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南充浩 オフィシャルブログ

ブランド頼みの小規模専門店は確実に消える

2016年4月14日 考察 0

 その昔、といっても10年ぐらい前までは「このブランドを並べていたら確実に売れる」という鉄板ブランドがあった。今もいくつかはそういうブランドは残っているが、かなり少なくなった。
多くの小売店はそういうブランドに今も頼ろうとしている。
たしかに衣料品不振だし、トレンドはあまり変わらないから売る側として何かに縋りたくなる気持ちもわかる。

しかし、そういう「鉄板ブランド」は今後ますます減るだろう。
とくに小規模な小売店はそういうブランド頼みの姿勢では市場から完全に淘汰されてしまうのではないか。

先日、心斎橋筋商店街をブラっとしているときに、ふと「スピンズ」の店の前を通った。
スピンズはヤング向けの低価格カジュアルSPAで、全国に20店舗強を展開している。
テイストとターゲット、中心価格帯はウィゴーと近い。
一説にはウィゴーと激しい競争を繰り広げているといわれているが、企業規模でいえばウィゴーの方がはるかに大きい。ウィゴーは売上高200億円を突破している。

それはさておき。

これまでスピンズの店頭で「有名ブランド」を押していることはあまりなかったが、今春はこれまでと異なる打ち出しに着手したようだ。
店頭で「ナイキ」「ニューバランス」「ラルフローレン」などを大々的に打ち出していたのである。

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これには驚いた。
なぜなら、昨年くらいから「しまむらでラルフローレンのリュックが販売されている」と話題になったからだ。

出会えたら超ラッキー!?しまむらの一部店舗でラルフローレンの商品を販売中
http://spotlight-media.jp/article/142264526251662714

人気ブランド「ラルフローレン」のアイテムはこれまで、並行輸入もある程度厳しく取り締まられ、百貨店や専門店以外の低価格店で見ることはあまりなかった。
90年代後半まではけっこう某ジーンズチェーン店で3900円で売られていたりしたが、コピー商品だったことが露見したりして、その当時は大きな話題となった。
某報道特集番組でも取り上げられたほどである。

それ以降は低価格店での扱いはあまり見かけなかったが、それが変わりつつあるということだろうか。

しかし、低価格店でも「ラルフローレン」を扱い始めたということは、大規模な直営店やオンリーショップはまだしも、小規模な専門店では売れにくくなるということである。

「ラルフローレン」に限らず、ブランド頼みの小規模専門店はますます苦戦することになるだろう。

かつて一世を風靡した「エヴィスジーンズ」も昨年夏からライトオンでの取り扱いを始めている。
価格は12000~13000円くらいなので本体よりも少し割安感がある。
オランダのブランド「Gスター」だって今ではライトオンで販売されている。

小規模な専門店が「うちはGスター扱ってるんですよ」なんて自慢気に口にしたところで、同じ物はライトオンでだって買えてしまうのである。

そういえば、素材ブランド「ハリスツイード」だってしまむらで買えてしまう。
しまむらが「ハリスツイード」と正式契約したため、あのラベルの付いた商品がしまむらにも並んでいる。

【2015年も】しまむら×ハリス・ツイードがコラボで話題沸騰継続中ッ!
http://matome.naver.jp/odai/2141483259539713401

もちろん、素材感とかデザインとか細かい点は異なるが、一般消費者からすると同じ「ハリスツイード」の商品である。
現に「しまむらなら2000円で買えるのにお宅の仕入れているハリスツイードはなぜこんなに高いの?」と言われた雑貨関係者もいる。

これからは「ハリスツイードです」というだけでは高値で売れなくなるということである。
なぜなら、しまむらでも売っているから。

これを指して「ブランド側が堕落した」とは思わない。
ブランド側もビジネスを展開しており、とくに欧米ブランドは利潤追求と拡大再生産に貪欲だ。
日本ブランドの方がそのあたりはお人よしではないかと思う。

今まで通りのルートで販売し続けても売上高の伸びは知れている。
もう十分に知名度のあるブランドならなおさら伸びしろは少ない。
もう知れ渡った結果が今の売上高なのだから、欲しい人はすでに買っているし、今買っていない人はそのブランドを欲しいと思っていない人である。

じゃあ売上高を拡大するためにはどうすれば良いか。
手っ取り早いのは、これまで販売していなかったルートで販売することである。
それは低価格ゾーンである。
低価格ゾーンには大資本の大手チェーンが多い。大手チェーンだから1社と取り組むだけで莫大な店舗数で展開することが可能になる。

ちまちました5店舗や7店舗の専門店とはわけが違う。
一気に何十店・何百店での展開が可能だ。
その分売上高は増えやすい。

ブランド側がそう考えるのは至極当然だろう。
とくに海外ブランドがそう考えたとしても何の不思議もない。

逆に低価格ゾーンの大手チェーン店からすると、自店のステイタス性を上げるためにも有名ブランドとの取り組みは大歓迎である。
かくして両者の利害は一致する。

今後もこういうコラボ、取り組みはますます増えるだろう。

今、ブランド頼みの小規模専門店はますます追い詰められる。
「うちは〇〇ブランドがあるんですよ」なんていうのがセールストークでもなんでもなくなるのはそう遠いことではあるまい。

その自慢の〇〇ブランドが低価格チェーン店とコラボしたり、低価格チェーン店での取り扱いを早晩開始するだろうからだ。

じゃあどうするのか。
小規模専門店は何を消費者に提供するのか。
もうその答えを見つけて実践しておられる小規模専門店もあるが、展示会などで様子を見ているとそういう先はまだまだ少数派だ。

ブランド頼みの小規模専門店の方が多数派だと感じる。
その多数派は5年後、10年後には存続できていないだろう。

小規模専門店にとってもブランド頼みの手法から脱却する最後のチャンスではないかと思う。





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