「販売期間の設定と厳密な運用」だけでは更なる規模拡大は期待できない
2018年10月26日 企業研究 0
低価格な代替品がいくらでも見つかる成熟社会において「欠品させません」というバブル期までの方策では、衣料品は大量の売れ残り品を生んでしまう。
そのためには「売り切れ御免」方式で新型アイテムを次々と投入させるのが理想的で、その理想を体現しているのが現在のZARAだといえる。
しかし、それを実現するためには、「各アイテムの販売期間の設定と厳密な運用」が必要となる。それを前回のブログで書いた。
世界の衣料品売上高ランキングを見るとZARAを有するインディテックス社が1位で、ユニクロを擁するファーストリテイリングが3位であることは良く知られている。
我が国で「売り切れ御免」方式を貫き成長してきた、しまむらはなんと世界10位である。これはあまり話題にならない。ただ同じ「売り切れ御免」でもZARAはSPA方式で、しまむらは仕入れ品で対応してきた。しまむらは裏地あったかパンツの大ヒット以来、急速に大量生産のSPA方式も取り入れており、現在は仕入れ品とSPA品のハイブリット型で運営されており、次なる段階への模索常態にあるといえる。
現在、しまむらの業績は苦戦に陥っており、ちょっと打開策が見当たらない。一つ言えることは、これまでの「しまむら方式」では現在が限界点で、さらなる規模拡大を目指すなら、異なる方式が必要だということである。
さて、前回のブログを書くきっかけとなったマサ佐藤氏とのやり取りの中で気が付いたことがある。
ZARAは各書籍に書かれてあるように「コーディネイト提案」「スタイル提案」で売っている。
一方、「単品部品」「パーツ」と評されることが多いユニクロだが、採用するしないは消費者の好みもあるが、コーディネイト提案がそれなりにできているし、何より、各アイテムにテイストの一貫性がある。いわゆる「ユニクロらしさ」「ユニクロっぽさ」があり、売り場のアイテムだけでトータルコーディネイトを組むことは可能だ。
ところが、しまむらはどうだろうか。さまざまなテイストがごった煮であり、MB氏とコラボしたファッションアイテムの横にオバちゃん向けのクソダサい服やアニメキャラクターコラボの服が並んでいる。このごった煮感がしまむらの魅力で、成長の原動力となったが、そのやり方では現在の5600億円が限界点ではないかと思う。7000億円、1兆円と売り上げ規模を拡大させたいなら、せめてユニクロ並みの「スタイル提案」「統一感」は必要になる。
逆にいうと、勝ち組二強と呼ばれるZARAとユニクロは強弱の差はあれ、コーディネイト提案・スタイル提案ができているのに対して、しまむらはそこが全くの手付かずである。
これがユニクロとしまむらの現在の差になっているといえるのではないかと思う。
「販売期間の設定と厳密な運用」については、しまむらもできている。だからこそ、しまむらは世界10位にまで躍進することができた。
しかし、スタイル提案はできなかった。というかしてこなかった。もしかするとその必要性を経営陣は感じなかったのではないかとも思う。
だが、単品寄せ集めでさらに成長できるほど世の中は甘くないし、世界の壁は越えられない。
スタイル提案・統一感を持たせることは、もしかすると、これまでのしまむらの長所を殺してしまうことにもなりかねない。
そういう意味では重大な岐路に差し掛かっており、舵取りを間違えるとしまむらはこのまま凋落してしまう可能性もある。
どのような選択をするのか注目したい。
とはいえ、やはり「販売期間の設定と厳密な運用」は必要であることは明白だ。
【販売期間の設定と厳密な運用】
ZARA 〇
ユニクロ 〇
しまむら 〇
だから、成長ブランドになるためにはこれが必要不可欠だといえる。
【スタイル提案・統一感】
ZARA ◎
ユニクロ 〇
しまむら ×
だから、しまむらとの差はここにある。
【単品志向】
ZARA ×
ユニクロ 〇
しまむら ◎
といえ、ここはしまむらが強いが、しまむらはこれが強すぎるために現在の状況に陥っているともいえる。
もちろん、ビジネスモデルがそれぞれ異なるため、一緒くたに比較するのがすべて適切ではないことは重々承知しているが、相違点を明確に認識しやすいという利点があるので今回はあえてやってみた。
参考になる部分があれば幸いである。
【告知】
11月24日に大阪でウェブコンテンツに関する有料トークショーを深地雅也氏と開催します。
https://eventon.jp/15080/
当ブログを題材に深地雅也さんが解説をするのだが、8年もやってきて今更なのだが、実は当方はなぜ当ブログがそれなりの読者を得ているのか理解していない。その時々で、自分なりに興味のあることや重要だと思うことを書いてきたのだが、深地さんいわく「全然マーケティングしていない」とのことで、深くマーケティング思考をやったかと問われると、答えは否である。
そのあたりを彼が解説をしてくれるので、興味のある人はご来場いただきたい。
来年の1月・2月くらいには東京でも開催したいと思っている。
NOTEの有料記事もよろしくです
地方百貨店を再生したいなら「ファッション」を捨てよ
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n56ba091fab93
2016年に行ってお蔵入りした三越伊勢丹HDの大西洋・前社長のインタビューも一部に流用しています
2001年にはこんな本が発行されていた