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南充浩 オフィシャルブログ

3足1000円の靴下を作る国内工場が潤っている理由

2018年7月5日 TOP SELLER . STYLE 0

国内の繊維製品製造の苦境を脱するために「高価格・小ロット」生産が提唱されている場合が多い。
1枚当たりの製造費を高くして製造加工業者の収入を多くする。しかし、高価格品は量は売れにくいから、小ロット生産になる。
小ロット生産にするから製造費が高くなる。
こういう仕組みで生き残りを図る製造加工業者は多い。
これはこれで正解なのだろうが、高価格品を売るということになると「売るノウハウ」「販促のノウハウ」が必要になる。
なぜなら、高価格品は黙っていては売れないからだ。
低価格品なら黙っていても売れやすい。なぜなら「値段そのもの」が販促ツールになるからだ。
靴1足1000円で売れば、黙っていても何足かは確実に売れる。
靴1足35000円となると、それなりに売るノウハウが必要で、そこには「高価格品を売ることができる販売員」が必要になる。
こうなると、当方が属している「TOP SELLER . STYLE」の範疇になるので、興味のある人は彼らに直接聞いてもらいたい。
また「その商品がどうして高価格なのか?」という説明も必要だし「高価格でも欲しくさせる」手法も必要になり、これらはすべてプロモーションの範疇になる。
ところが、残念なことに国内の製造加工業者の多くは、高価格品の店頭販売やプロモーションが絶望的に下手くそだ。
ここが国内業者の苦しいところである。
一般的に「高コスト」と信じられている国内の繊維製品の製造加工だが、実は数量さえまとまれば、比較的安値で生産することが可能になる。
例えば、ユニクロにデニム生地を納めているカイハラだ。
数年前にタイ工場を作ったが、それまでカイハラは国内生産のみでユニクロのオーダーに対応していた。
いろいろ厳しいこともあったり、危機もあったりしたと業界裏話では聞くが、数量さえまとまればユニクロ向けのデニム生地製造だって国内でできるという事例である。
また、つい最近では、無印良品から4万メートルの生地の発注が国内某産地にあったといわれるが、4万メートルの数量があれば、国内で生地生産してもコストが抑えられるという事例である。
先日、某SPA型大手靴下ブランドの人とお会いした。
だいたい1足600~2000円くらいが中心価格帯だが、3足1000円という特価品もある。
通常商品はすべて国内生産だが、驚くことに3足1000円の特価品も90%くらいは国内生産なのだという。
3足1000円を国内で製造してコストが合うのかと心配になったが、意外にも3足1000円を担当している国内工場はそれなりに潤っているという。
逆に高価格な通常商品を担当している国内工場はなかなか潤わないらしい。
巷間に流れている情報とは逆である。
その理由を尋ねてみると。
低価格品で1足当たりの利益は薄いが、大量に売れるのでそれなりにまとまった金額になる。
1足あたり100円とかの利益でもそれが1000万円とか500万円くらいになるのをイメージしてもらいたい。
その利益を蓄えて最新鋭の編み機を導入する。
最新鋭の編み機を使うとやっぱり生産の効率が良く、さらに品質も良くなる。
効率良く生産できてしかも品質も良いから、さらに量が売れる。
何せそれで3足1000円だから。
さらに量が売れるから利益がまとまる。
という好循環スパイラルである。
一方、高価格品を担当する国内工場は
1足当たりの単価は高いが、高いから量が売れにくい。量がまとまらないから工場は儲からない。儲からないから設備投資ができずに旧式の編み機を使い続ける。旧式編み機は生産効率が悪い
という悪循環スパイラルに陥っている。
この話を聞いて、一概に「高価格・小ロット生産」が良いことばかりではないということを改めて感じた。
靴下という消耗品だからこそという部分もあるだろうが、他の繊維製品とも通じる部分があるのではないかと思う。
もちろん、嗜好性が高くて傷みにくい商品に関しては、「高価格・小ロット」で乗り切るしかないだろうが、靴下同様に「必ず傷む消耗品」ならやり方次第では「まとまった量」を売ることができる。
まとまった量なら国内で製造しても業者は成り立つ。
靴下の場合、高価格といっても1足1000~2000円くらいで、普通に働いていたら毎月1足くらいは買えるが、それでもやっぱり高価格品をたくさん売ることは難しい。これが万を越える価格の商品ならもっと売ることは難しくなる。
産地ブランドが高価格品を開発することは理解できるが、開発した後にどのように売るか、誰に売ってもらうか、の視点が欠けており、多くの場合「開発しただけ」で終わってしまう。
どんなにストーリーだ、背景だ、歴史だ、職人だ、テクノロジーだ、とカッコイイことを言っていても、高額品は絶対的に量が売れにくい。
バブル期に高い服が飛ぶように売れたというのは、好景気で、カッコイイ低価格衣料品がなかったからだ。
景気が悪くて、カッコイイ低価格衣料品があれば、必ずそちらが売れる。
「大量生産は悪だ」みたいな風潮が一部のイシキタカイ系にはあるが、そういう「モノヅクリ」大好きなイシキタカイ系がシンパシーを勝手に感じている国内の製造加工業者は大量生産の仕組みの上に成り立っており、製造加工業者自体が大量生産者なのである。
なかなか難しいことだが、繊維製品の国内の製造加工業者を救いたければ、即効性があるのは「大量生産」させてやることである。
やはり、「数は力」なのである。

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トウキョウベースの香港店は活況なのか?売上高から入店客数を類推してみた
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n78d0021044a2
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