年々売上高が伸び続けるスニーカーを含むスポーツシューズ市場
2026年3月10日 企業研究 0
メディアとアパレルは他業種に比べて昔から服装規定の緩い業界である。
なので、もともとそんなにスーツを着用していなかったが、独立後は本当にスーツを着ることは冠婚葬祭と企業の式典に参加するときくらいになってしまった。
世の中も2005年のクールビズをきっかけにどんどんカジュアル化していて、最近だとお堅い職業の銀行員ですら、ノーネクタイが珍しくなくなっている。
スーツを着用しないのだから当然、革靴も履かない。ストレートチップやプレーントゥといったビジネスシューズ、ドレスシューズである。
業務で一番スーツ類を着用したのはファッション専門学校で勤務したり非常勤講師をしている期間だった。それ以外では9割方はスニーカー類を着用していた。
先日、プレジデントオンラインに以下の記事を寄稿した。
「ビジネスマンの革靴離れ」が止まらない…「痛いし疲れる履物」を脱いだ大人たちが代わりに履き始めたもの | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
30年前に半年間の靴屋での勤務経験があるとはいえ、靴に関してはド素人も同然である。ただ、2010年代以降、ビジネスマンの革靴着用比率は体感的に著しく低下していると感じる。
そこで靴市場はどうなっているのかと調べてみた。
矢野経済研究所の発表に基づくと、靴・履物小売市場規模はコロナ前の2019年にはいまだに回復していない。これは衣料品も同様である。
2019年から2023年度までをまとめた日経新聞の記事がこれである。2024年10月の記事である。
矢野経済研究所、国内の靴・履物小売市場に関する調査結果を発表 – 日本経済新聞
2023年度の国内靴・履物小売市場規模は前年度比109.5%の1兆2,265億円と推計
とある。ちなみに記事中の表に2019年度が掲載されているが、2019年度は1兆3367億円である。先日発表された2024年度も実は2019年度実績には回復できていない。
これは衣料品も同様だが、2022年のウクライナ戦争を機にコスト高騰により、物価が上昇し続けている。物価が上昇し続けているにもかかわらず、靴も衣料品も2019年度に市場規模が追い付かないということは、相当に販売数量が低下している。もしくは低価格品・値下げ品が売れているということになる。
先の記事では棒グラフで2014年度から靴・履物小売市場規模が掲載されているが、2014~2016年度までは1兆4000億円台だった。それが2017年度からは1兆4000億円台割れとなり、2023年度以降は回復したとはいえいまだに1兆2000億円台に留まっている。
ちなみに、2025年11月に発表された2024年度の市場規模は1兆2367億円となっている。
靴・履物市場に関する調査を実施(2026年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所

2023年度からわずか2億円しか伸びていない。恐らく、今後、1兆3000億円台に回復することは相当難しいだろうと思われる。
衣料品も閉塞感があるが、靴も閉塞感が漂っている。
しかし、部門別に見るとなかなかに興味深い。矢野経済研究所の統計は
1、紳士靴
2、婦人靴
3、スポーツシューズ
4、子供靴
5、その他
に分類されている。スニーカーはスポーツシューズに、長靴・作業靴はその他に含まれる。ビジネスシューズ・ドレスシューズ(革靴と略する)は1の紳士靴に分類されていると考えられる。
紳士靴、婦人靴は市場規模の縮小に比例する形で売上高も減少している。特に紳士靴なんて1300億円台しかない。これは大手アパレル1社分程度しかない。あまたあるメンズビジネスシューズブランド全て合わせて1300億円台なのだからどれほど各ブランドの売上高が小さいのかが伺える。
そんな中にあって、スニーカーを含むスポーツシューズの売上高は年々伸びている。コロナ禍だった3年間でも伸びている。もちろんコロナ禍以降も伸びている。
2019年度のスポーツシューズは6827億円だったが、最新の2024年度では7173億円にまで増加している。スポーツシューズが占める売り上げ構成比は当然年々高まっており、2019年は51・1%だったが、2024年度は58・3%にまで上昇している。恐らく、近いうちにスポーツシューズの売り上げ構成比は60%を超えるだろうと考えられる。
5部門のうちで2019年以降コロナ禍も毎年伸びているのはスポーツシューズだけである。
これを見ると、いかにスニーカーの支持率が高いかがわかるだろう。
メンズビジネスマンもさることながら、若い女性でもスニーカーの着用比率は体感的にかなり上昇している。20年前だったら、パンプスを合わせていたのではないかと思われるようなフェミニンな服装の女性でもスニーカーを合わせていることが増えていると感じる。
さらに言えば、高齢者である。以前から何度も書いているように高齢者のほとんどがデイリーユースとして今やスニーカーを着用している。
これほどスニーカーが広まり定着している理由は
1、ソールのクッション性があるため履いていて足が楽である
2、革靴類と比べて低価格品が多い
3、革靴よりも手入れが楽
4、アッパー素材にテキスタイルが用いられた物が多く、革製よりも楽
という4点が挙げられるだろう。
一日中歩き回る外回りの営業マンや作業員、一日中立ち仕事となる販売員などは、よほどの数寄者か厳しい服装規定でもない限り、わざわざ革靴やヒール類は着用しないだろう。
足腰や膝が弱っている老人層も同様である。同様どころか、現役世代よりもスニーカーの方が適している。
これらの統計や身の周りの人間の生活スタイルを考えると、メンズ革靴は今後もゼロにはならないだろうが、市場規模は縮小均衡の一途をたどると考えられる。
先に「リーガル」ブランドを展開するリーガルコーポレーションからリストラが発表されたが、センチメンタルな感情論は抜きにして、当然の施策だといえる。
蛇足だが、一時期何年間かに渡って、ダービーシューズのネーミングでベーシックなメンズビジネスシューズを展開してきたジーユーだが、現時点では完全に廃止されている。市場規模1300億円程度の商材は、年商3000数百億円のジーユーが展開するには小規模すぎて旨味がなかったというところではないのかと思われる。
メンズの革靴は愛好家向けの逸品、もしくは冠婚葬祭用として、小さい規模で存続する商材になるのではないだろうか。
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