スパイバーの新経営者に個人的に期待すること
2026年4月3日 企業研究 0
人口タンパク質繊維開発中のスパイバーの新体制が発表になった。
当初の報道とは異なり、創業者2人は研究員として残留することになったとのことで、結論から言うと研究体制はほぼ変わらないと思われる。
経営再建中のスパイバーは4月1日、新体制を発足した。旧スパイバーは清算し、新生スパイバーの代表取締役CEOに就任した川名麻耶氏が設立した新会社に設備や人員を移す。旧スパイバーの創業者である関山和秀前社長と菅原潤一前取締役は、経営には加わらず、CEOオフィス直下の主席研究員として残る。
とのことで、現在の開発路線は引き続きほぼ継続されると考えられるので、これは期待する人々には朗報だろうし、研究の姿勢もほぼブレることはないだろう。もっとも、資金繰りなどなどで予定を変更されることなどは生じるだろうが、そんなことはどの会社でも日常茶飯事に起きている。
研究者でもあった創業者2人が主席研究員として残るということは、2人にとっても研究に専念できるということで非常に喜ばしい体制ではないかと思う。
経営者になると、本当に雑事が増える。研究だけしていればよいというものではない。これはスパイバーに限らずどの分野のどの企業でも変わらない。
当方ごとき零細個人事業主でさえ、こまごまとした雑事はある。おまけに資金繰りの心配も常にある。従業員時代にはそんな心配は不要だった。決められた書類に決められた手続きさえしていれば、増えないが毎月の給料は振り込まれていた。上司との相性が悪かったことも多々あったし、申請した希望が却下されたこともあった。それでも「〇〇したいけど、今月は資金が足りないなあ」なんていう心配は皆無だった。
経営者ではなく研究員に戻るということは、2人にとってそういう研究以外の心配事から解き放たれることになるので、一層研究開発に尽力しやすくなることは間違いない。予算不足で申請が却下されることはあるだろうが。
さて、以前にも書いたが当初は「蜘蛛の糸」の実用化を目的に創業されたが、2022年に正式に「蜘蛛の糸」の開発を断念し、ブリュードプロテインの開発に切り替えた。
それから4年が経過している。
スパイバーの創業は2007年。蜘蛛の糸断念の発表が2022年なので15年間、研究開発に取り組んでいたことになる。結局、実用化できずに断念したということになる。
ブリュードプロテインに切り替えて4年になるわけだから、実用化・量産化できるかどうかの目途が立つのは最低でも後数年は必要になるのではないだろうか。
今回の件で、繊維製造業系の人から何人か連絡をいただいたが、量産化できなかった最大の理由として
「糸の値段が高すぎた」
ことを挙げておられた。
以前にも書いたことの繰り返しになるが、高すぎる糸はほとんど売れない。理由は糸はあくまでも糸に過ぎず、その糸で生地を作り、その生地で服を作ればどれほどの高額品になってしまうためである。それゆえに受注しにくいし、受注しにくいから量産化ができないという負のスパイラルに入っている。
これに対する方策としては、スパイバーを少量混ぜて生地を作るということになるが、少量混ぜても出来上がった生地にはスパイバーの特性はほとんど反映されない。ならば、使う意味が無いということになる。
実際にOEMに携わっておられた方も、価格を考えると混ぜる量も少量すぎてスパイバーの特性がほとんど生地には反映されないので、取扱いはしなかったとおっしゃられていた。
以前にも書いたが、当方は技術的なことはわからないが、この価格問題を解決しない限りは量産化の実現はほぼ不可能だろうと思われる。
新経営者が孫正義氏の長女ということで、資金繰りや融資に対する人脈などは創業経営者2人よりも強化される可能性は極めて高いだろう。
その上で、取り組むべきは着実に売り上げを作ることだろう。24年12月期の売上高にあたる営業収益はたったの4億1400万円しかない。営業損失は48億円、純損失は295億円となっている。あまりにも売上高が少なすぎる。
この記事では
アパレルに比べて実用化に時間はかかるものの、アパレルほど量を求められないメディカルや添加剤などの分野であれば、オーダーメード型の部材や原料としてのポテンシャルは今なお高い。
としており、ならば、アパレルに固執することなくその分野で先に売上高を築き上げ、その資金を持ってアパレル向けの糸の値段を引き下げて量産化を目指すべきだろう。
スパイバーの企業としての欠点はかつては蜘蛛の糸、現在はブリュードプロテインの一本足打法であるところにある。これの開発、量産化に成功しないと「売る物」が無いわけである。開発・量産化に成功したとしても、それが売れなければお金は入ってこないわけである。
できれば繊維以外の業者に「飯のタネ」として売る物を開発する方が賢明だろうと個人的には思う。
それを考えると常に複数の売り物があり、その裏で研究開発を進めている大手合繊メーカーや大手紡績の堅実さと当り前さは大したものだと思わざるを得ない。
蜘蛛の糸断念まで15年かかって、方向転換してから4年だから、最大限に見積もっても残された時間はあと5~6年というところだろう。
新経営者にはそういう「繊維以外の販路開拓」や「商材の多角化」への取り組みを現場に指示して、実現性の高いプロジェクトにしてもらいたいと外野ながら願っている。
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