣られて何枚も買ってしまった。いずれも買値は990~1990円に値下げされてからだが。
今回買ったのは、ライトオンの英国羊毛100%セーターだ。以前にもこのブログで紹介したことがある。

今秋冬の最もお買い得なセーターはライトオンの4品番


これである。
定価4990円(税抜き)でも割安感があったが、これが3990円(税抜き)に下がっていた。いつもならたった1000円の値引きでは買わないが、この求心柄の黄色のセーターを買ってしまった。

 
 
理由は店頭在庫がほとんどなくなっていたからだ。2店舗のライトオンを回ったが、この黄色の店頭在庫はどちらも少なかった。そして当方が一番欲しかったのもこの柄である。
だから、「もう今買わないと売り切れてしまう恐れがある。追加生産される見込みはまずない」ということで、当方にしては珍しくたった1000円の値引きで3990円(税込み4309円)のセーターを買ってしまったわけである。
いつものライトオンの商品なら1990円くらいまで値引きされるまで残っている可能性が高いが、今回のこの黄色い柄のセーターは違った。
もしライトオンが「欠品」を恐れるあまり2倍の数量を作り込んでいたらどうだろうか。当方はまず買わない。店頭に在庫が豊富に残っているから売り切れる心配がない。最終的には恐らくいつものように1990円くらいにまで値下がりしただろう。
しかし、用意した枚数が少なかったからケチくさい当方でも3990円で買ったのである。
不良在庫を作らない方策というのは、数量を作りすぎない・数量を少なめに作ることである。
そして売り切れたらすかさず新型商品を少量投入する。これを高回転でできているのがZARAで、世界的に勝ち組と言われている理由である。
もちろん一朝一夕にZARAのシステムを真似ることは難しいが、基本的な考え方を念頭に置くだけでも変わってくるだろう。
いまだに国内アパレルの多くは機会ロス恐怖症で商品を多めに作ろうとしている。しかし、欠品することがわかっていれば消費者は値下がりするまで待たずに買う。値下がりするまで待っているのは欠品しないことがわかっているからだ。現に当方がそうである。
だったら話は早いのではないか。今までのやり方で売れないのならその方法が間違っているということで、方法論を切り替えるべきである。今までの売れない方法論に固執していても待っているのは売れない未来だけである。答えはいたってシンプルである。科学的論理的に考えれば済む話でしかない。
 

NOTEの有料記事もよろしくです
【有料記事】地方百貨店を再生したいなら「ファッション」を捨てよ
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n56ba091fab93
2016年に行ってお蔵入りした三越伊勢丹HDの大西洋・前社長のインタビューも一部に流用しています

 
マサ佐藤氏の著書をAmazonで見つけてしまったのでどうぞ~(笑)

 

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 comment
  • 小林 より: 2018/12/06(木) 5:08 PM

    少量生産でスケールメリットが弱まった場合、価格が上がってしまいそれはそれで売れないような気もするのですがその場合はどうするのが正解なんでしょう。

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