無制限に選択肢を増やすことは売上増にはつながらない?
2012年8月31日 未分類 0
阪神百貨店の自主編集レディースジーンズ売り場「ジーンズハウス」は2011年3月に40坪も売り場面積を削減された。それまで100坪だったのが、60坪になった。
それでもボトムスの売上高は落ちずに伸び続け、今年上半期は前年比10%増で推移しているという。
そこでこんな記事を書いた。
大阪・梅田の阪神百貨店、強さはデパ地下だけじゃない
流行は下火でも売れる「ジーンズハウス」の秘密
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120823/235939/
30代半ば以上の女性のジーンズ着用比率は高い。
これについての統計データは業界団体にも存在していないのだが、とくにお子様をお持ちの主婦の方は驚くほどジーンズを穿いておられる。
「この層は価格にシビアだからユニクロとか低価格ブランドが主体じゃないの?」という意見もいただいたのだが、これも統計データが無く、経験則だけなのだがこの年代の方は意外にブランド志向も強い。
当然、低価格品も持っておられるが、リーバイスやサムシング、ブラッパーズなどのナショナルブランドもそれなりに所有されている。
もしかしたら、ナショナルブランドの型落ち品で安くなった物を購入されているのかもしれない。
阪神百貨店の主要顧客層が30代半ば以上の女性だったということは、ジーンズがダウントレンドと言われる中で、不幸中の幸いだったのではないだろうか。
もうひとつ、「テーマ別」コーナーの設置も大きい。
例えば「ホワイトジーンズ」とか「夏素材商品」というように、各ブランドからその時々にテーマに応じた商品を集めたコーナーを作っている。
これが消費者にとって分かりやすかったのではないかと考えられる。
もしかしたら、ジーンズの各ナショナルブランドが苦戦している理由の一つに、選択肢が多すぎてわかりにくいというものがあるのではないだろうか。
例えば「リーバイス」を例に考えてみたいのだが、永遠の定番「501」はよく知られているが、そのほかにも502、503、504、505、515、517、511など多数の品番がある。
これらはシルエットの違いで、細いか、太いか、ストレートかブーツカットかというふうに分けられている。
当然、売り場のPOPにも「501がレギュラーストレート」「505は細身のストレート」「517はブーツカット」などと表示されているが、これは一般消費者にとって意外に覚えにくいのかもしれない。
現在、ナショナルブランド各社はスキニー、タイトストレート、レギュラーストレート、少し太めのストレート、太めのストレート、ブーツカットと6種類くらいのシルエットのジーンズを発売している。
さらに股上の浅い深いなども加えると、微細な形の変化のバリエーションは10を越えるのではないだろうか。
果たしてそんなにもシルエットは必要なのだろうか?
3~4種類くらいで十分ではないのか?
これまでのナショナルブランド各社の製品を見ていると、無制限に選択肢を増やしているような気がしてならない。
「選択肢を増やせば利便性がアップし、消費者利益にさらにつながる」と考えているのだと推測するが、本当にそうだろうか?
消費者はジーンズの微細なシルエットの変化をそこまで理解していない。正確にいうなら理解していない消費者が大多数を占めている。
そんな「漠然とした消費者のニーズ」に合わせて10種類も異なるシルエットを作っていても、結局売れるシルエットは2つ、3つに集中するのだから、酷く効率が悪い。
販促コンサルタントの藤村正宏さんは、「消費者は自分のニーズを気づいていない」というブログを書いておられるが、その通りで、ある程度の選択肢を提示することは必要だが、無制限とも思えるような提案は余計に消費者を混乱させ、選ぶのに疲れさせるだけではないだろうか。