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南充浩 オフィシャルブログ

デザインの足し過ぎにはご注意を

2016年4月13日 考察 0

 先日、久しぶりにあるカジュアルアパレルの展示会を訪問した。

最近の商況を伺うと「要望を取り入れて商品のデザインをシンプルにしたら、シンプルにしすぎで特徴がわかりにくくなったという声が多かった。どうすれば良いのか?」と嘆き節だった。

もともとブランドロゴの刺繍やらワッペンやらビビッドな配色やらを得意としていたアパレルなので、それに対して昨今のトレンドを鑑み、いくつかの小売店から「デザインをシンプルにしてみては?」という意見があったそうだ。
シンプルにしたらシンプルにしたで「デザインに特徴がなくなった」と言われれば、メーカー側とすれば「どないせえっちゅうねん!」というところだろう。

で、そのまま話を伺い続けたのだが、ふとあることに気が付いた。

例えばチェック柄のネルシャツなのだが、

「昨年商品は、明るくビビッドな配色で、切り替えのデザインがあってブランドネームの刺繍かワッペンを付けていた」という。

今シーズンはベーシックな配色で切り替えもワッペンもない普通のデザインである。

賢明な読者はお気づきになったのではないか。
昨年商品はデザインポイントが盛り込まれすぎではないか。

1、ビビッドな色彩
2、切り替えデザイン
3、刺繍かワッペン

である。

デザインポイントが3つもある。

逆に今年の商品はデザインポイントがない。

無地のスエットトレーナーやベーシックなチェック柄ネルシャツなら、別にわざわざそこまで知名度の高くない中小ブランドで仕入れる理由がない。
無地スエットならチャンピオンあたりのブランドを仕入れた方がネームバリューもあるし消費者も食いつきやすい。

消費者としてもベーシックなチェック柄ネルシャツならユニクロとか無印良品とかライトオンとかジーンズメイトあたりで3000円くらいで買える。
それ以上の価格の商品をわざわざ買う理由がない。
よほどブランドの知名度がない限りは。

逆に昨年の商品はデザイン過剰と言わねばなるまい。

デザイン過剰の「コテコテ」商品を日本人はあまり好まない。
かつてそれなりにブームとなったレッドペッパーのジーンズを愛用する人は今では少ない。
激しい洗い加工に刺繍に切り替えとまさに「コテコテ」のデザインである。
何事に対しても「盛り盛り」が好きな韓国らしいデザインだと思うが、カッコイイとは思わない。

コテコテを好むコアなファンは存在するが、コア層以外には今後も広まらないだろう。
それと同じである。

このメーカーはデザインポイントを1つ、最大でも2つくらいに絞ってみてはどうか?

例えば「切り替えだけ」とか「ワッペンだけ」とか。
または「ビビッドな色彩とワッペン」とか。

一口に商品デザインというが、実際のところ作業としてはこういう「アレンジメント」が主体になる。
そのアレンジメント如何によって商品の見え方は大きく左右される。

デザインポイントが何もないなら、ユニクロとか無印良品に負けてしまう。
デザインポイントが3つもあるのはデザイン過剰で通常のカジュアルショップでは扱いづらい。

ベーシックな中に程よいデザインポイントがあるというのが理想ということになる。

言うは易く行うは難しで、当事者になるとどのデザインを引くのかはけっこう頭を悩ませるところである。

しかし、この観点をどこかに留めておくのと、まったく何も考えずに「盛り盛り」のデザインを施すのとではいずれ商品の見え方が大きく異なるのではないかと思う。

「盛りすぎない」ことを意識すればこのメーカーの商品の見え方は今後好転するのではないか。




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