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南充浩 オフィシャルブログ

EC化比率の高低だけで論じる愚

2017年9月28日 ネット通販 0

アパレル業界には「感覚派」の人が多いから、数字を踏まえずに「感覚」だけで物事を提案し決定していくというケースが多い。
アパレル業界にはコンサルタントもやたらめったらと数多く存在するが、アパレル業界出身者なので基本的にコンサルタント自体が「感覚派」であることが多い。
きちんとした数値に基づいて論ずるコンサルタントは数えるほどしかいないというのが、個人的な体感である。
経営者もコンサルタントも現場もみな「感覚」だけでワーワー言っているというのが、アパレル業界でよく見かける日常的風景である。
最近、ECへの注目が業界では異様に高い。
勝ち馬に乗りたがるというアパレル業界独特の性格も手伝って、わずかでも「好調」という噂を聞くと、雪崩を打ったように同一方向へ走るのがアパレル業界のこれまた日常的風景である。
そんな調子でよくも9兆円という市場規模を維持できていると感心するほかない。
それはさておき。
そんなわけで、EC、ネット通販への注目は過剰に高まっているが、それを論ずる際にも「感覚」のみの人がなんと多いことか。
アパレル業界、それを取り巻くメディアにも、「ユニクロはEC化比率が低いことが弱点だ」と本気で信じている人が多い。
驚きあきれるほかない。
先日、2016年度のEC売上高ランキングが発表されたから、それを見てみたい。
【2017年版】EC売上高ランキングまとめ――1位Amazon、2位ヨドバシ、3位千趣会
https://netshop.impress.co.jp/node/4751
である。
衣料品に絞って見てみると、上位30位の中に入っているのは、スタートトゥデイとユニクロ、丸井グループの3社のみである。
千趣会、ディノス・セシール、ニッセン、ジュピターショップチャンネル、QVCなんかは「総合」に分類されているが、衣料品の売上高も相当数あるので、「衣料品部門」と考えても良いかもしれないが、純然たる「衣料品」はわずか3社である。
スタートトゥデイは、いわゆるECモールなので、単独ブランドではない。
丸井グループも同様に単独ブランドではないし、衣料品以外も販売されている。
純然たる衣料品の単一ブランドでランクインしているのは、ユニクロのみである。
多ブランド化しているユナイテッドアローズやらアーバンリサーチやらも有名企業もランクインしていない。
そしてユニクロのEC売上高は421億円もある。
アパレル業界としては、EC売上高1位は今もユニクロなのである。
ユニクロはEC売上高だけでシップス全社の売上高の約1・5倍もあるということである。
この純然たる「金額」を無視して「EC化率」の高低のみでEC戦略を論ずることのなんと愚かしいことか。
先日から炎上騒動で賑わせているトウキョウベースは、EC化率が30%強あり、業界では「すごい」「優秀だ」と言われているが、EC売上高は30億円程度しかない。
この「絶対額」を無視して、「ユニクロはEC化率が低いから負け組で、トウキョウベースは勝ち組だ」などという論調が業界には公然とあるが、売上高420億円と30億円を同列に論じて比率だけで優劣を決めるのは果たして、的確な分析といえるだろうか。
商品単価がトウキョウベースの10分の1くらいのユニクロが、ECでは14倍も多く売っているということはどういうことか冷静に考えてみてはどうか。
すさまじい客数がユニクロのECを利用しているということになる。
ここを踏まえて議論をしないと間違った施策を行ってしまう。
このことに対して先日こんな記事も掲載され、他業界はやはりアパレル業界より数段進んでおり、数段論理的だと感心した。
メガネスーパーが「EC関与売上」をKPIに設定し、決算短信で公開した理由

https://netshop.impress.co.jp/node/4734
この中に、こういう一節がある。

一方で、消費者の買い物行動が実店舗や複数のECサイトといったチャネル横断型になるなど、「単純にEC化率の向上を追っていくことがナンセンスになってきた」(川添氏)ことも背景にあるという。

その「ナンセンス」なことを金科玉条のように振りかざしているのが、アパレル業界であり、周回遅れも甚だしい。
そして、その手の胡散臭いコンサルタントの食い物にされてしまうのである。
そういえば、先日、チラッと伺った小規模ブランドがあるが、そのブランドがこの時期になぜか楽天に注力をし始め、それがいわゆるコンサルっぽい人のサジェスチョンだと聞いて、ちょっと驚いてしまった。
楽天は凋落傾向にあり、現在それなりの売上高があるブランド以外、要するに売れてないブランドは撤退する事例が増えている。
産地の中にもオリジナル品を楽天に出店している企業も珍しくないが売れ行きが悪い企業は軒並み撤退を検討している。
そんな状況下でなぜ楽天への注力をコンサルが指示するのか、まったくわからない。
しかもそのブランドが楽天で売れているならまだしも、あまり売れていないのだから楽天にこだわる意味もない。
こういうコンサルが闊歩しているから気を付けなくてはならない。
もはや、「感覚」だけで乗り切れる時代ではなくなっており、感覚のみに頼る人も企業もブランドも生き残ることは難しくなる一方である。
NOTEを更新しました⇓
「原価率50%」商法はナンセンスでしかない
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/nf12f449b36a1

あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/


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