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南充浩 オフィシャルブログ

欠品を追いかけないZARAの姿勢を国内アパレル業界は見習うべき

2018年10月24日 お買い得品 0

アパレル業界にはZARAファンが多いが、個人的にはZARAの商品は好きではない。実際にほとんど買っていない。5年くらい前に2490円に値下がりしたチェック柄シャツを2枚買ったっきりである。
ZARAの商品が好きではない理由はいくつかある。
1、袖が長すぎる(当方は手が短い、ZARAはヨーロッパ体型向け)
2、ユニクロや無印良品に比べて定価が高い
3、デザインが好きではない
4、毎シーズンのトレンドによって大きく左右されるからテイストが一定でなくイメージしにくい
5、素材クオリティもなんだか低く感じられる
ざっとこんなところである。
中でも一番嫌いな点は「袖丈が長すぎる」である。
同じサイズでもユニクロより3センチくらいは袖が長い。
ZARAの商品のパターン(型紙)は細く見えるように工夫されているという評論家がいるが、それは本当かどうかは疑わしい。そう言っている人がパターンについては当方同様にド素人だからである。
当方がZARAの商品を好きでない理由のほとんどが、ZARAの強みとされているところだから、そういう意味では根っから相性が悪いのだろう。相性の悪い者同士が無理に歩み寄る必要はないから、今後もZARAで買うことはないだろう。
とはいえ、ZARAで評価するのはそのビジネスモデルである。とくにZARAファンのアパレル業界人はそこを見習うべきだと思う。
ZARAについての報道や著述については「ちょっと持ち上げすぎじゃね?」と感じられるものもあるが、最も評価すべきは「欠品商品をよほどのことがない限り追加生産しない」という点である。
大概の場合は「売り切れ御免」で、売り切れた場合は新型商品が代わりに投入される。
一口にいうのはたやすいが常に新しいアイテムの企画を練っていなくてはならないし、生地の手当て、縫製工場の手配もあるから、実現することはなかなか難しい。
これはZARAが縫製工場出身であるからこそ、構築できたシステムだといえる。製造加工業出身の大規模SPAはなかなか存在しない。日本でいえば、自家縫製工場を有するハニーズはそうなり得る可能性があったといえるが、現状はかなり厳しい。ピーク時には600店舗弱あった中国から全店撤退に追い込まれている。
それはさておき。
新型商品を次々と投入するから店頭は新鮮であり、定価で売れる。その時に買わなければ来月までになくなっている可能性が高いからだ。
しかもZARA各店に対する商品1型あたりの投入枚数はユニクロやジーユー、無印良品などと比べると極めて少ない。こんな少ない枚数でどうやって工賃を安く抑えているのか?と業界初心者は不思議になるだろうが、それはちゃんと仕掛けがある。世の中に種も仕掛けもない魔法なんて存在しない。
ZARAの店舗数は全世界で2000店舗以上ある。仮に1店舗につき新型商品を30枚ずつ投入したとしても、総生産枚数6万枚になる。これによって1枚当たりの製造工賃は安く抑えられる。簡単な算数である。
さて、前置きは長くなったが、成熟社会となった我が国でアパレルブランドが服を売るためにはこの「売り切れ御免」方式をどう構築するかがカギになる。
欠品をおそれるな・・・欠品を追いかけるとビジネスは崩壊する

大多数は「消費者」からみれば「似たようなもの」であふれているのです。
自分のブランドの商品は唯一だ、などと思っているのは企業だけ。消費者は賢く似たような商品をネットをつかって賢く価格比較しお買い物をしてしまう。並んでまで待つなどということは(ごく一部の例外を除いて)ありません。我々は、まず、その事実と真摯に向き合うべきでしょう。

との指摘があるが、まさにその通りである。
例えば、先日も当方が自分で体験したが、そろそろ秋物商品を買おうかとふと思って、店頭とネット通販を物色していた。正直にいうと、今秋冬物で当方が「絶対に欲しい」と思う商品はない。ブランド的にもデザイン的にも。
高血圧傾向がさらに進んでいるのか、現時点でもまったく寒くなく、ちょっと厚着をすると汗ばむ。さすがに寝るときには冷房もかけてないし、薄い肌掛け布団は被っているが、未だに半袖・半ズボンで寝ている。
昼間も半袖Tシャツの上にカジュアル長袖シャツを引っかけるだけで、それ以上着こむと汗ばむのでNGである。
それはさておき。何となく、まあ、いっちょ長袖シャツでも買おうかと思った。
そこでアダストリアの通販サイト「ドットエスティ」を見ていたら、ネイビーの開襟長袖シャツが972円に値下げされていた。素材はレーヨン100%だから、春夏物の売れ残りだろう。

ドットエスティの長袖開襟シャツ


 
 
4000円以上買わないと送料無料にならないし、どうしようかなあ
と思って保留にしたまま、店頭を見に出かけた。
あべのキューズモール内のウィゴーの前を通ったときに「790円」に値下げされたシングルラックが目に入った。何の気なしにラックを物色し始めると、長袖開襟シャツがあった。色は3色くらいあったが、中にネイビーがあった。

ウィゴーで買った長袖開襟シャツ


 
 
 
素材は綿68%・ナイロン28%・ポリウレタン4%である。
ウィゴーの方が180円ほど安いし、送料もかからないのでウィゴーで買った。あの日、高校生に交じってレジに並んでいたオッサンは当方である。
画像を見比べるとわかるように、見た目はほとんど同じだ。ウィゴーのは両胸にポケットが付いていてややワークテイストが強いが、はっきり言ってその程度の差なんて誰も気にしない。
素材はまったく異なる。ドレープ感があるレーヨン100%と、ハリ感のある綿・ナイロン・ポリウレタンだからその部分の見え方は少し変わるが、ウィゴーの商品も生地が薄いので、そこまで違うようには見えない。これがもっと肉厚ならワークジャケット風に見えただろう。
言ってしまえば、ドットエスティの開襟長袖シャツもウィゴーの開襟長袖シャツもほとんど同じで、どちらを選んでも消費者にとってはほぼ同じなのである。
これと同様のことが他のアイテム間・他のブランド間でも数えきれないほど起きている。
言ってしまえば、ドットエスティで開襟シャツが欠品しても誰も困らず、ウィゴーで買うだけのことである。だから必死で欠品を追加生産してもあまり意味はなく、それよりもZARA方式で売り切れたら次々と新型アイテムを投入う方が売れやすいし支持されやすい。
自分が買う立場になってみれば簡単にわかることなのだが、売る立場・作る立場になるとそれを見失う人がアパレル業界・繊維業界には多い。
 

【告知】11月24日に大阪で、プリンス深地とウェブコンテンツ作りに関する有料トークショーを開催します。
https://eventon.jp/15080/
良かったらご参加ください。

 

NOTEの有料記事もよろしくです
地方百貨店を再生したいなら「ファッション」を捨てよ
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n56ba091fab93
2016年に行ってお蔵入りした三越伊勢丹HDの大西洋・前社長のインタビューも一部に流用しています
 

Amazonには415円の長袖開襟シャツがあるね~

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