大型合同展示会が盛り上がらない理由
2015年11月9日 考察 0
アパレル業界では大型合同展示会に陰りが見え始めていると感じる。
10年間もやっていればだいたい出展側もマンネリ化してくるし、来場者も大きくは変わらない。
本来の来場者は仕入れを行う小売店だが、今の業界で、新しい「有力小売店」などそう簡単には生まれない。
長らく某合同展示会に出展しているブランドがあるが、彼らによると「来場する小型専門店の顔ぶれも変わらなくなってきたし、毎回新規店2つか3つと契約できるが、その分、同じくらいの数の店舗との取引もなくなる。差引トントンという場合が多い」という。
大手小売店は有力セレクトショップをはじめとして自社製品化比率を高めている。
新規でわざわざ仕入れる必要がない。
大手セレクトショップに発掘されてブランドがスターダムにのし上がるなんていうのは、バブル期とともに終わった神話の類である。
小型専門店は資金力がないから思い切った仕入れができない。
また、消費不振の状況下に晒されているため、他店で実績のあったブランドを少量だけ仕入れたがる。
なるべく在庫リスクを冒したくないという安全志向に裏打ちされているといえる。
しかし、実績のあったブランドは少量しか仕入れないような小型専門店とわざわざ新規で取引はしない。
そんなことをせずとも大手小売店と取引できる可能性が高いし、何なら知名度を利用して直営店戦略に切り替えても成功する可能性が高い。
一方で、そういう小型専門店ほど「希少性の高い」ブランドを仕入れたがる。
要するにブランド頼みの販売姿勢の表れである。
希少性の高いブランドとはどんなブランドかというと、国内でいえば創業間もないブランドである。
たしかにほとんど出回っていないのだから希少性は高い。
ブランド側からすれば少量しか仕入れない小型専門店でもデビュー戦としてはうってつけである。
ここまではwinwinの関係といえるが、数年後には袂を分かたざるを得ない。
なぜなら、数年後にはブランドは少し成長するからだ。
当然、取引先店舗も何店舗か増えている。
そのため、希少性は少し薄れる。
ブランド頼みの小型専門店はここが気に入らない。
希少性が薄れているから、また新たな希少性の高いブランドを探す。
要するに、またデビュー間もないブランドに乗り換えるわけである。
これの繰り返しに終始するから、いわばデビューブランドの使い捨てである。
もちろん例外はあるにせよ、そういう小型専門店も多いから、ブランド側も売上高を大きく伸ばすことは不可能である。
大型合同展示会が陰る理由の一つにはこういう業界の風潮がある。
小型専門店にはブランド頼みの風潮が強すぎるのではないかと危惧する。
「人気ブランドを並べたから買ってくださいよ」
「希少性の高いブランドを並べたから買ってくださいよ」
こんな姿勢で服が売れたのはバブル期までだろう。
バブル崩壊後、とくに2000年以降はこんな姿勢では絶対に服は売れない。
今はネット通販も発達している。
ネット通販市場としてはまだまだ成長できるだろうが、かなりプレイヤーも増えている。
値段やブランドだけで探すならいくらでも消費者に有利なサイトを探すことができる。
余談だが、2年ほど前に防水機能のあるコンバースのスニーカーをネット通販で買った。
靴は試着してからでないと買わない主義だったが、欲しいモデルがABCマートにもSTEPにも売ってなかったので試着せずにぶっつけ本番でネット通販で買った。
レビューを読んだり手持ちのスニーカーから類推したりして、さんざん考慮した結果、幸いにもピッタリのサイズを買うことができた。
買値は4600円である。
いろいろと検索して見比べた結果、ここが最安値だった。
たしか新潟のネットショップだったと思うが、利用したのはこの1度きりだ。
定価はおそらく1万円前後、多くのネットショップが6800~7200円で販売していた。
このネットショップが送料を入れてもダントツに安かった。
こういう買い方がいくらでもできるということである。
こういう状況下にあって小売店が「価格」か「ブランド」かしか売り物がないのであれば、選ばれないということである。
たとえ希少性の高いブランドでもいくらでも低価格品はネットで探せる。
その「物だけ」が欲しいのであれば、ネットで探した低価格品を買えば済んでしまう。
別に貴方のお店なんて必要ではないのである。
ブランド頼みの小売店は消費者にこういう扱われ方をするということである。
じゃあ、どうすれば良いのか。
それは自分で考えてみてほしい。
ワークショップを開催する店もある。
パーティーやお茶会を開催する店もある。
新作が入荷したら試着会を開催する店もある。
バンドを呼んできてライブをする店もある。
そういう努力をせずに、希少性の高いブランドだけに頼っているなら、そんな小売店は早晩退場せざるを得なくなる。
少し話は逸れるが、合同展示会の衰退はこういう小売店側だけの責任ではない。
出展する側も年々有力ブランドが減っている。
なぜなら彼らは自社での直営店出店を強化しているからだ。
有力ブランドになればなるほど、すでに大手との取引はある程度できているし、直営店出店を強化する。
わざわざ幾ばくかの料金を支払って合同展示会に出展する理由がこれっぽっちもない。
必然的に、合同展示会の出展者は、小型ブランドかOEM受注狙いの企業に限られてくる。
酷い場合はOEM屋の展示会みたいになってしまう場合もある。
あとは地場産品に力を入れすぎた結果、展示会が地場産フェアみたいになってしまうことも最近は見受けられる。
こういう環境を考えたときに、合同展示会自体が不要だとは思わないが、大規模な合同展示会がお祭りのように賑わうという光景は過去の物になったと考えた方が適切だろうし、かつてのような盛り上がりは今後も永遠に戻ってこないと見るべきではないか。