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南充浩 オフィシャルブログ

低価格SPAによってジーンズは本来の位置付けに戻った?

2012年7月12日 未分類 0

 ファッション雑誌や一般メディア、コンサルタント会社の方とジーンズについてお話をすると、ちょっと勘が狂うことがある。
どうもビンテージ系ブランドを過大に評価されているのではないかと感じる。

エヴィス、旧ドゥニーム、ダ・ルチザン、フルカウント、シュガーケーン、ウェアハウスなどなど。
最近だと桃太郎ジーンズやサムライジーンズなどもこの範疇に入るのだろうか。

いわゆる「こだわりのジーンズ」ブランド群である。

先の方々からすると「ジーンズ」といえば「こだわりのビンテージブランド」という構図になることが多いらしい。

しかし、業界記者的見地からするとそれらの市場シェアはかなり低い。
とくにこの数年はさらに低下した。

先に挙げたブランドだが、どれも年商規模は2億~10億円内外である。
最大のエヴィスですら某コンサルタント会社によると「50億には届いていない」という。

年商規模が小さいから存在価値がないということではない。
そういうニッチな市場があっても良いとは思うが、業界を左右するほどの影響力は無いということである。

ファッション雑誌や一般メディア、コンサルタント系の方はここを「業界を左右するほどの影響力がある」と考えていらっしゃるフシがあるので、話がかみ合わずに勘が狂うことになる。

現在の繊維産業というものは量産体制が基本となっているため、生産・販売数量が多いブランドが業界に対して影響力・発言力を持つことになる。
かつてだと、それはジーンズ専業メーカー各社だったが、今ではそれがユニクロやポイントなどのSPAブランドに移っている。

個人的には、ビンテージ系のブランドが年商100億円を越えるほど大きくなることは、今のやり方を続けて行く限り、今後も無いと考えている。
もっともそういうブランドを展開されている方々は、大きくすることをそれほど望んでいられないとは思うが。

まず、価格が高い。
価格については、高くしても売れるなら高いにこしたことはない。
無理に安くする必要も無い。
しかし、消費者がジーンズという衣料品に対してどのようなイメージを持つかだが、
作業服という出自を持つカジュアルパンツと捉えた場合、そこまで高い商品を渇望している人がどれだけいるかということである。
1万5000円以上するジーンズを欲しいと熱望する消費者は、それほど多くないと考える。

大多数の消費者は1万円弱くらいが妥当だと考えているのではないだろうか。

次にイメージである。
物作りを前面に打ち出して、糸、生地、染料などへのこだわりが伝えられている。
個人的な印象だが、ちょっと民芸品や伝統工芸品に近いのかな?と感じる。

高額な伝統工芸品を欲しいと感じる消費者はそれほど多くあるまい。

最後にあまりトレンドに左右されない。である。
トレンドに左右されないのはブランドとしては重要な要素ではあるが、されなさすぎるのもまたファッション衣料ではなくなる。そのバランス感覚が難しい。
だから熱烈な支持層はできるが、広がりにくいという側面もある。

しかし、こういうジャンルも業界には必要とされているのは間違いない。

話を戻すと、ファッション雑誌や一般メディア、コンサルタントの方が「ジーンズといえばビンテージ」というイメージをいまだに持っていらっしゃるのが話をややこしくしている側面がある。
今のジーンズは低価格SPAのおかげで「そこそこ安い割には丈夫で着回しの効く、気軽なカジュアル」という位置づけであろうか。
これについて「嘆かわしい」という意見があるのは承知している。
けれども、先ほども書いたようにジーンズの出自は作業服である。
作業服に高額な出費をしたい人間はそうはいない。
そんな人間が多数いるなら今頃、福山市周辺に点在するワーキングユニホームメーカー各社は儲かって仕方が無い状態だろう。

作業服を出自とするカジュアルアイテムは、「そこそこに安くて丈夫なこと」が本来のコンセプトと合致する。

そういう意味において、低価格SPAは本来の姿にジーンズを戻したという側面もあるのではないだろうか。

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