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南充浩 オフィシャルブログ

国内デザイナーズブランドは独力でビジネスを拡大するしかない

2015年11月10日 デザイナー 0

 筆者は普段、いわゆるコレクションブランドとは何の関係もない生活を送っている。
もちろん、それらを買うこともない。価格が高いからだ。

それでも一応、毎シーズンのウェブニュースでの報道くらいはざっと流し読みする。
正直なところ発表された物自体にはさほど興味はない。

今回のパリコレブランドでもデザイナーが解任されたとか、他ブランドに移籍したとかそんなニュースがあった。

好き嫌いは別にして、一応、18年くらい国内でデビューした独立系デザイナーを断続的に見ている。
もちろんすべてに目は届かないし、物理的に届かせることは不可能なので網羅しようとはこれっぽっちも思わない。

数年くらい前から国内の独立系デザイナーはどうなることがゴールなのだろうと考え続けている。

パリコレ、ミラノコレ、ニューヨークコレなどのコレクションブランドは、定期的にトップデザイナーやらディレクターやらプロデューサーを変える。

外野の人間からすると、大手コレクションブランドと契約することが、欧米の独立系デザイナーの一先ずのゴールなのではないかと感じている。
もちろん、本当の意味での終着点ではない。
大手コレクションブランドと契約することで実績ができ、そこからさらに彼らのビジネスは広がる場合が多い。

ゴールというよりは、登竜門とか通過点とでも言った方が良いのだろうか。

ところが日本ではこういうゴールは存在しない。

エルメスやらルイヴィトンに匹敵するようなラグジュアリーブランドは国内には存在しない。
そういうビッグブランドと契約することですさまじい年棒をもらい、その実績をもって、契約終了後さらにビジネスを広げるというルートが国内にはない。

せめて大手アパレルがそういうデザイナーを迎え入れてブランド開発でもすれば良いのだが、過去に何度かそういう事例はあったがいずれもほとんど成功していないし、そもそもそういう事例自体が少ない。

先日、東京に行った際に、たまたま展示会を開催していた若いデザイナーを訪問した。
若いといってもデビューしてからそれなりに年数は経っているし、それなりの知名度もある。

その彼も「国内では、独立系デザイナーと契約するような大手企業はありませんよ。そこが厳しいところです」と話しており、部外者の筆者が感じていたことはあながち間違ってはいなかったのだと一安心した次第である。

昨今、サカイの成功が伝えられている。
カタカナ表記をすると何だか、「引っ越しのサカイ」みたいになってしまうので、Sacaiと表記した方が分かりやすいのだろうか。

また、ミナペルホネンの成功もある。

両ブランドは例外的といえるが、共通するのは独力でビジネスを拡大したことにある。

結論としていうなら、現在の国内では、独立系デザイナーは独力でなんとかビジネスを拡大するほかないということである。
ビジネスを拡大すれば格段に取り上げる媒体数が増え、知名度は飛躍的に高まる。

サカイだって知名度が高まりつつあるのは、ビジネスの成功が伝えられた以降だろう。
もちろん、以前から注目していた人たちは業界内にはいたが、それは業界内のさらに好事家に限定されていたといえる。
酷くシビアに言えば、今だって、広く一般大衆に知られているかどうかは疑問だ。
そういえば、つい先日の業界新聞に「今のファッション専門学校生はサカイを知らない」というコラムが掲載されていたから、知名度で言えばその程度だといえる。

しかし、ビジネスを拡大すると言ったところで、独力で50億円とか100億円規模にまで拡大するのはかなり難しい。しかも販売している商品の価格が高い上に分かりにくいし、敷居も高い。

以前にスナイデルの模倣で逮捕された人が運営にかかわっていたGRLは瞬く間に70億円の売上高を計上していたが、あれは900~1900円までの格安商品を大量に販売していたためで、それでも短期間にそこまで売上高を増やすのは大した手腕だといわねばならないが、敷居も低くて売り易いことは間違いない。

集客さえ上手くできれば急速に売上高を拡大することは困難ではない。

高くて分かりにくくて、なんだか敷居の高い雰囲気を醸し出しているコレクションブランドを大量販売するよりは難易度は低い。

そういう状況下でビジネスを拡大した2ブランドは大したものだが、他ブランドが簡単に同じルートをたどれるはずもない。やはり狭き門なのである。

となると、独立系デザイナーはどうするかである。
いくら「それほど多くの売上高は必要ない」と言っても最低限度は必要だろうし、どこかの時期で引退もしなくてはならない。40歳のころと同じペースで永遠に働きつづけられれば良いが、それは不可能である。

必ず老いる。老いたら若いころのようには働けなくなるし、いずれ人は絶対に死ぬ。

70歳とか75歳とかである程度は仕事量をセーブしなくてはならない。
その老後資金も必要である。

となると、最低限度のビジネス拡大は必要であり、それを目指すべきであろう。

東京コレクションに出展しないとしても年間売上高1億円以上には成長せねばならないだろう。

ただ、そういう状況を考えたとき、我が国の独立系デザイナーは厳しい状況に置かれていると改めて感じた。
だから、政府や経産省や行政が支援すべきだとは全然思わないのだけど。

Sacai: A to Z
Chitose Abe
Rizzoli
2015-04-21




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