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南充浩 オフィシャルブログ

ライザップによる買収はジーンズメイトにとって朗報

2017年1月17日 企業研究 0

 ジーンズメイトがライザップグループに買収されることが発表となった。

RIZAPグループがジーンズメイト買収 V字回復へコミット
https://www.wwdjapan.com/369411


ジーンズメイト側にとっては良い買収になるのではないかと思う。

というのも記事中にも書かれているように

ジーンズメイトは16年11月末現在、全国で94店舗を運営。17年2月期の業績は、売上高95億8000万円、営業損益は3億5000万円の赤字を見込む。09年2月期に最終赤字、10年2月期には営業赤字に転落しており、15年2月期を除き、営業赤字が継続している。

単独での改革は難しく、抜本的な経営改革が喫緊の課題だとして、昨年9月下旬から他社との資本業務提携を含めたさまざまな選択肢を検討してきた。

とある。

全国チェーン店とは言いながらも、売上高は100億円を割り込むまでに落ち込み、営業赤字が続いている。
営業赤字ということは、本業が不振であるということである。

正直なところ、外野から見ていて創業家主導による改革では好転しないことははっきりした。
長年経営立て直しに取り組んだ結果が、好転どころか大幅減収営業赤字なら、それはもう創業家の手法での経営立て直しは無理だという証拠である。

手法が通用しない創業家がこれ以上、経営立て直しに取り組むよりは外部の主導に切り替えた方がまだ経営が好転する可能性が高いだろう。
これが外部の見立てである。

しかし、個人的にはジーンズメイトの施策や店作り、品ぞろえが急激に変わるようなことはないと考えている。また経営状態も急激に回復はしないだろうと見ている。
なぜなら、夢展望は買収前と買収後にあまり変わっていないからだ。
業績もV字回復はしていないし、株価は下がり続けている。
上場当初は5000円くらいあった株価が昨日の時点では500円を大きく割り込んでおり、ピーク時の10分の1以下になっている。

ライザップグループは夢展望、ジーンズメイトのほかに、三鈴や馬里邑、アンティローザ、イデアインターナショナル、パスポートなどを次々に買収してきたが、そのいずれの企業も大きな変化を見せていない。

ということは、ジーンズメイトも短期間のうちに激変したりV字回復したりということはちょっと考えにくい。

個人的にはライザップの買収した企業がすべてテイストもターゲットもバラバラすぎて、何を狙っているのかが外部からではまったく見えない。
各社同士に関連性が薄すぎてシナジー効果は発揮しにくいのではないかと思う。

ライザップは一体何を目指しているのだろうか。

ところで、ジーンズメイトの商品自体は悪くない。
もちろん、かつての出身である「安物屋」丸出しのチープな商品もゼロではないが、全般的に品ぞろえはそれほど悪くはない。
メンズのプライベートブランド「ブルースタンダード」の出来も悪くはないし、価格も高すぎるとは思わない。

それではどうして回復しないのか。

一つは、本業である「ジーンズメイト」の店作りとターゲット設定、それから店に持たれているイメージではないかと思う。

かつて、東京都内の学生向けショップだったジーンズメイトは、今でもその当時を彷彿とさせる店作り、陳列を続けている。もしかしたら内部では「変わった」と思っているのかもしれないが、外部からみると「ほとんど変わっていない」ように見える。

実際、ジーンズメイトに入店する客を見ていても中高生がほとんどでたまに大学生という感じである。

30代以上の男女はまず入店しないし、入店がある場合は中高生の子供さんを連れて、子供さんの服を買うために入店している。

世間のイメージはいまも変わらず「学生の店」なのである。

一方、プライベートブランドの「ブルースタンダード」は37・5歳の大人服をコンセプトに掲げているが、学生向けのジーンズメイトに並んでいる限りは、誰からも選ばれない服になってしまっている。

メイン顧客の学生からすれば「オッサンくさい」し、オッサン世代はジーンズメイトでは買わない。

だから、せっかくの商品がいつも投げ売りされてしまうのである。
その投げ売り品を筆者が買っているという構図である。

投げ売りが増えると利益を圧迫して営業利益額が減る。
営業赤字の一端は、値引き販売の乱発による利益額の減少にもある。

ジーンズメイト側もこのミスマッチには気が付いていて、ブルースタンダードだけの店も出店したが、知名度の低い新ブランド店がそう簡単に売れるはずもない。
結局、店舗数はあまり増えていない。

これはタラレバで、経営者としては大きな決断になりなかなか踏ん切りがつかないのだが、もし、仮にブルースタンダードの店を一気に10店舗ほど出していたらどうだっただろうか?
スケールメリットもできて、企画製造にはプラスに働いただろう。
一方、店が軌道に乗るまでは時間がかかるので、ここで失敗してしまう可能性もあるが、これまでやってきたように散発的に1店舗か2店舗出店し、2年くらい細々と運営して閉店するということを繰り返しているのは、「兵力の逐次投入」であり、これは戦争でいえば、各個撃破されやすいということになる。

小兵力を小出しに戦場に投入すれば、その都度殲滅させられる可能性が高く、投入した人員も資材も逆に無駄になってしまう。

一気に10店舗を出店するのは多大な費用と人材が必要になるから、経営者としては躊躇してしまう気持ちは十分に理解できるが、兵力の逐次投入の方が、結果的には無駄になってしまうことが珍しくない。

そんなわけで、今回の買収はジーンズメイトにとっては良かったと思うが、ジーンズメイトが短期間で激変することはなさそうだ。
今回の買収がどのようにジーンズメイトにとってプラスに作用するのかを引き続き外野から観察したいと思う。




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