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南充浩 オフィシャルブログ

アパレルを蝕む「前年実績主義」

2011年8月3日 未分類 0

さて、8月が始まった。
これで、今夏のセールは開始から1ヶ月半を終えた。残すところまだ2~3週間は裕にある。先は長い。

6月16日から始まり、7月に再値下げされ、おそらく今月もう一度再々値下げされる。
洋服の値段は待てば待つほど安くなる。

例えば、ライトオンにボートネックのボーダー半袖Tシャツがある。
がっしりとした厚手の生地が使われており、定価でも非常にバリューがあると思う。
これの定価は2900円である。7月には1900円に値下がりした。
8月1日時点では1490円にさらに値下がりしている。8月末以降はいくらにまで値下がりするのだろうか。
最終的には990円にまで値下がりするのではないかと推測している。

こうなると、定価で買うのがバカらしくなる。

これから秋物が立ち上がるが、来年1月のセールを待たずに遠からず中間セールを行うだろう。また12月には多くのブランドが「プレセール」を行うはずである。

先日、日経ビジネスに以下のような記事が掲載された。

もう「通常価格」が信じられない
セールの乱発で消費者が離れるアパレル業界

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20110726/221684/?ST=nbmag

日経ビジネスの記者さんの感想が随所に盛り込まれており、
一般消費者に近い意見として非常に参考になる。一部を以下に引用する。

セールの多発化や早期化は、本当に消費者の購買意欲をかき立てるのだろうか。

 一消費者の立場で見ると、「こんなにセールが多いなら、今慌てて買う必要はない。もう少し安くなってから買おう」と感じてしまうし、何より通常価格に対する信頼を失う。
(中略)

 しかしその結果、通常価格で売られる期間が数日しかない商品もあるという。うがった見方をすれば、通常価格はもはや、まやかしの価格とも言えるのではないだろうか。

 低迷する衣料品業界にあって、セールがカンフル剤となることは十分に理解できる。しかし回数が増えすぎれば、それはもはやカンフル剤としての役割を果たさなくなる。

 セールによって来店客数や売り上げ点数こそ増えるが、単品当たりの単価は下がり、利益率も減る。そして消費者には通常価格への根深い不信感と、セールを前提とした新たな「適正価格」がすり込まれていく――。

 セールの乱発による消耗戦を続けることは、売る側にとっても、買う側にとっても決してメリットにはならない。

 ならば、一度ゆるめた蛇口は再び閉め直すべきである。売上高が前年実績を割ったとしても、歯を食いしばってセールという麻薬を絶つ。そしてセール以外の知恵で、消費者の買い物意欲をかき立てる。

とのことである。

至極正論ではないかと思う。

セールという麻薬を絶つには、各アパレル企業、各小売企業にはびこる「前年実績主義」を完全撤廃しなくてはならない。それはほぼ不可能に近いのではないだろうか。
各企業とも年間計画のベースは「前年実績準拠」だし、人材への評価基準もすべて「前年実績を更新したかどうか」である。
今夏の異例に早かったセールについて「非常事態への対応だから常態化しない」とのご意見を見かけることがあるが、これは甘いと思う。6月16日にセールがスタートして、その実績が残っている以上、間違いなく来年6月の事業計画は今年の「実績」を踏まえて制定される。
セールなしで、来年の6月に、今年の6月実績を越えるような販促ができるブランドがどれほどあるだろうか。おそらくほとんど存在しない。

ただ、業界を挙げて対応しないと、日本のアパレルは後がない状況にまで追い込まれていることも事実である。

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