新規客層を獲得するために「割安な価格設定」は有効性が高いという話
2026年3月13日 トレンド 0
先日、長男が誕生日を迎え30歳になった。
30歳というと中年の入り口なわけで、自分の子供が中年になりつつある(あんなに小さくてかわいかった息子が 汗)ということでますます己自身の老いと残り人生が少なくなっているということを自覚した次第である。
永遠に生きる人間はいなくて誰しも死ぬわけで、当方とていずれこの世からおさらばする。そうすると、当方が愛用していた先は個客を1人失うことになる。まあ、低価格品しか買わない当方なのでいなくなったところでどのブランドやメーカーも全く痛手を感じないだろうが、この世からいなくなるのは当方だけではなく三々五々、必ずみんなこの世からおさらばするわけで、どんなに隆盛を誇っているブランド、メーカー、店でも今の優良顧客層は全員消滅することが確約されている。
そのため、各社は常に次世代の顧客を作り続けなければならないという宿命がある。
ただ、この次世代顧客を作り続けるというのはかなり難しい。年齢による世代間では価値観や経済環境が全く異なることが多く、今の優良顧客層に合った施策が次世代顧客たる若者層に必ずしもフィットするわけではない、むしろ今の優良顧客層向け施策が次世代顧客層にとっては有害になることさえ多々ある。
先日、こんなYouTube動画を拝見した。
亜米利加市場でハーレー・ダビッドソンの売上高が低下しているというバイク業界の話である。この動画の元ネタの一つとなっていると思われるのがこの記事。
ストリート:ハーレーダビッドソンは崩壊の危機?売上急落、電動バイクの撤退、そして「移行期間」を発表 – パドックGP
その中に以下の一節がある。
バイクの販売台数は減少したが、価格は上昇した富裕層と忠実な顧客層をターゲットにすることで、何が問題なのでしょうか?数字が示しているのは この顧客基盤はもはや十分ではない.
ハーレー 老年層、つまりブランドへの忠誠心が宗教的な層にまで浸透しているおかげで、今もなお生き残っている。しかし、この層は永遠に続くわけではない。次の世代はより若く…そして購買力も限られている。
とのことで、他の動画ではハーレーの新車が1万ドル以上するのに対して、カワサキのニンジャ500は5800~6000ドルくらいで販売されていて、その価格差が大きいとも紹介されていた。
実際に2025年のアメリカ市場で1位はハーレーではなくカワサキだったと報道されている。2位はホンダだったと記憶している。
もちろん、ハーレーとニンジャの乗るスタイルの違いくらいは理解している。それでもアメリカの若者のエントリーモデルとしてはハーレーは高すぎて、カワサキに流れていると指摘されているわけである。
この動画、記事でも指摘されているが、ハーレーは顧客数の減少をこれまで高価格化し、ターゲットを富裕な中高年層に絞ることで売上高と利益率を維持してきた。
しかし、いくら富裕層でも中高年層は年とともに毎年死んでいくわけである。死なないまでも老化によってバイクに乗らなく(乗れなく)なる。
バイクに限らず、どの分野でも老齢顧客層は20年間くらいでほぼ死に絶える。そうすると、20年後には新規顧客層を獲得できていないと、そのブランドやメーカー、店は倒産・廃業せざるを得なくなる。
この動画、記事ではハーレーが去年あたりから若者向けの割安なエントリーモデルの販売に力を入れ始めたと指摘しているが、即効性はあまりないだろう。
いくら割安と言っても5000ドルくらいはするわけで、決断するまでに時間がかかる。さらに言えば、ハーレーの従来型イメージも強いため、若者の選択肢に入るようになるには時間がかかる。
何が言いたいのかというと、これはハーレーだけの課題ではないだろうということである。
常に、最低でも5年に一回くらいは新規顧客層の獲得施策をどの分野でも打ち出す必要性があるという話である。過熱ブームがやや落ち着きつつあるが依然として好調なガンダムのプラモデルだが、バンダイナムコは次世代顧客獲得のために低価格なエントリーグレードを発売し続けている。また小学校には非売品の組み立てやすいガンダムのプラモデルを無償で配布していたりもする。
ただ、この施策が必ず実を結んで若いガンプラファンが確実に増えるかどうかはわからない。わからないが、何もせずにマニア・愛好家向けの高価格モデルばかり発売していれば、今の愛好家が老衰して死に絶えればガンプラという市場は確実に消滅する。
ハーレーの現時点での苦境は衣料品・ファッション業界にも通じる部分が多々あると当方は思っている。富裕層向けにターゲットを絞ることは真っ当な施策だとは思うが、同時にエントリーモデルも用意しておかなければ今の富裕層顧客は20~30年後にはほとんど死滅してしまう。新規客層獲得のための割安なエントリーモデル発売や割安なセールを行うことにはブランド価値を毀損するという反論もある。しかし、若年の新規客獲得は常に課題として存在し続ける。
既存のブランドとエントリーモデルとのバランスをどのようにとって新規客層を獲得するのかがブランドやメーカー、ショップが永続するためには必要不可欠といえる。
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