工業製品である既製服は売れてなんぼ
2016年6月9日 ファッション専門学校 0
ファッション専門学校生と接触する機会があるのだが、結構な割合で「売上高」とか「粗利益」とかそういうビジネスの話を嫌がる学生が多い。もちろん例外もある。
多くのファッション専門学校はデザイン科とビジネス科の2つに分かれている場合が多い。
デザイナーやパタンナーを目指すならデザイン科、
販売員や営業マンを目指すならビジネス科、
というのが大雑把な分け方になる。
バイヤーやマーチャンダイザーを目指したいという人もいるが、新卒入社からすぐにそんな職種につける企業などない。もしどうしてもやりたければ自分で店を構えるしかない。
だから、「マーチャンダイザー養成」「バイヤー養成」なんてうたっているファッション専門学校がもしあるなら、著しく虚偽に近いといえる。
それはさておき。
デザイン科志望の学生がビジネス論を嫌うのはわからないでもない。
作るのが好きで入学しているからそう考えるのも仕方がない。
が、入社してからはけっこう売上高と利益は常に考えねばならないし、将来的に独立するなら不可欠になるが、学生の時点でそれを感じられないのは不思議ではない。
人間は実際にその立場に立ってみないと実感できないことが多くある。
しかし、ビジネス科に進んでいる学生がビジネス論を嫌がるのはちょっと認識不足ではないか。
彼、彼女らの多くは販売員になってしまうが、販売員だって日々の売上高は求められるし、店舗で商品を値引きする際にもどれくらいの利益を残すかによって値引き率が変わる。
かわいいお洋服を売っておしまいなんてそんなお気楽な仕事は世の中には存在しない。
もし、店長とか責任ある立場になれば、店舗の売上高と照らし合わせてアルバイト、パートの人件費をどれくらいまでなら許容できるかを考えねばならないし、それによって雇えるアルバイト、パートの人数が限られてくる。
売上高をはるかに越える人件費を計上して多人数のアルバイト、パートを雇用してしまえば、その店は本部から閉鎖させられてしまう。
店を運営する(経営ではなく)ということはそういう計数管理がついてまわることになる。
そういうことが嫌なのなら、本来は販売員を目指すべきではない。
結局のところ、ファッション専門学校に進学する多くの学生はあまり学力が高くない。
学力が高くない学生はそういう「売上高」とか「利益」に関する話に対して異様に忌避する。
ファッション業界が斜陽な理由は集まってくる人材の質が低いからという側面がある。
そういう質の低い学生を集めてしまうファッション専門学校側にも問題がある。
学校が「ファッションの楽しさ」を前面に打ち出して学生を集めるのはどうかと思う。たしかに楽しい部分もあるがそれだけではない。
結局のところ、洋服という工業製品を売ってお金に換えるのが仕事である。
どんなにアーティスティックなスタンスで洋服を作ったとしても最終的にはそれが売れなくてはブランド活動は続けられない。
絵画や彫刻などアートといわれる分野でさえ、どうにかしてお金に換えないと創作活動そのものが続けられない。もしくはパトロンやスポンサーから金をもらうかである。
となると、今度はパトロンやスポンサーを探すという営業活動が求められる。
アーティストとして活動するにしても営業活動は不可欠ということになる。
ましてや、アートではない工業製品たる既製服なんて売れて利益が得られてナンボである。
その売り上げ規模設定は各社・各ブランドによって異なる。1兆円売りたいというブランドもあれば、5億円で十分というブランドもある。
しかし、いくら小規模ブランドとはいえ、例えば2億円の売上高は最低でも必要だったりする。
その中から原価と経費を引いた利益をスタッフで再配分するから、最低限の利益額も求められる。
その活動が嫌だとか難しくて理解できないとかいうのであれば、この業界に入ってくるべきではないだろう。
早めに結婚して専業主婦をやりながら趣味の範囲で洋服を作って、それをたまにネットで販売してお小遣いに換える。そんな生活をおすすめする。