量販店向けアパレル各社の厳しい背景を考えてみた
2026年3月27日 企業研究 0
以前、スーパーの衣料品売上高が2025年の年間5975億円(前年比1・8%減)にまで低下していることを書いた。
スーパーの衣料品売上高は年々低下し続けており、ついに6000億円を割り込むようになった。
恐らく、今後、何年か後には5000億円台も割り込むことになるだろうと考えられる。
理由は、スーパーで服を買う理由をマス層が持っていないからである。また、ユニクロ、しまむら、ジーユーの3大ブランドに取られた客は今後もスーパーの衣料品売り場には戻らないと考えられる。
5975億円と聞くとかなり大きな売上規模だと感じるが、日本チェーンストア協会の加盟は46社もある。全社が衣料品を販売しているとは限らないが、仮に30社は衣料品を販売しているとすると、1社あたりの平均売上高は200億円弱ということになる。200億円も大きな売上高には違いないが、1兆円の国内ユニクロ、6000億円のしまむら、3000億円のジーユーと比べると圧倒的に小さい。
オンワードやワールドの最大ブランドがだいたい200億円前後なので、そういう大手総合アパレルの1ブランドくらいの売上高しかないということになる。
先日、15年来の旧知の業界人からこんな指摘を受けた。
「スーパーの衣料品売り場の中のPB比率はどんなものなのだろう?」
というものである。それまで当方はあまり考えていなかったが、これはけっこう重要な要素といえる。
先日引用した記事の中にトライアルの平均PB比率は18・4%だと明示されていた。このPB比率は衣料品だけでなく食品や雑貨すべてのPBを合計して18・4%という意味だから、それぞれの分野のPB比率は異なる。しかし詳細は分からないし、日本チェーンストア協会の統計にもないため、類推するほかない。
もちろんスーパー各社ごとにPB比率は大きく異なる。イオンだとトップバリュ比率は比較的高いだろうし、イズミヤや平和堂はイオンほど高くないだろう。
衣料品のPB比率が平均的に30%くらいだったと仮定しよう。
NBからの仕入れ品は70%だから、4200億円くらいということになる。イオンのトップバリュ攻勢を例にとるまでもなく、スーパー各社は利益率向上の観点から年々PB比率を高める傾向が強まっている。
そうなると、スーパーへの卸売りをメインとしているいわゆる「量販店向けアパレル」はかなり厳しい商況が続いているということになる。
くどい様だが整理すると、
1、スーパーの衣料品売上高そのものが年々低下している
2、スーパー各社はPB比率を年々高めようとしている
この2点になる。この2点はダブルパンチで量販店アパレルの売上高を顕著に削り落としている。
なにせ全体として売上高が下がっている上に、さらにPB比率が高まるわけだから、相乗効果で卸売りアパレルの売上高は減ってしまう。
これを踏まえると、例えば、グンゼの決算会見などで「量販店販路が苦戦」と述べられることが少なからずあるが、肌着・靴下・一部パジャマでスーパーの平場を主販路とするグンゼは苦戦傾向が強まらざるを得ない。
これはなにもグンゼだけに限ったことではなく、同じ販路のアツギも美濃屋も岐阜武も水甚もサンラリーも苦戦せざるを得ない。逆に好調に転じるという要素が少ない。
これを打破すべく、スーパーのPBのOEM生産を請け負う量販店アパレルも増えているが、スーパーのPB衣料品の売れ行きは総じて好調とは言い難い。特にカジュアル分野はマス層の選択肢に入っていない。
肌着・靴下はカジュアルやビジネスウェアに比べると支持が厚く評価も高いから、グンゼやアツギあたりはOEMを強化することで必要最小限は確保できると考えられる。
だが、カジュアルメーカーはOEMを請け負ったところで、スーパーの衣料品売上高自体が低迷しているので、その恩恵はあまり受けられていないと考えられる。
このように順序だてて考えると、量販店アパレルが直販傾向を強めることは必要に迫られての対応だということがわかる。
他の百貨店、専門店販路を強化するという手もあるが、百貨店の衣料品平場とて苦戦しているし、専門店は大手の有名店以外は力を失っている。
となると、直販を強化する以外に生き残るすべはないということになる。
ただ、ブランド力の無い量販店アパレルがネット通販を含む直営店を始めたとしても即効性は薄い。
業界人なら知っているかもしれないが、マス層への知名度は低い。知名度の低いブランドの衣料品をいきなり買ってくれる消費者は数少ない。
そうすると中長期的な視点で気の長い取り組みをする必要に迫られる。逆に短期間で効果を急ぎ過ぎると失敗してしまう確率が高く、失敗することでさらに経営を悪化させてしまう。
量販店アパレル各社からすれば卸売りも地獄なら、直販も地獄ということになるが、企業を存続させるためにはやり切るほかない。量販店アパレル各社には何とかがんばってもらいたいと願うばかりである。
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