ポエムを作るより「禁止アイテム」を作った方がわかりやすいブランドになる
2018年8月27日 企業研究 0
8月24日、マサ佐藤氏とのトーク付懇親会(懇親会という名の飲み会がメイン)を無事に開催できた。
正直なところちょっと手落ちなども多かったので反省して次回に生かしたいと思っている。
30人前後にご参加いただき本当にありがとうございました。
で、開催前にマサ佐藤氏と行きつけの280円白木屋でビールを飲みながら打ち合わせしたのだが、そのときに出てきた話が面白かったので、懇親会で話そうと思っていたら、機会がなくてお蔵入りしてしまったのでここで書いてみる。
世の中に衣料品のブランドは国内だけでも数えきれないほどあるが、ブランドコンセプトやシーズンテーマをポエムのように書くブランドと、そうではなく直接的に書くブランドがある。
これまでの展示会取材経験からいうと、ポエムは小規模ブランドに多く、直接的な説明は大手ブランドに多いと感じる。もちろん例外もある。
個人的にいえば、ポエムブランドは何が言いたいのかあまりよくわからない。
よくわからないから記事に書きにくい。書きにくいから、キチンと依頼された仕事以外では書かない。
もちろん、これは個人の感じ方なので、ポエムの方が好きだという人がおられてもそれは当然だろうが、当方はポエムは嫌いだし苦手なのである。
実際に趣味としてもポエムを読む趣味はないし、書く趣味もない。
漢詩や和歌あたりはたまーに読むこともあるが、現代的な詩になるとまず読まない。書けといわれても書けないし、書こうとも思わない。
そういえば、大学生のとき3つ上の先輩(男性)が銀色夏生の詩集を愛読しておられたが、当方にはあまり理解できない感性だった。
ブランドコンセプト
それは過去に降り積もった雪
追憶とともに溶けてしまう透明な結晶
みたいなコンセプトを書かれても、正直なところ当方としては記事にするのに困るし、そのテーマの雰囲気はわからないでもないが、はっきりと理解できるとはいえない。
ありていにいえば「なんじゃ?これ」である。
しかし、ポエムの方が何となくカッコヨクは見える。
カッコヨクは見えるが、当方からすればそれは「見えるだけ」でしかない。
もし、仮に当方がブランドの企画担当者だったとして、そんなポエムを作れるかというと、まったく自信がない。
自信がないし、そんなポエムは作りたいとも思わない。
そして、そういうポエムを書ける人は、多数派ではないと思っている。
マサ佐藤氏は、ノーリーズというブランドでMDを経験したあと、メンズブランド「フレディ&グロスター」(当時ブランド名グロスター)の立ち上げを担当した。
当時のブランド名はグロスターなのだが、フレディは一体どこからやってきたのだろうか?
ここでマサ佐藤氏本人から修正依頼があったので付け加えておく。
正確に言うと物流・販売をノーリーズで経験した後、グロスターというショップの立上携わり、ノーリーズメンズの立上に携わったというのが正解ですが💦取り上げて頂きありがとうございます🙇♂️ https://t.co/DYvo8T5Fm6
— 佐藤正臣(マサ佐藤) (@msshouhinkeikak) 2018年8月27日
正確に言うと「物流・販売をノーリーズで経験した後、グロスターというショップの立上携わり、ノーリーズメンズの立上に携わった」ということだそうだ。
で、マサ佐藤氏もそういうポエムな言説を好む性質ではないから、ブランドコンセプト作りをどうしていたのかと質問してみた。
その返答が秀逸だった。
「難しい言葉を探してきたり、ポエムを書いたりするのは苦手だから『絶対に自ブランドでは扱わない商品』というのを綿密に定めた」
とのことだった。
例えば、オックスフォード生地のボタンダウンシャツは絶対にやらないと設定すると、いろいろなアイテムを企画しても、絶対にアイビーテイストにはならないのだという。
こんな調子で、毎シーズン「禁止アイテム」を念入りに決め続けると、だんだんとブランドのテイストにブレがなくなっていったという。
Gジャンは絶対にやらないとか、ピチピチすぎるTシャツは絶対にやらない、とかそういう感じで「やらないアイテム」を決めていくと、必然的にそのブランドのテイストが固まり、ブレなくなるということになる。
当方もあれこれと存在もしないターゲットを空想してみたり、叙情的な文章やキャッチコピーを考えたりするのは苦手な作業である。
というか苦痛で仕方がない。
20代のころに小説を書いてみようと思い立ったが、架空の登場人物のパーソナリティーや生活パターンなどを考えて何時間も過ごしているのがひどく無駄に思えて作業をやめてしまった。
多分向いてないのだろうということがわかり、今もフィクションを読むのは好きだが、それからはフィクションを書きたいとは思わなくなった。
それと同じで、架空のターゲットのペルソナをあれこれ考えたり、文言をあれこれこねくり回すというのは個人的にはまったくやりたくない作業であり、マサ佐藤氏も恐らく同様の考え方なのではないかと思った。
もちろん、デザイナーの意向が色濃く反映されるデザイナーズブランドは、デザイナー本人がポエム好きならポエムを書き続ければ良いと思う。当方は理解できないけど。
しかし、デザイナーズブランドではない、小規模といえどもアパレルブランドであるなら、やっぱりポエムは避けるべきだと思う。顧客、消費者はそれほどポエムを好んだり、ポエムを理解したりする人は多くないとどうしても自分の嗜好から考えてしまう。
それにこの業界の人を見渡してもそういう言葉作りの作業に向いている人も多くはないような気がする。
それよりはマサ佐藤氏がやった手法の方がはるかにアパレルブランドとしてはわかりやすい作業なのではないかと思う。
小難しいことを考えるより「禁止アイテム」を作ってみてはどうだろうか。
久しぶりに有料NOTEを更新しました~♪
ジーンズメーカーとジーンズショップの変遷と苦戦低迷する理由
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/ne3e4f29b4276
そんな銀色夏生の詩集をどうぞ~