古着人気を高めれば高めるほど従来型最新ファッショントレンドビジネスは成り立ちにくくなる
2026年3月31日 トレンド 0
何だかんだと言いながら、毎月何枚かの洋服を買っている(値下がり品限定)わけだが、何度も書いているように新鮮味はこれぽっちも感じていない。
マスのファッショントレンドは2010年代後半からほとんど変わっていない。2024年くらいから少し変わってきたと感じるのは、丈が短めのトップス類が増えたことである。ボクシー云々とかクロップド云々と呼ばれる商材群である。
丈が短いトップス類がなぜ増えたのかというと、それはズボンのワタリがワイド化し、股上が深めになったためだろう。ワイドパンツの上に丈が長くダボっとしたトップスを着ると、上下ダボダボで特に身長が高くない人はスタイルが悪く見えてしまう。
丈の短いトップスを合わせると「Aライン」になるため、体型はマシに見えやすい。
このニーズが女性から高まり、それがメンズへと波及してきたというのが直近のマストレンドの流れといえる。
しかし、2010年ごろまでのマストレンドと比べると、この短丈トップスのマストレンド化は勢いが緩やかだと感じられる。かつてのマストレンドは文字通り市場を席巻する勢いだった。
ブーツカットジーンズブームのころは、若い女性はほとんどブーツカットを穿いていたし、スキニーブームのころは男女ともにみんなスキニーを穿いていた。
しかし、ここ2年間、着用者は増えたとはいえ大半以上の人が短丈トップスを着ているわけでもない。相変わらず丈長めのトップスを着ている人もまったく珍しくないし、何なら一人の人がその日の気分によって短丈トップスを着たり、従来型の丈長トップスを着たりする。
言ってみれば「そういうアイテムも市場には増えたのね」という程度である。
これまで何度も書いて来たように、2015年以降のマストレンドは多様化・多極化・分散化している。渋谷109ですら、若い女性のファッショントレンドが多様化・分散化していることを認めて、地雷系・ギャル系・モード系・古着系などと分類してそれぞれが好みそうなテナントを集める努力をしている。そのことも以前に書いた。
そして今後この流れは変わることが無いだろうと思われる。
これまでアパレル業界がやってきた「短期間でマストレンドを入れ替えてブームを起こして大量に売る」とやり方は通用しにくくなる。ブームが起きたとしても限定的(地域的、コミュニティー的に)であることが多く、売れる数量は以前の各ブームには遠く及ばないだろう。
一方、アパレル業界やメディアで喧伝される業界人やブランドはいわゆる「イシキタカイ系」が多く、環境云々はウケのいいテーマとスローガンである。
ちなみに当方も環境破壊には絶対反対だが、行き過ぎた環境対応策は実現が難しいと思っているだけである。
業界やメディアではイシキタカイ系政策の一環として「古着人気」を喧伝している。実際、市場規模占有比率で考えれば2割の人がユニクロ、しまむら(アベイル含む)、ジーユーの服を買っている状態にある。5人に1人の割合である。
当然、ユニ被り、しま被り、ジーユー被りは散見されるし、当方も「自分と同じユニクロ、ジーユー着てますね。お揃いですね」と通行人に対して心の中でつぶやくことは毎日ある。それほどに多い。
こういう状況だから、他人と被りにくいという点において、ファッション好きから古着が重宝されることは理解できる。
ファッショントレンド命みたいな業界人と、カンキョウガー業界人は一部で重なっているが別の人であることが多いと感じる。しかし、メディアは両方取り上げる。まあ、ある意味公平なのだろうが、読者からするとどっちやねんと思わずにはいられない。
だが、古着人気が高まれば高まるほど、新しいファッショントレンドに集中することは減る。古着人気が高まれば高まるほど「新しいファッショントレンドはコレ」という商売は成り立たなくなる。
理由は簡単である。
古着は読んで字のごとく古着なので、最新トレンド品ではない。それを取り入れることに人気が高まれば最新ファッショントレンドには人気が集中しにくくなるのは自明の理でしかない。
最新トレンドガーと叫んでみても、古着は3年前、5年前、10年前の商品なのである。最新トレンドとは全く関係ない。
だから、古着人気が高まれば高まるほど、メディアが喧伝して実際に高まるほどに、これまで業界が得意とし、メディアがそのおこぼれにあずかってきた最新トレンドビジネスは成り立ちにくくなる。
ちなみに2023年のファッションリユース市場規模は矢野経済研究所によると1兆1500億円となっていて、予想値では2024年は1兆2800億円、25年は1兆4000億円と増え続けているが、26年は1兆4900億円と伸び率は鈍化する予想となっている。個人的には最終的に1兆6000億円内外で何年か後に止まるのではないかと思っている。
ファッションリユース市場に関する調査を実施(2024年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所
市場規模拡大に最も寄与しているのは国内で900店舗以上を展開するセカンドストリートだろう。逆にブームを契機に参入した小規模な個人古着屋は今後ドンドン淘汰されるだろう。
セカンドストリートは店舗数の多さもさることながら、500円・700円・900円の商品がそこそこ積まれていて安くて買いやすい。ファッションなんか全然興味ないですというような70代くらいの老人まで洋服の節約目的に地方ロードサイドのセカンドストリートに来店している姿が珍しくない。
マストレンドが変化しにくくなった(ワイドパンツはもう5年以上続いている)ことに加え、多様化・分散化が進むばかりでなく、古着人気が定着すればするほど、アパレル各社の従来型最新トレンドビジネスは成り立ちにくくなる。かと言って昨年と同じ商品を発売したのでは飽きられる。アパレル各社の商品企画は本当に難しい時代を迎えつつあり、それが今後常態化するだろう。
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