MENU

南充浩 オフィシャルブログ

生地・縫製・副資材すべての段階で国内生産キャパ不足が顕在化してきたという話

2026年4月6日 製造加工業 0

海外ニュースを扱う媒体なのに珍しいな、と思ったのがこの記事。

 

ショー活況の裏で「もう作れない生地がある」 国内生産の空洞化に デザイナー 苦渋の対応 | DIGIDAY[日本版]

  • 楽天FW東京は盛況だった一方で、国内生産のキャパ不足により納期遅延リスクが顕在化し、3月開催の限界が見え始めている。
  • 生地や副資材の調達難、職人不足、工場減少など構造的課題が深刻化し、デザイナーは前倒しや代替素材で対応している。
  • 国内生産の縮小懸念が高まるなか、産地との関係構築や生産体制の見直しなど業界横断の対応が求められている。

という3点についてだが、この媒体が日本国内の事案を掲載するのは非常に珍しい。

 

 

ほぼ同時期に繊維ニュースも同じ内容の記事を掲載している。

国内生産がキャパ不足 | THE SEN-I-NEWS 日刊繊維総合紙 繊維ニュース

ファッションデザイナーの間で、新たな生産リスクが浮上している。国内生産におけるキャパシティー不足が常態化し、商機を奪う事例も出てきた。オリジナル生地の調達と縫製の遅延、良質な副資材の不足、主流化するネット通販など複合的な要因が絡み合う。

 

という具合で、こちらは生地だけでなく「縫製」についても言及している。

 

 

 

要は、生地段階でも縫製段階でも国内工場のキャパがいっぱいで、小規模零細ブランドはなかなか注文を入れてもらえないという実状になっている。

これは今の始まったことではなく、何年も前から海外生産・海外調達が危うくなるたびに業界内で言われていたことだが、今回のキャパ不足は以前にも増して深刻な状態にあるようだ。

 

 

 

先日、コロナ禍以来久しぶりにお会いした小規模ジーンズブランドの方がおられた。

近況を尋ねてみると、2022年ごろからのデニム人気の高まりで販売は活況な様子だが、国内縫製工場のキャパが満杯で発注にはなかなか苦労しておられるようだった。

ブランド担当者に尋ねると

「月産8000枚ほどの国内工場と長らくやってきたが、今は縫製キャパが満杯で7000枚は他のブランドの注文が入っている」

とのことだった。

販売数量が増えても増産は難しい状態が続いているらしい。これを打破するには、違う国内縫製工場を探すほかないが、今の売れ行きが崩れる可能性があることを想定すると、簡単に新規工場を探すこともためらわれる。

 

 

 

国内工場のキャパがタイトになっている原因は記事にもあるように様々ある。

最も大きいのは、工場数が年々減少していることだろう。その中で生地工場はまだ多めに残っている方だが、生地工場だけが存続していても生地の生産はできない。

染色加工場、整理加工場が必須だが、この2工場は年々減少し続けている。生地工場に関しては「匠の云々」みたいに「物作りファン」が注目しやすく、報道もされやすい。

 

 

 

行政施策に片足を突っ込んでいるような「物作りを応援し隊」みたいなコンサルタント系の人も生地工場を重点的に発信している。

しかし、染色、整理加工の工程がなければ生地を製造できない。そして染色、整理加工は生地工場に比べて減少する件数が多く、そのスピードが速い。何せ一般人からはほとんど注目されない工程だからだ。

デニム生地でいえば、ロープ染色から織布、整理加工まで自社一貫で生産できるのは国内ではカイハラとクロキだけである。

他にもデニム生地メーカーは国内にあるが、染色加工場、整理加工場が無くなれば他のデニム生地メーカーは国内でデニム生地を織ることはできなくなる。もちろんデニムに限らず、他の生地工場も同様の構造である。

 

 

縫製工場も同様で、年々減少しており、数量ベースでの衣料品国内生産比率は減少し続けている。

最新統計では数量ベースの衣料品国内生産比率は1・4%にまで減少していて、個人的には今後、数量ベースの衣料品国内生産は伸びる見込みはゼロに近いと考えている。

アパレルの国産比率「1.4%」に低下 四半世紀で生産量9分の1

 

 

 

 

 

副資材(ボタン、芯地、ファスナーなど)の調達も難しくなっていることは両記事が伝えている。

 

 

多くの場合、工場の職人後継者不足がクローズアップされがちだが、個人的には工場経営者の後継者不足もそれ以上に大きいのではないかと見ている。

同年代の工場経営者には何人か顔見知りがいるが、自分の息子を工場の跡継ぎとして働かせている人は少ない。息子は異業種で働いている場合が多い。同年代の息子なので20代半ばから後半くらいだが、いずれ工場に戻ってきて跡を継ぐのかというと不透明な状況にある。

 

 

あと10~20年後、異業種でそれなりにキャリアを積んで脂が乗ってきた息子・娘がおいそれとキャリアを捨てて工場を継ぐだろうか。もちろん、継ぐ人もいるかもしれないが、決して多数派ではないだろう。

また、今は独身でも、その時にはできているであろう配偶者の意向もある。配偶者が「工場を継ぐのは気乗りしない」といえば、それを強行に押し切ることはなかなかに難しい。そうなるといくら職人が揃っていようが工場は続けられない。現社長の引退とともに工場は閉鎖となる。

 

 

先のジーンズ縫製工場もデニムアイテム人気の復活もさることながら、国内全体でジーンズ縫製工場が減少しているため、残存しているジーンズ縫製工場への発注が増えているという側面もある。

 

かつて、縫製大国であり造船大国だったアメリカは、経営とビジネスの効率化で儲かりやすいITと金融に集中することで縫製、造船は廃れて自国生産はできなくなった。その代わりに大幅な経済成長を得た。資本主義社会において民間企業が経営とビジネスを効率化することは当然である。

果たして我が国はどうするのか。

個人的には、必要最小限を残す以外の工場はそう遠くない未来には無くなってしまうのではないかと思っているし、それを押しとどめることはかなり不可能に近いのではないかと思っている。

 

 

・お知らせや仕事の依頼がありましたら、Gメールまでお願いします。

minamimitsuhiro0423@gmail.com

 

 

 

この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ